住宅ローンは約定通りに毎月返済するだけではなく、残高の一部を繰上返済することもできる。繰上返済は安心感を得られることに加えて、完済までの総返済額を減らせるメリットがある。
一部繰上返済には「期間短縮型」と「返済軽減型」がある
一部繰上返済には、毎月の返済額は変えずに返済期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間は変えずに毎月の返済額を減額する「返済軽減型」がある。
メリットが大きいのは「期間短縮型」だ。どうしても毎月返済額を減らしたい人以外は「期間短縮型」を選んでいる。「期間短縮型」で得する仕組みを解説しよう。
「期間短縮型」の場合、繰上返済する資金はすべて元金分に回される。たとえば、借入額3,000万円、金利1%の35年元利均等・ボーナス返済なしだと、毎月の返済額は8万4,685円。3年後に100万円繰上返済すると、残りの返済期間は本来なら「35年-3年=32年」なのが、30年8ヵ月に短縮される。その結果、支払利息が36万7,119円減少することになる。返済期間が16ヵ月も短くなったうえ、繰上返済しない場合に比べて約37万円も返済額を減らすことができるわけだ。
金利が高くなると繰上返済効果が拡大
この試算は金利1%で行っているが、将来金利が2%、3%と上がったときに借り入れる人の場合、繰上返済効果はもっと大きくなる。
金利2%なら返済期間は18ヵ月減り、支払利息も約86万円減る。金利3%なら21ヵ月短縮され、支払利息は約153万円減少する。
返済期間が短くなるメリットは大きい。35歳で35年ローンを組むと完済は70歳だが、途中で繰上返済を数回行えば、完済時年齢を65歳、60歳にできる。リタイア後も返済が続く不安感をかなり払拭できるだろう。
住宅ローンの完済まで平均経過年数は15年
実際に、当初の予定より早く住宅ローン返済を終える人は多い。民間住宅ローンを利用した人の当初の返済期間の平均は26.4年だが、実際は平均15.2年で返済を終えている(住宅金融支援機構の「2018年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果調査」)。
これには、借換えや買換えによってそれまでの住宅ローンを一括返済して、新たにローンを組んだ人も含まれているが、繰上返済で返済期間を短縮して早めに返済を終えている人もかなり多いはずだ。
メリットが大きい繰上返済に注目している人は少なくない。住宅ローン相談に対応しているファイナンシャルプランナーは、「借入前から、将来繰上返済してできるだけ早く返済を終えようと考えている人が少なくない」という。
住宅ローン選びにおいても、繰上返済のしやすさが重視されている。住宅ローンを選んだ最大の理由は「金利の低さ」だが、「団体信用生命保険の充実」「住宅・販売事業者の勧め」に続くのは「繰上返済のしやすさ」だ(住宅金融支援機構の「2018年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」)。住宅ローン借入時から計画的に貯蓄を進めて繰上返済を実施し、早めに返済を終えようと考えている人が多いことを表している。
一部繰上返済は、今後、金利が上がってから購入する人はもちろん、適用金利が上がる可能性がある変動金利型や固定期間選択型の住宅ローンを利用している人にとっても効果は大きい。ぜひうまく活用していただきたい。
文・山下和之(住宅ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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