身近な方がお亡くなりになられて、その方の遺産の整理のため『財産目録』を作成しようとしているが、何から始めればよいのか、また、何かよい書式やフォーマットがないかとお悩みではないでしょうか。
こちらでは、財産目録の基本的な作り方・記載方法を初めての人でも理解できるように解説するとともに、エクセル書式を無料でダウンロードして頂けるようにしています。なお、こちらで公開している財産目録の書式は、相続専門の税理士法人チェスターが作成した実際に実務でも使用することができる書式となっています。
財産目録を作成される際にぜひ参考にして下さい。
1.相続財産目録とは『財産を一覧表の形式で整理したもの』
相続財産目録とは、亡くなった被相続人が所有していた財産を一覧表の形式で整理したもののことを言います。不動産や現預金、有価証券だけではなく、借金などのマイナスの財産についても記載をします。
この財産目録を見ながら、相続人間でどうやって遺産を分割するのかを話し合うことになります。法律でこのように作成しなければいけないという決まりは特にないので、それぞれの相続人が、作成した財産目録を見たときに、どういった財産がいくらくらいあるのかと言うのが分かるようになっていれば大丈夫です。
2.相続財産目録
【Excel書式&記載例付】初めての人の為の相続財産目録の作成方法
上記のリンクをクリックして頂くと、エクセル形式の財産目録が無料でダウンロードして頂けます。 著作権は、税理士法人チェスターにありますが、商用目的での利用以外は自由に使用して頂いて結構です。
3.相続財産目録の一般的な記載方法
相続財産目録の記載方法について解説をします。このように記載しなければいけないという法律上の決まりは特になく、記載されている財産が特定されれば良いのですが、ここでは一般的にどのように記載を行えばよいのかという具体事例をご紹介したいと思います。
3-1.どういったものを記載する必要があるの.
相続財産目録には、原則、亡くなった被相続人が所有していたすべての財産を記載します。住んでいた自宅、貸していたマンション、特に利用していない土地、現金や預金、金やプラチナ、上場株式・国債等の有価証券、自動車、貴金属など、換金価値があるもの(経済的に価値があるもの)すべてを記載する必要があります。
なお借金や債務等のマイナスの財産についても記載をする必要があります。例えば、銀行やサラ金業者にお金を借りていた場合や、クレジットカードの未払い分があるような場合です。
なお、経済的に価値がないようなもの、例えば、故人のアルバムや、衣類などについては、基本的に記載する必要はなく、“家財一式”1万円といった形で記載しておくのが一般的です。もちろん、親族間で形見分けを行うためにそういった経済的に価値のないものを記載しても問題はありません。
3-2.財産の種類別具体的記載方.
相続財産の種類ごとに、財産目録にどのように記載するのかを解説します。一般的な記載方法ですので必ずしもこれに従う必要はありませんので参考までにご覧ください。
3-2-1.不動産(土地・建物)の記載方法
まずは、不動産の所在(どこにあるのか)を明らかにするために住所を記載します。そして、大凡の広さを記載しますが、これは不動産の登記簿謄本に記載があります。そして評価額ですが、正確には路線価×地積をベースに計算をする必要がありますが、この計算は相続税申告をする際には税理士が計算を行います。ご自身での計算が難しければ、仮の数字として固定資産税の課税明細に記載されている固定資産税評価額を入力しておきましょう。
なお、相続税路線価から土地の相続税評価方法を求める方法をもう少し詳しく知りたい方は、「これで分かる!相続税路線価から土地の価格を計算する方法」を参考にして下さい。
3-2-2.預貯金・現金の記載方法
預貯金については、銀行名、支店名、口座種類及び口座番号を記載します。どこの口座にいくらあるのかを明確にします。相続開始(死亡時)時点の残高を記載しましょう。
3-2-3.有価証券(上場株式等)の記載方法
有価証券の記載方法については、証券会社に預けている場合には証券会社の名称及び支店名を記載します。そして、個別銘柄名と保有していた株式数を記載します。なお、評価額については、相続開始時点(死亡時点)での相続税評価額を記載します。相続税評価額については、相続開始日の最終価格、相続開始日を含む月、前月、前々月のそれぞれの平均価格のうちもっとも低い単価を銘柄ごとに適用して計算を行います。
3-2-4.その他財産(自動車、ゴルフ会員権等)の記載方法
その他の財産については、その内容が明確になるように記載をしましょう。 特にどこまで詳細に書くかはルールがありませんが、確実に財産が特定できるように気を付けましょう。例えば、FITが2台ある場合には、赤のFIT、黒のFITと記載したり、走行距離や初年度登録日などを記載しても良いでしょう。
3-2-5.借金・債務・葬式費用の記載方法
借金・債務・葬式費用に関しては、どこに対していくらの返済義務があるのかを明確にする必要があります。 相続開始日(死亡日)時点で未払いとなっている金額を記載します。
4.相続財産目録が必要となる場面とメリット
相続財産目録が必要となる場面は、遺産分割の話し合いのために使用する目的と相続税申告を行うための大きく2つに分かれると思いますが、それぞれについて解説したいと思います。
4-1.遺産分割の話し合いの前提資料とし.
相続が発生し、故人が遺言書を書いていない場合には、故人が残した相続財産を相続人間でどのように分けるのかを話し合う必要があります。これを遺産分割協議と言いますが、この遺産分割協議を行う前提資料としてこの相続財産目録が必要になります。どのような財産がいくらあるのかをまずは相続人間で相互に確認し、どの財産を誰がどのように取得するのかを決めていくためです。
そのためには、この相続財産目録に記載する財産の評価額は正確なものである必要があります。この評価額が間違っていたり、不正確なものであったりすると、そもそも話し合いの前提条件が崩れてしまいますので注意が必要です。
4-2.相続税申告のため.
遺産が一定額(3,000万円+600万×相続人の人数)以上ある場合には、相続税の申告作業が必要となります。この相続税の申告作業においては、故人の所有するすべての財産を相続税評価額で合計して計算をする必要があります。
相続税の計算は通常税理士が行いますので、相続人の方で財産目録を作成する際には正確な相続税評価額を計算する必要はありません。但し、どういった財産があるのかということは相続人等の関係者しか知り得ない情報ですので、評価額は多少間違っていてもよいので、財産に漏れがないように作成することを心がけましょう。
また、相続税申告に必要な資料を漏れなく収集するために、相続専門の税理士法人チェスターが実務において使用している「必要資料準備ガイド」を参考に利用しても良いかもしれません。
5.自分での作成が難しい場合には専門家に依頼することも
相続財産目録については、相続税申告を税理士に依頼する場合には税理士が作成してくれます。 税理士が相続税申告を行うためには、相続財産目録はなくてはならないものなので、相続税申告業務の一環として作成をしてくれます。そのため、財産目録を作成する費用として別途報酬を請求されることはありません。
また、相続税申告業務を税理士に依頼しない場合でも行政書士や司法書士、弁護士などに財産目録の作成代行を依頼することも可能です。財産の内容や規模にもよりますが、目録の作成のみでしたら数万円程度で依頼が可能でしょう。
専門家に目録の作成を依頼するメリットとしては、第三者の客観的な視点で公平な目録を作成してもらえるということがあります。相続人間の中が良くない場合などは、特定の相続人が作成した目録は他の相続人は信用できないといった具合にもなりかねないからです。
6.まとめ
相続財産目録の作成方法について解説をしてきました。 財産目録の作成の完了が相続手続きにおいてはスタートラインとなります。 相続手続きを行っていくにあたって、様々な不明点が出てくると思います。自身で解決できない場合には、税理士等の専門家へ相談をされることをお勧めいたします。(提供:税理士が教える相続税の知識)