コツ6 最初は「最短距離」を提示
いくら良い解決策でも、これまでに前例のないものだと、頭のカタい上司や役員などからストップがかかることがあります。
しかし、彼らの考え方を忖度した解決策だと、問題解決までの「最短距離」ではなく「迂回路」になってしまい、実行に時間がかかって仕方ありません。
私が勧めるのは、最短距離で正面突破する方法と、迂回路を行く方法の両方を用意しておき、最初は最短距離を提示することです。すると、案外、すんなりOKがもらえることもあります。迂回路は、最短距離が却下された場合に提示すればいいのです。
余計な忖度で初めから迂回路を提示し、仕事のスピードを自分で遅くしているケースは、少なくないように思います。
コツ7 部下がやる気になる目標
「上から無理難題が降ってきた……」。マネージャークラスの人にとっては、これも解決しなければならない問題の一つです。
例えば、「ほぼ絶対に売れない商品を半年で100万個売らなくてはならない」というような場合、マネージャーは、それをそのまま部下にノルマとして押しつけがちです。しかし、それでは部下のモチベーションが上がらず、問題は解決しません。
もちろん、売れる商品を作ることへの働きかけを続けるのは前提ですが、現実的には、すぐには結果が出ないでしょう。
そんな中でも部下に働いてもらうためには、会社から課せられた無茶な目標ではなく、別のゴールを独自に設定するようにしましょう。
理想的なのは、部下一人ひとりの考え方を汲んで、その人に合ったゴールを設定することです。人と会うことが好きな営業マンには、「月50人に営業する」というようなプロセスを目標として設定する。社外に顔を売りたいと思っている営業マンには、「講師として商品の使い方を説明するセミナーを企画・開催する」ことを目標にする、といった具合です。
要は、「自分のキャリアにプラスになる」と部下が思えるような目標を設定するのです。そうすると、部下がやる気を出して、問題の解決へと近づきます。
コツ8 非協力的な理由を探る
問題解決に非協力的に見える人は、どんなところにも必ずいるものです。動いてくれないと、チーム全体にも悪影響をおよぼしますから、悩みの種になります。
非協力的に見える人に協力してもらうためには、その人が動かない理由がどこにあるのかを見極めることが必要です。そのためのフレームワークを紹介しましょう。「WHY/CAN/WILL」で分類するのです。
まず、「WHY」とは、「やるべきことはわかっているけれども、なぜ、その仕事をしなければいけないかがわからない」というケースです。この人には、やらなければいけない理由を、きちんと理詰めで説明することが必要です。
「CAN」は、「やらなければいけないことはわかっているのだけれども、能力が足りなくてできない」というケース。この人には、その仕事のやり方を丁寧にトレーニングすることが必要です。
最後の「WILL」は、「やるべきことはわかっているし、できる能力もあるけれども、やりたくない」というケースです。
「やりたくない」というのは、単に気分が乗らないということもあれば、「あなたのことが嫌いだから、協力したくない」という場合もあります。このタイプの人に理屈を言うと、「そんなことはわかっている」とますます反発されるので、情で動かすしかありません。あなたが嫌われているなら、他の人に言ってもらうしかありませんし、それでもダメならメンバーから外れてもらいましょう。
当たり前の話だと思うかもしれませんが、現実には、「CAN」タイプの人を「やる気がない」と責めたり、「WILL」の人に対して理詰めで説明したりということがよくあります。非協力的に見えるメンバーがいるときには、「WHY/CAN/WILL」を思い出してください。
河野英太郎(こうの・えいたろう)
日本アイ・ビー・エム部長/Eight Arrows代表取締役/グロービス経営大学院客員准教授
1973年、岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。〔株〕電通、アンダーセンコンサルティング〔株〕(現・アクセンチュア〔株〕)などを経て、日本アイ・ビー・エム〔株〕にて、コンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門リーダー、サービス営業などを歴任。2017年に〔株〕Eight Arrowsを起業し、代表取締役に就任。著書に、ベストセラーとなった『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。《取材・構成:杉山直隆 写真撮影:永井浩》(『THE21オンライン』2019年2月号より)
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