遺産相続の相談を弁護士にしたいときに、弁護士の選び方や弁護士費用について悩まれる方も多いと思います。
実際に弁護士にも医者と同じように専門分野がありますので選び方を間違えると相続で取り分が少なくなる等の不利な結果となるリスクもあります。
また弁護士費用も相場に差がありますので注意して弁護士選びもしないと後で高額な報酬となり後悔してしまうこともあります。
この記事では遺産相続の相談に強い弁護士の選び方と弁護士費用の相場について解説していますので参考にしてください。
1.遺産相続で弁護士に相談できること
弁護士と聞くと、あらゆる法律問題に詳しいと思われる人もいるかもしれません。しかし弁護士も医者に内科や外科といった専門分野が分かれているように専門分野があり、相続実務の経験がない弁護士も多くいるのが実態です。
遺産相続の業務経験が少ない弁護士に相続の相談をするというのは、内科のお医者さんに行って外科の手術をお願いするのと同様のリスクがあるとイメージしていただけると分かりやすいと思います。
また遺産相続の相談といっても弁護士が全ての相続相談に対応できるわけではありませんので、まず弁護士が相続相談で対応できることを見てみましょう。
上記の図のように弁護士に相続相談を行う場合には時系列として、相続発生前と相続発生後に分かれます。相続発生前は将来のために遺言を作成するという相談が大半です。
相続発生後はいくつかの目的によって相談内容が異なりますが、多くのケースでは「相続争いの解決」と「遺留分減殺請求」がメインとなります。
・相続争いの解決 相続が発生してから故人の遺産の分け方をめぐって相続人同士が争うことで発生します。遺産相続争いが起きると通常は相続人同士が感情的になって話し合いにならないケースが多く、弁護士が間にたって話し合いを行います。
また裁判外で弁護士を入れて話し合うこともありますが、一般的には家庭裁判所での調停手続きとなります。つまり裁判で両社の言い分を主張して遺産の分け方を決めるということです。
・遺留分減殺請求 まず遺留分とは遺言によっても侵害することができない相続人の最低限の権利です。例えば父親が遺言にすべての財産をホステスのママに相続させると書いた場合、父亡き後の家族が1円ももらえずに生活に支障をきたす可能性があります。
そういったことがないように相続人を守るために遺留分という最低限の権利が認められているのです。 そして遺留分減殺請求とは自分の遺留分が侵害されている時に相手方に遺留分を請求することをいいます。
実際に相続が発生した際に遺言が見つかり、内容を見てみると相続人の遺留分が侵害されていることは珍しくありません。遺留分が侵害されている相続人は自分で書面を作成して遺留分減殺請求をすることもできますが、相続の専門的な法律知識が必要な場面も多くあるため弁護士に相談することが大半です。
また弁護士以外に相談した方がいい相続相談もありますので、そちらについては本サイトの別記事「【目的別】相続相談先の選び方パーフェクトガイド」を確認してみてください。
2.遺産相続の相談に強い弁護士の選び方
この章では実際に相続の相談を弁護士に行う際にどのように選べばいいのかを紹介していきます。
(1) インターネットから探す方法 知り合いに弁護士がいない場合にはインターネットで弁護士を探す方法が一般的です。インターネットで探す場合には、弁護士を紹介してくるようなサービスを利用する方法と個別の弁護士事務所のHPを確認していく方法の2つがあります。
a.弁護士を紹介してくれるようなサービスを利用する方法 ・法テラス 法テラスは法務省所管の公的な法律相談機関です。法テラスに電話をかけると無料相談に対応してくれて、実際に弁護士業務へと発展するケースでは弁護士の紹介まで無料でしてくれます。
法務省管轄という公的な機関ですので安心して相談できます。
・弁護士ドットコム 上場企業が運営している弁護士紹介や相続問題のお悩み相談等に総合的に対応するポータルサイトです。インターネット上で相続相談ができ、実際に弁護士を紹介してもらうこともできます。
ただしこれらの紹介サービスを利用する場合には、紹介を受ける際に「相続に強い」弁護士を紹介してもらうようにお願いしたり、検索条件を絞り込む際に「相続、遺産分割、遺言」といった項目についての経験や実績があるかどうかをしっかりと調べる必要があります。
b.個別の弁護士事務所のHPを確認していく方法 個別の弁護士事務所のHPを確認していく場合には、検索方法としては次のようなワードで検索するとよいでしょう。
・「相続 弁護士」・「遺言 弁護士」・「遺留分減殺請求 弁護士」・「相続 弁護士 調布駅」 等々
ピンポイントで自宅の最寄り駅で探したいというような場合には、駅名をプラスして検索してもよいでしょう。まずは5~10程度の弁護士事務所のHPの相続についてのサービスの記載を確認してみましょう。その際のチェックポイントとしては次のようなものがあります。
- 相続相談専用のHPがあるか?
- 相続相談についての実績が掲載されているか?
- 弁護士報酬についての記載があるか?
相続に力を入れている弁護士事務所であれば相続専用のHPがあることが多いです。また相談実績が記載されていると安心感があります。さらに依頼した場合に弁護士費用がいくらかかるのかという弁護士報酬をきちんと掲載している事務所の誠実で信頼感があります。
このようにインターネット上で相続に強い弁護士を探す方法もありますが、最終的にはやはり初回の面談をしてみた際の印象が非常に重要です。あなたの担当になる弁護士とのフィーリングが合わなければ相談の途中であなたの意図が上手く弁護士に伝わらずに思うような結果にならない可能性もあります。
このため実際に相続の相談をする弁護士事務所は複数箇所面談をしてみて決めるとよいでしょう。
(2) 知り合いに弁護士がいる場合 知り合いに弁護士がいる場合にはその知り合いの弁護士に相談するという方法があります。その知り合いの弁護士が相続問題に詳しいということがあらかじめ分かっていれば直接相談に行くとよいと思いますが、相続に強いかどうかは分からない場合には次のように相談するとよいでしょう。
あなた「相続問題で困っているのですが、少々複雑な相続問題でして(身内のプライベートな問題でして等)どなたかお知り合いで相続に強い弁護士さんいらっしゃいませんか?」というようなニュアンスで知り合いの弁護士さんに紹介してほしいというような相談に行くとよいでしょう。
弁護士が紹介してくれる相続に強い弁護士ですから一定の信頼感と安心感があります。
3.遺産相続の弁護士費用の相場
弁護士報酬は決まった規定がなく自由化されているため弁護士事務所ごとに相続に関する報酬は異なります。
そして弁護士報酬を知る上での前提知識として「経済的利益」という言葉を知っておかなければなりません。経済的利益とは依頼者がどれだけの遺産を取得することになったか、つまり相続人の最終的な取り分ということになります。
相続争いにおける弁護士報酬は依頼者の経済的利益の額によって弁護士報酬が決まるのです。 つまり弁護士が頑張って主張をして依頼者の相続分が増えれば弁護士の報酬も増えるということで、弁護士と依頼者の利益が一致するような報酬体系になっています。
この図は昔にあった旧弁護士規程の弁護士費用ですが、この報酬体系を採用している弁護士事務所が今でも多くを占めます。しかし着手金や報酬金の%や金額については事務所ごとに差があります。
例えば父が亡くなり遺産5000万円をめぐって、長男と次男の二人の子供が争った場合に長男が弁護士に依頼して遺産3,000万円を相続した場合の旧弁護士規程による弁護士費用を見てみます。
- 着手金:3,000万円×5%+9万円=159万円
- 報酬金:3,000万円×10%+18万円=318万円
- 合計:477万円
3,000万円の遺産を相続するのに弁護士報酬が477万円となります。高い低いは人それぞれかもしれませんが、高いという印象を持つ人が多いと思います。こういったこともあり現在は弁護士報酬が自由化されています。
このように遺産相続の相談に関する弁護士報酬は高額になるケースも多く、最終的に弁護士報酬がいくらになるのかを依頼時に確認しておくことが重要です。旧弁護士規程の弁護士費用の約6割~7割程度が妥当なラインだと考えるとよいでしょう。
また反対に弁護士報酬が安いけれども相続についての経験が乏しい弁護士に依頼して、取り分そのものが結果的に少なくなってしまうということになっても本末転倒ですので、弁護士報酬が安いからと言って安易に依頼しないことも大切です。
4.まとめ
この記事では遺産相続の相談に強い弁護士の選び方と弁護士報酬の相場について解説しましたので、遺産相続の相談を行う際の弁護士選びの参考になったかと思います。良い弁護士に巡り合うことができれば納得のいく相続をすることができますので、可能であれば複数の弁護士と面談をして選ぶようにするとよいでしょう。(提供:税理士が教える相続税の知識)