マンションの資産価値を維持していくうえで、大規模修繕工事は重要だ。管理組合は工事に向けて修繕積立金を計画的に積み立てるわけだが、東京都内のマンションの8割以上は予定の工事費に対して修繕積立金が不足している。修繕積立金の状況を調べずに中古マンションを購入することは非常に危険だ。
都内マンションの大規模修繕費用は1,000万〜1億円
マンションの長期修繕計画は、全国の約9割のマンション管理組合で作成されている。新築マンションの場合は30年以上、既存マンションの場合は25年以上がその基準だ。既存マンションの場合、大規模修繕の周期を12年程度と考えると、一度の長期修繕計画の中に大規模修繕を2回予定することになる。
マンションにおける大規模修繕には、主に外壁塗装、鉄部塗装、屋上その他防水工事があり、マンションによってはエレベーターの交換や外壁タイルの交換などもある。
マンションの規模によって工事費用は異なるが、東京都内のマンション場合、1回の工事費用は1,000万超〜1憶円が72.4%を占め、工事には多額の費用がかかることがわかる。
大規模修繕を行う目的は、メンテナンスを定期的に行うことで建物の資産価値の低下を抑え、外壁やタイルの崩落、錆による腐食、雨漏りなどを防ぐためだ。大規模修繕は日常生活に直接影響を及ぼす箇所の工事であり、実施できなければ住民は生命の危険にさらされ、最悪の場合は住民が住めなくなってスラム化してしまう。
修繕積立金には2つの積立方式がある
修繕積立金は、長期修繕計画に基づいてマンションの全戸数・期間をもとに計算を行う。修繕積立金の積立方式には、工事の必要金額に基づいて毎月均等の金額を積み立てる「均等積立方式」と、積立開始時の金額を抑えて段階的に値上げする「段階増額積立方式」がある。
均等積立方式は計画的に資金を積み立てることができるが、段階増額積立方式と比べて積立当初の負担額が大きい。
将来、自分の給料が上がる前提で考えると段階増額方式が望ましいように思えるが、増額時に組合員の同意を得られないと修繕金が不足し、適切な工事が行われないリスクがある。
特に段階増額方式を採用しているマンションの場合は、修繕積立金が不足していないかどうか確認したい。
注意したい修繕積立金の5つの落とし穴
中古マンションを購入する際は、修繕積立金が計画通り積み立てられているかが重要になるわけだが、特に注意すべき点は以下の5つだ。
築年数の浅いマンションは途中で増額することもある
ほとんどのマンションは、新築分譲時に段階増額方式を採用する。一般的に修繕積立金は、分譲時にマンションの分譲会社が長期修繕計画とともに提示するため、販売しやすいように当初は修繕積立金を安く見せることができる段階増額方式を採用するわけだ。築年数の浅いマンションは段階増額方式を採用しており、修繕積立金は増額されることがあることに注意したい。
長期修繕計画のないずさんな管理のマンションがある
修繕積立金は、分譲時に長期修繕計画をもとに計算する。長期修繕計画がないマンションの修繕積立金は裏付けがなく、管理組合がずさんな管理をしているケースが多い。大規模修繕の時期になって修繕積立金が突然値上げされたり、臨時徴収があったりする。最悪の場合、工事自体が行われないこともある。
戸数の少ないマンションは修繕積立金が高め
15階未満のマンションで比較した場合、専有面積が5,000平方メートル未満と10,000平方メートル以上では、1平方メートル当たりの毎月の修繕積立金に40円の差がある。大規模修繕は外壁などの共用部分の工事のため、戸数が少ないと1戸当たりの負担が大きくなってしまうのだ。
前のオーナーの滞納分も支払わなければいけない
中古マンションを売買する際には、区分所有法に定められている通りに管理費・修繕積立金を承継する義務がある。前のオーナーが管理費や修繕積立金を滞納している場合は、買主が滞納分を支払わなければならない。
全体の滞納額が多い場合は裁判等で回収するケースも
マンション全体で修繕積立金の滞納金額が多い場合は、裁判等で回収しなければならないケースもある。自主管理のマンション管理組合の場合、専門的な知識がないため回収が長期化し、大規模修繕工事を行えないこともある。
中古マンション購入の際は重要事項調査報告書を必ず確認
長期修繕計画や修繕積立金の内容については、仲介会社から提供される重要事項調査報告書に記載がある。中古マンション購入の際は、重要事項調査報告書を使って積極的に確認すべきだ。
文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES
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