被相続人が保有していた財産がすべて日本国内のものであった場合、プラスの財産・マイナスの財産ともに相続開始時点で共同相続人に包括的に承継されます。よって、遺言書がある場合はその内容に基づき、遺言書がない場合には相続人間で作成した遺産分割協議書に基づき財産を分割することになります。
一方、被相続人が海外に財産を保有している場合、財産の所在する国によっては、相続開始時点で遺産財団(エステート)に財産が移転し、遺言執行人や遺産管理人が管理する形をとることもあります。債権・債務の清算や納税を経たのち、残余財産が相続人に分配されることとなり、この手続き(プロベート Probate)が終わるまでは財産を受け取ることができません。プロベートは遺言の有無にかかわらず必要な手続きであり、どちらの場合でも、現地語に翻訳した死亡証明書や宣誓供述書など多数の書類を用意しなければならず、日本に住む相続人にとっては非常に複雑で面倒な手続きになります。通常は、弁護士などの専門家に依頼し、手続きを進めていくこととなりますが、それでも6か月から長ければ3年ほど要します。遺産が少額であればプロベートを省略できることもありますが、米国やシンガポール等に多額に資産を保有している場合、基本的にはプロベートを経なくてはなりません。
プロベートを避けたい場合、ジョイント口座と呼ばれる共同名義の預金口座で財産を管理するほか、トラスト契約を締結しておく必要があります。
被相続人が海外に財産を保有していた場合はもちろんですが、ご自身の国外財産の相続手順をご心配されている方はお早目に専門家へ相談することをお勧めいたします。
(提供:チェスターNEWS)