新技術を持つベンチャーが続々登場

深セン,提携
左から、弁護士の浅田大氏、公認会計士の姥貝賢次氏、〔株〕ビズリーチ 事業継承M&A事業部マネージャーの竹内健太氏(画像=THE21オンライン)

11月30日(金)に、東京・渋谷で、ビズリーチ・サクシード セミナー「未来都市・深センの現状から考えるM&Aによる中国進出の必勝法」が開催された。弁護士の浅田大氏、公認会計士の姥貝賢次氏、〔株〕ビズリーチ 事業継承M&A事業部マネージャーの竹内健太氏が登壇し、出席者からの質問にも答えながら、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深セン(深圳)の企業と日本企業の提携の可能性について説明した。

深センは広東省の都市で、香港と陸続き。日本からの直行便もあるが、成田空港からの毎日1便のみなので、香港からバスやフェリー、今年9月に開業した高速鉄道などで行くのが便利だ。

1980年に鄧小平の指示で経済特区に指定されたときには漁村だったが、急速に成長し、現在は上海、北京に次ぐ中国第3位の経済都市になっている。実質経済成長率は8.0%(2018年上半期)で、中国トップだ。ファーウェイやテンセントの本社も深センにある。平均年齢は推定28歳と若い。お洒落なカフェや緑も多い街だ。

セミナーでは、浅田氏と姥貝氏が実際に訪れた深センの企業を、写真や動画とともに紹介した。中国から欧米の大学に留学した人は7割ほどが帰国し、その中には深センで起業する人も多いという。助成金やオフィスを安く借りられる制度などがあり、高度人材が起業しやすい環境が整備されているからだ。

高画質の映像を映し出せる厚さ0.2ミリの膜を開発したKOOKなど、紹介された企業の中には高い技術力を持つ企業も多かった。「日本では、いかに利益を出し、IPOするか、というように、会社の成長が重視される。一方、中国では技術が重視され、どのようにビジネスにするかが見えていない基礎研究にも多くの投資が集まる」と、姥貝氏は話した。

深センの企業が日本企業との提携を求める場合、その目的は、日本市場への進出や日本企業が持っている技術だ。例えば、遺伝子解析をする企業が日本での解析キットの販売を検討したり、中国全土でフルーツを栽培している企業が日本の土壌改良材の輸入を検討したりしているケースがあるという。

一方、日本企業が深センの企業と提携するメリットについては、「以前は安い人件費を求めるケースが多く、今は中国での販売網を求めて提携するケースが多くなっているが、今後は技術を求めて提携するケースが増えてくるだろう」(浅田氏)ということだ。

提携の形の一つとしてM&Aがあるが、日中では企業経営のスタイルが違うので、100%の株式を取得するよりも、一部を取得するほうが現実的だろうと浅田氏は話す。

また、中国で得た利益は日本に持ち出すことができない言われることもあるが、実際には、利益配当として得ることはできると説明した。ただし、その手続きが政情などによって遅れることはあるという。利益配当ではない、中国企業や中国の個人からの海外送金は、難しいそうだ。

中国企業の中には、今でも二重帳簿をつけているところもあるので、提携の際には信頼できる相手かどうかを慎重に見極める必要がある。また、問題が生じた場合は日本の裁判所で解決するという契約をしていても、日本での裁判で勝ったからといって中国での強制執行ができないなど、契約上の注意点も多い。現地の事情を良く知る専門家のアドバイスが欠かせない。

中国というと賄賂のイメージを持っている人もいるだろうが、公務員だけでなく、民間企業の担当者でも、帳簿に載らない利益供与をすることは犯罪となる。習近平政権になって、賄賂の取り締まりは厳しくなっている。

深セン,提携
(画像=THE21オンライン)

THE21編集部(『THE21オンライン』2018年12月01日 公開)

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