会社員の方であれば、厚生年金保険の他に、会社が採用する国民年金基金や確定拠出年金などの企業年金に入っている方も多いと思います。この企業年金、人によっては一時金で受け取る方法を選ぶこともできますが、今回はその一時金で受け取るメリット、デメリットを紹介します。

会社員の年金は3段階にわたって準備。企業年金にはさまざまなタイプも

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(画像=(写真=PIXTA))

国民年金・厚生年金保険・企業年金の違い

会社員の年金は3階建てと言われますが、それぞれの階がどのような年金なのかおさらいしましょう。

まず1階部分は基礎年金と呼ばれ、国民年金がこれに当てはまります。日本に住む20歳以上60歳未満の人であれば全員に加入義務があります。

次の2階部分は被用者年金で、厚生年金保険が該当します。会社員や公務員、または私立学校の教職員で70歳未満の方が対象で、基礎年金に上乗せして支給されます。

最後の3階部分が企業年金で、これは国ではなく会社が設ける制度です。つまり、会社によっては企業年金がないところもありますし、一口に企業年金と言ってもいくつか種類があるので、自分の企業年金の種類と内容を確認しておきましょう。

企業年金の考え方。運用指図ができる確定拠出年金がいい?

企業年金は大きく分けて、「確定給付型年金」と「確定拠出年金」に分かれます。

確定給付型年金とは、従業員が将来受け取る給付額があらかじめ約束されている年金制度で、2019年1月現在では厚生年金基金と確定給付企業年金があります。

従業員にとっては、あらかじめ給付額が決まっているため老後の生活設計が立てやすい、資産運用に気を使わずに済む、というメリットがありますが、運用・管理・給付まですべて会社が責任を負いますので、あまりにも会社の業績が悪化した場合、給与に影響が出たり、OBも含めて給付額が減額される可能性もあります。

対して、確定拠出年金は、会社が拠出する「掛金」が決まっている年金制度です。毎月会社から拠出された掛金を、従業員自身が運用し、運用結果によって年金額が変わるのが特徴です。

資産運用を自分の責任で行う必要があるため、60歳以降の計画が立てにくいことや、60歳まで引き出せないなどのデメリットはありますが、今の残高をいつでも確認できる、また自分の運用次第で年金額を増やせ、他の人やOBの運用リスクを負わなくていいというメリットもあります。

企業年金を一時金で受け取る場合の注意点

企業年金は一時金で受け取ることも可能

「年金」と聞くと毎月一定額をコツコツと受け取っていくイメージですが、企業年金は「一時金」として一度に受け取ることもできます。

定年退職した時に「年金」の代わりに「退職一時金」として受け取ることを選べる会社もありますし、企業年金のある会社を辞めた場合に、その年金基金のルールによっては「脱退一時金」として受け取れるケースもあります。

また、会社が採用している企業年金自体が解散することもあり、この場合も他の制度に資産を移すほか、一時金として受け取ることもできます。

企業年金を一時金で受け取るメリット・デメリット

企業年金を一時金で受け取るメリットの一つは、住宅ローンや教育ローンがある場合、一気に返済ができることです。ローンを完済できるならば、新生活を新たな気持ちでスタートできますし、その後かかる利子の負担も減ります。

また、例えば資格学校やリフレッシュのための海外旅行などお金がかかるイベントを考えている場合、一時金で実現するのも有意義なお金の使い方になるでしょう。

しかし、企業年金はあくまで老後の生活費の充実を目的に会社が採用しているものなので、一時金で受け取り、その分を使ってしまえば、それだけ老後に受け取れる金額は減ってしまいます。さらに使う用途がなく余ったお金は自分で運用を考える必要があります。老後の家計管理をより計画的に行う必要がある点は注意しておきましょう。

iDeCoは4段階目の年金!老後の備えを手厚く準備しよう

最近よく聞くiDeCoは、公的年金でも企業年金でもなく、自分が金融機関から掛金の額、運用の方法、受け取り方法などすべてを決める私的年金です。そもそもは自営業者のための制度でしたが、2017年1月から原則として誰でも加入できるようになりました。

会社員の方にとっては4段階目の年金とも言えますので、うまく利用すれば老後の備えを手厚くすることができます。

年金制度をよく理解して将来への不安を減らそう

本来は老後のための資金である年金制度ですが、日本の3階建の年金制度のうち、特殊なケースを除いて一時金として受け取れるのは企業年金だけです。一度に受け取ると管理や運用の心配はありますが、他の年金の受給額とも併せて考え、自分のライフプランにとってより良い受け取り方を選んでみてください。

文・松岡紀史(ライツワードFP事務所代表・ファイナンシャルプランナー)/fuelle

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