ポイント

・世界の株式は米中貿易摩擦退行による上昇した。
・英国議会の承認への懸念にもかかわらず、FTSE 100、英ポンド、英国債は上昇
・OPECの減産や貿易摩擦退行の背景で、原油は53ドル付近
・VIX指数の低下

重要イベント

米中間の貿易交渉への懸念が退行したことにより、米国先物のS&P 500、ダウ平均 、ナスダック 100 は水曜日午前では上昇局面にあった。為替市場では、メイ英首相によるEU離脱への懸念が高まっているのにも関わらず、英ポンドは上昇した。

欧州の STOXX 600は、アジア時間でファーウェイCFOの保釈が1000万カナダドルで認められた後、2日連続で上昇した。この事件は、トランプ米大統領が米中間の関係を保つために介入を示唆したことで事態が悪化していた。

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(画像=Investing.com)

メイ英首相の信任投票や、離脱案の議会承認が不透明になってきているのにも関わらず、FTSE 100、英ポンド、英国債が全て小幅高となっていた。テクニカル的には、英ポンドは、キリがいい数字であり心理的な1.25の水準で支えられていた。トレーダーは、昨日の安値、1.2480は割安と捉えたということだ。これは2017年4月11日以来の安値である。

世界の金融市場

火曜日のニューヨーク株式市場では、米中間の貿易交渉の見通しが改善されたことによって米主要インデックスは1%以上上昇したが、政府機関閉鎖の懸念が出たことによってほとんどの株式が下落した。

S&P 500は自動車株に牽引され1.01%でギャップアップし、一時1.39%まで上昇を伸ばした。これは、中国が米国車関税引き下げの方針を報道したことが理由である。

しかし、トランプ米大統領と民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務とチェック・シューマー上院院総務のテレビで放映されていた会議で、トランプ氏が不法移民の阻止のための壁を国境に作ることができないのなら政府期間を閉鎖すると述べた後、株式は大きく売られた。

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(画像=Investing.com)

上図の金融セレクト・セクターSPDR ETFチャート (NYSE:XLF) が指し示すように、金融セクターは火曜日、2016年6月以来最大の下落幅を記録していた。今年2月以来の下降チャネルを下抜けし、今後大きく下落することを指し示している。

この火曜の下落に引き続き金融セクター(-0.97%)に牽引され、水曜日のS&Pは0.04%安となった。

ジェローム・パウエルFRB議長が利上げの鈍化を示唆し景気後退への懸念を再燃させたことを受けて、投資家は金融セクターから撤退している。一方、保守的なセクターがもっとも好調であった。生活必需品セレクト・セクターSPDR (+0.82%)は主導し、公益事業セクター (+0.41%)やヘルスケアセクター (+0.31%)がそれに続いた。

ダウ平均株価は1.21%窓を開けて上昇し、1.48%の362ポイントまで上昇した。しかし、政府機関閉鎖の懸念を受けて終値は0.22%安となった。

ナスダック総合指数は他の米国主要インデックスの中では好調であった。テクノロジー企業が多く上場するナスダックは、市場開始とともに1.44%窓を開き上昇し、一時1.56%まで上昇した。終値は1.56%高となり、主要インデックスの中では唯一前日比でプラスに終わったインデックスであった。

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(画像=Investing.com)

前回の記事ではナスダックのチャートはヘッド&ショルダーを形成しつつあると述べたが、今では、ラウンドボトムを形成しつつある。どちらのチャートパターンも強気相場になる見通しがあるパターンであるが、ランドボトムの場合は、ネックラインが上昇しさらに上抜けは難しいものとなる。

米国内の中小企業が上場しており、米中間の貿易交渉進展の影響はさほど受けないと考えられているRussell 2000は、0.08%窓を開けて上昇し、他のインデックスが上げるのにつられ、1.57%まで上昇した。しかし、政府機関閉鎖の危機によって0.05%安で終値を迎えた。Russell 2000の終値は、2017年の9月以来の最低水準まで下落している。テクニカル的には、Russell 2000は5日連続で下落し、三角持ち合い(ペナント)の下抜けを1.9%と拡大している。

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(画像=Investing.com)

月曜日のS&P500は1.9%の下落を打ち消し、終値が0.2%高となった。火曜日には1.4%上昇し、その後0.6%下落した。

先行きの見えない通商問題、利上げによる株式市場への影響、弱い経済指標などにより、ボラティリティーの高い株式市場だったが、VIXをみると、米国市場が安定化しつつあることを示している。

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(画像=Investing.com)

10年債 利回りが上昇したのにも関わらず、ドルは上昇に苦戦している。テクニカル的には、一ヶ月に渡るレンジの中で高水準に位置している。RSIのモメンタムは10月31日から11月12日にかけて下降している一方で、この期間で価格は上昇している。このRSIのモメンタムの下降トレンドラインを上抜けしたことにより、価格が上昇する可能性を示している。しかし、価格は上昇に苦戦しており投資家たちの迷いが感じられる。

トランプ米大統領が11日に利上げに反対する姿勢を再び示し、米国債は2.89%上昇し、3日連続の上昇となっている。

マクロン政権のデモが行われているにも関わらず、今日の ユーロは小幅高であった。フランス債とドイツ債の スプレッドは拡大し、2017年の大統領選挙以来の高水準となっている。

OPECの減産や貿易摩擦退行を受け、WTI原油は0.79%窓を開けて上昇し、1.88%まで上昇幅を伸ばした。(提供:Investing.comより)

著者:ピンカス コーエン