ADHDの一元管理メモ
「優れた能力を持ちつつも、注意力が散漫になりがちでミスを繰り返してしまう」……そんな「大人の発達障害」が今、注目されている。そんな中、話題となっているのが、自らも発達障害と診断されながら、独自の工夫で著述家として活躍している借金玉氏だ。著書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』がベストセラーになっている氏がたどり着いた「ミスをしないメモ術」とは?
「完璧なメモ」を目指してはいけない
いわゆる「発達障害」の人間にとって、メモを取ることは大仕事だと語る借金玉氏。細かく分割された手帳や、起動に手間のかかるデジタルツールは、書く以前に気力が萎えてしまう。
「メモへの心理的ハードルは、なるべく低くするのが鉄則です。
まずは、記入するまでの動作を極力少なくします。『出すと同時に開く→ペンを持つ』の2アクションで済ませるため、ノートはジャケットのポケットに収まる小型のものを使用します。
スケジュールもタスク管理もプライベートも、これ1冊で管理しています。用途ごとに使い分けしないので、メモをなくすこともありません」
すべてを1冊で管理する「オールインワン」の手帳こそが、最大のミス予防策。小型で薄いノートは、情報の在りかを一元化する意味でも有用だ。
「『あの件、どこに書いたっけ?』というとき、探す場所が限られているほうが見つけやすいからです。数十ページ程度の薄い手帳なら、手間はかかりません」
手帳自体を忘れるリスクにはどう対処しているのだろうか。「ジャケットやカバンを替えたときに、そうしたミスは発生しがち。ですから、私は同型の手帳を数冊用意し、カバンや別のジャケットに入れておきます。メインの手帳を忘れたらこちらを使い、早めにメインの手帳に転記。転記しなくても、どれかには書いてあると思えば安心です(笑)。多少お金はかかるかもしれませんが、ミスして怒られ、信用をなくすことに比べれば安いものです」
中身に関しては、美しく「書かない」ことが重要だと語る。「キレイな文字も整然としたレイアウトも不要。記入自体に注力し過ぎると、メモすることが嫌になるからです。極端な話、最初のページから順に書く必要もありません。順番がバラバラでも、見開き30面なら、これまたすぐに見つかります」
そしてもう一つ、借金玉氏ならではの工夫がある。それは「感情を伴う言葉を添える」ということだ。
「それも、ネガティブな言葉を書き散らすのがコツ。感情を添えることで、単に事項を羅列するより、はるかに鮮やかに記憶できます。煩雑なやり取りで生じるストレスも吐き出せるので、ぜひ試してみてください」
借金玉(しゃっきんだま)著述家
1985 年生まれ。大学卒業後、本人いわく、「何かの間違いで」優秀な人々が集まる金融機関に就職するも2年で退職。起業して成功するが挫折。その後、ADHD の診断を受け、通院・服薬等の対処を開始。現在はサラリーマンとして働く一方で、ライター・著述家として活躍。近著に『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』(KADOKAWA)がある。《取材構成:林加愛》(『THE21オンライン』2018年11月号より)
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