「悩みブレーキ」と「大きな子供ブレーキ」の外し方
創業から4年で上場、10年で1,000億円の売上げを達成したハイパーグロースカンパニー・〔株〕ガリバーインターナショナル(現・〔株〕IDOM)で社員教育を手がけ、同社を退任後は急成長するベンチャー企業などの組織戦略や人材育成を支援している吉田行宏氏は、「せっかく持っている能力を、充分に発揮できていないビジネスパーソンが多い」と話す。いったいどういうことなのか?そして、本来の能力を発揮する方法とは?
まずは「ブレーキを踏まないほうが人生にプラスだ」と意識しよう
吉田氏は、ガリバーや現在支援している様々な企業で、「本来はもっと力があるのに、もったいないな」と思う社員を数多く見てきた。そして、そういう社員が、マインドセットを変えることによって、急に成長する姿も見てきたという。
「成長の可能性を殺してしまっている、不要な『ブレーキ』が外れると、グッと伸びるのです。
成長というと、『できないことをできるようにする』『持っていない能力を身につける』というように、『足し算』で考えがちです。しかし、『ブレーキを外す』という『引き算』でも、大きく成長できるのです。今年4月に出版した『成長マインドセット』(クロスメディア・パブリッシング)では、その『ブレーキ』とは何かを言語化して、解説しました」
同書では、成長を阻む「ブレーキ」には、「悩みブレーキ」と「大きな子供ブレーキ」の2種類があるとしている。まず、一つ目の「悩みブレーキ」とは、どういうものなのか。
「悩むこと自体は悪いことではありません。課題を解決するために、1日や1週間、あるいは1カ月という期間、真剣に悩むことは、もちろん必要なことです。
しかし、課題を解決するでもなく、『給料が上がらない』『プライベートの時間が取れない』『他の仕事のほうが向いているんじゃないか』などとただ悩むだけで、『イヤだなぁ』という気持ちを3カ月や半年、あるいは1年も2年もエンドレスに持ち続けていると、成長にブレーキをかけてしまいます。これが『悩みブレーキ』です。
人間は感情の生き物ですから、そうなってしまうのはやむを得ない面もあります。しかし、『課題解決と悩むこととは違う』『悩みを長く引きずるのは、ストレスにもなって、よくない』ということを知っておくだけでも、気持ちに早くケリをつける助けになります」
「悩みブレーキ」を外すステップの一つ目は、このように、「悩みブレーキの存在を知る」ことだ。そして、二つ目のステップは、「悩みブレーキを踏まない覚悟を決める」ことだという。
「『悩みブレーキを踏まない』というのは、いったん決断をしたら、全力で進むということ。決断をする際に悩むことは必要ですが、決断をしてからも『別の決断をしたほうがよかったかも……』と悩んでしまうと、成長にブレーキがかかってしまいます。
そして、『覚悟を決める』とは、主体性を持って、当事者になるということ。別の言い方をすれば、自分が自分の人生の経営者になるということです。
覚悟が決まっていないと、評論家的に物事を見てしまいます。それでは成長できません。
覚悟を決めるのには勇気が必要です。当事者になると最初は強いプレッシャーがかかるので、それが恐く思えるのです。急にできることではありませんが、それでも、『覚悟を決めることが重要だ』という意識を持っていることが大切。意識しながら努力をしていれば、どこかのタイミングで、『自分がやるべきことをやるためには、当事者になるプレッシャーなんて大したことではない』と感じる時が来るはずです。
実際に当事者になってしまえば、想像していたほど恐いものではないことがわかるでしょう。自転車に乗れてしまえば、乗れなかったのが不思議に思えるのと同じようなものです」
そして、「他責にしないは100%」も重要だと、吉田氏は話す。
「評論家的な見方をやめて当事者意識を持つということは、他責にしないということです。『他責にしないは100%』とは、100%の当事者意識を持つということ。それができると、良い意味での反省をして、改善をしようという意識が生まれます。それが成長につながるのです。
他責にしてしまうのは、一種のクセですから、意識すれば直すことができます。仕事だけでなく、家庭でも、配偶者や子供、親などに他責をしないよう、常に意識するようにしましょう。家庭のほうが、甘えが出て、他責にしやすいので、強く意識することが必要だと思います。
絶対に他責にしない生き方は、ストレスフルだと思うかもしれません。確かに、クセを直している段階ではそうでしょう。しかし、『他責にしないは100%』が身についてしまえば、そのほうがむしろラクに生きられます。自分がやるべきことの判断を他人に左右されなくなりますし、『見返りを期待していたのに得られなかった』などと落ち込むこともなくなりますから」