株を売った利益を計算するには、「いつ・いくらで・何株」買い、「いつ・いくらで・何株」売ったかを記録する必要があります。それは個人投資家にとって、とても面倒で負担の重いもの。でも、そんな作業が一切不要なすばらしい口座があるのです。
株式投資の口座には大きく2種類ある
皆さんは、株式投資をするために証券会社に開設する口座には2種類あること、ご存知ですか?それが「一般口座」と「特定口座」です。
証券会社に口座を開設し、何も特別な手続きをしなかった場合は「一般口座」が作られます。この口座はまさにノーマルな口座で、株式投資で得た利益を自分で計算して確定申告する必要があります。
しかし、特に売買回数の多い個人投資家にとっては、自分自身で株式投資の利益を計算するのはまさに苦行です。
同じ株を複数に分けて買ったり売ったりしている場合には、「総平均法」により取得単価を計算しないと利益を出すことができません。会計の知識がなければ正直いって苦痛そのものです。
でも、特定口座という口座を開設して、その口座内で株取引をすれば、売却損益の計算を証券会社が代わりに行ってくれます。
特定口座にもさらに2種類がある
証券会社が私たち個人投資家の代わりに売却損益を計算してくれる夢のような「特定口座」。実は特定口座はさらに2種類に分類されます。
それが「源泉徴収なしの特定口座」と「源泉徴収ありの特定口座」です。
源泉徴収なしの特定口座は、証券会社が売却損益を計算してくれますが、確定申告自体は自分自身で行う必要があります。
一方、源泉徴収ありの特定口座は、証券会社が売却損益を計算するだけでなく、売却益にかかる必要な納税も証券会社にて済ませてくれるため、確定申告さえも不要です。
源泉徴収あり・なしそれぞれのメリットは?
自分自身で「確定申告をする必要があるのが源泉徴収なしの特定口座」、「確定申告が不要なのが源泉徴収ありの特定口座」です。これ以外に、それぞれにメリットがあります。
源泉徴収なしの特定口座のメリットは、資金を効率よく使うことができるという点です。これは特にデイトレードなど短期売買を繰り返す個人投資家にとって魅力的のようです。
もし利益が出たときに源泉徴収ありの特定口座であれば、自動的に税金が天引きされ、手取りが目減りしてしまいます。目減りした資金を使って次の株取引を行わなければなりません。
でも、源泉徴収なしの特定口座であれば、利益に対する税金は天引きされません。
税金は翌年末に確定申告でまとめて支払うので、それまでの間は税金相当額の資金も株取引に回し、効率よく運用ができます。
また、源泉徴収なしの特定口座の場合、サラリーマン等は株取引の売却益20万円までは所得税が課税されません。源泉徴収ありの特定口座だと、売却益が20万円未満でも税金が天引きされてしまいますから、この点も源泉徴収なしの特定口座に軍配があがります。
一方の源泉徴収ありの特定口座のメリットは、この口座で得た利益がどんなに多額になっても、他の所得と合算されないことです。そのため、配偶者控除、扶養控除、住宅ローン控除、国民健康保険料などの計算上不利な影響を受けずに済みます。
源泉徴収なしの特定口座では、売却益につき原則として確定申告をしなければならないので、税金や国民保険料のアップといった不利な影響を受けるおそれがあります。
よくわからないけど面倒な作業を減らしたい!という方へのおススメはこれ!
このように、どちらにもメリットとデメリットはありますが、確定申告不要という源泉徴収ありの特定口座のメリットは捨てがたいものがあります。 短期売買をしない個人投資家にとっては、資金効率を教える上で源泉徴収ありの特定口座を使うことは問題になることはないと思いますし、筆者も天引きされて不都合を感じたことはありません。
さらに、源泉徴収ありの特定口座に「配当金にかかる税金の基礎知識」にてお話しした配当金受け取り方法の1つである「株式数比例配分方式」を選択すると、同じ年に生じた株取引の売却損と配当金を証券会社にて相殺して税金の計算をしてくれます。
これは源泉徴収なしの特定口座では行うことができません。
とにかく、よくわからないけど確定申告はじめ面倒なことはできるだけ避けたい、という方であれば「源泉徴収ありの特定口座+株式数比例配分方式」を選ぶのがよいのではないでしょうか。
筆者も、この組み合わせを用いています。
一般口座なら自分の株取引が税務署にバレない・・・は都市伝説?
ところで、個人投資家の中には、「特定口座だと株取引が全部税務署に筒抜けになってしまうから、一般口座で取引している」という方もいるようです。しかし、これははっきり言って「都市伝説」です。
特定口座の株取引の情報は、税務署にも送られますから筒抜けなのは確かです。でも、一般口座で売買していれば税務署には知られないかといえば、そんなことはありません。
実は一般口座での売却も、すべて証券会社から税務署へ情報が提出されています。以前は30万円超の取引に限られていましたが、現在は金額にかかわらずすべて証券会社が税務署へ支払調書というものを提出し、売却の事実を報告しなければならなくなっています。
であるならば、わざわざ売却益計算の手間暇がかかる一般口座より、証券会社が代わりに計算してくれる特定口座、特に源泉徴収ありのほうが、個人投資家にとっては有利といえるでしょう。
このように、よいことづくめの源泉徴収ありの特定口座ですが、実は1点だけ、注意しておかなければならない点があります。
- (1)配当金にかかる税金の基礎知識
- (2)株を売った時にかかる税金の基礎知識
- (3)一般口座と特定口座・税金面で有利なのは?
- (4)損益の通算と繰り越しの方法と注意点とは?
足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。
(提供=トウシル)
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