公的年金制度を補完する私的年金制度として注目されているのが、個人型確定拠出年金(iDeCo)である。2018年には加入者が100万人を突破した。これからiDeCoへの加入を検討している人も多いだろう。iDeCoでは運営管理機関として1つの金融機関を選択することとなるが、この運営管理機関には証券会社だけでなく、銀行を選択することもできる。iDeCoの運営管理機関選びにおいて、銀行と証券会社にはどのような違いがあるのだろうか。
証券会社、銀行、保険会社……運営管理機関は160社超
iDeCoにおける運営管理機関とは、確定拠出年金の運用や支払いに関する事務代行や、資産運用に関する基礎的な資料の提供などを行う専門機関を指す。要は、iDeCoの管理全般を行う金融機関のことだ。運営管理機関に指定されるには、厚生労働省と金融庁の承認が必要となる。
iDeCoに加入する場合、この運営管理機関を1つ選ばなければならない。複数の運営管理機関でiDeCoに加入することはできないからだ。2018年3月末時点において、この運営管理機関の数は160社を超えており、証券会社だけでなく銀行や保険会社など、多くの金融機関が名を連ねている。
金融機関にしてみれば、運営管理機関に指定されることで、顧客と長期に渡る付き合いができることになる。特に、投資経験の少ない若年層から中年層との接点は貴重であり、各社がサービスを競い合っている。
なお、iDeCoでは運営管理機関とは別に記録関連運営管理機関という専門機関もある。これは、iDeCoの記録業務を行う機関であり、加入者記録の管理や給付を受け取る権利の裁定などを行っている。運営管理機関ごとに、どの記録関連運営管理機関を利用するかは決められており、運営管理機関を選択すると自動的に記録関連運営管理機関も決まる。
金融機関選択のポイントは?
さて、iDeCoに加入するには、160社超の金融機関の中から運営管理機関を1社選ばなければならない。証券会社だけでなく、銀行を選択することもできるので、iDeCoを始める際に頭を悩ませる問題になるだろう。一般的に、iDeCoを開設する金融機関を選ぶ際に注意すべきポイントは次の3つである。
まずは、運営管理手数料だ。金融機関によって異なるため、なるべく安い金融機関を選択するのが望ましい。
次に、運用商品のラインナップである。当然、多い金融機関のほうがポートフォリオの組み合わせの自由度が高くなる。また、投資したい商品や運用コストを抑えた商品があるかも確認しておきたい。
また、WEBサイトのレイアウトやコールセンターの充実度など、ソフト面の使い勝手も選択のポイントとなる。
これらの点を踏まえて金融機関を行うこととなる。ただ、これだけだと数ある金融機関の比較だけで途方に暮れてしまう。金融機関選びをスムーズに行うため、まずは銀行と証券会社を比較して、どちらにするかを決めるといい。次からは、銀行でiDeCoに加入するメリットを紹介した上で、証券会社との違いを説明していこう。
銀行でiDeCoを始める2つのメリット
銀行でiDeCoを始めるメリットとは何だろうか。証券会社ではなく、銀行でiDeCoに加入するメリットを2つ紹介しよう。
まずは、資金を一元管理出来る点だ。給与の振込み口座など、メインバンクとなっている銀行でiDeCoを開設すれば、毎月の掛金の引き落としも同じ銀行内で完結できる。各種取引を複数の金融機関で行えば管理が面倒だが、メインバンクでiDeCoを開設すれば、その分手間が省ける。さらに、退職金の振込みや住宅ローンの借入もメインバンクで行えば、資産を一元管理することもできる。
次に、窓口での相談など、サービスが充実している点だ。iDeCoを開設する金融機関とは、加入から給付まで非常に長い期間の付き合いとなる。その間に退職、転職などといったイベントや、運用方針の変更、給付方法の選択など、手続きが必要となる場面は多いだろう。多くの銀行では、iDeCoに関する相談を窓口で受け付けており、何か困ったことがあった場合に気軽に相談することができる。証券会社の場合、インターネットやコールセンターでの受付しか対応していないことが多い。一部の証券会社では窓口対応も行っているが、銀行のほうが店舗数も多いので、利便性という点では銀行に分があるだろう。
このように、銀行でiDeCoを始めると資金管理の手間が省け、迷った時の利便性というメリットを享受できる。これらは、資産運用に関する知識があまりない人にとっては非常に重要だ。投資経験の少ない人は、これらのメリットを加味して、銀行に絞った金融機関選びを行うといいだろう。
投資経験が豊富な方は証券会社も選択肢に
一方で、投資経験が豊富な人は、証券会社も選択肢に入れるべきだろう。現在証券会社は、ネット証券を中心に充実した商品ラインナップと割安な運営管理手数料をアピールし、加入者を集めている。これらの点では、銀行より証券会社のほうが充実している。資産運用に慣れた人だと、証券会社のほうがポートフォリオを自由に組め、コストも抑えられる可能性が高い。
ただし、投資経験の少ない人は、これらの観点で証券会社を選択すべきではない。銀行は、商品ラインナップを敢えて絞ることで、利用者が商品を選択しやすくしているからだ。運営管理手数料についても、窓口業務のコストと考えれば妥当と言えるし、銀行によっては商品ラインナップを充実させ、運営管理手数料を割安に抑えているところもある。
自身の投資経験や使い勝手を考慮して、銀行と証券会社のどちらでiDeCoを始めるべきかを判断したい。
受付業務のみを行う金融機関もある
最後に補足となるが、iDeCoには運営管理機関とは別に、iDeCoの受付業務のみを行う金融機関もある。これらの金融機関は、委託元であるそれぞれの運営管理機関への加入受付のみを行い、実務は運営管理機関が行う。
銀行で受付を行っているが、運営管理機関は証券会社というケースや、反対に証券会社で受付を行うが、運営管理機関は銀行というケースもある。加入時には、運営管理機関がどこかを把握しておく必要がある。
iDeCoでは運営管理機関の変更も可能だが、その手続きには時間がかかり、移管手数料の支払いや保有商品の売却が必要となる。金融機関の変更を極力避けられるよう、加入時の金融機関の選択は慎重に行いたい。
文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES
【関連記事 MONEY TIMES】
40代からiDeCo(イデコ)を始めるのは遅いのか
iDeCo(イデコ)の7つの落とし穴
iDeCo(イデコ) 金融機関選びの4つの基準
iDeCoの初期設定が「定期預金」は何がマズイの?
40代から始めるiDeCo(イデコ)の基礎知識