従業員に精神的・身体的苦痛を与え、職場環境を悪化させるハラスメントへの対策は企業にとって最重要課題です。ハラスメントに関して先進的に取り組んでいる企業の対策を知ることは、自社のハラスメント防止にも参考になります。

企業に求められるハラスメント対策と2つの事例

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(画像=fizkes/Shutterstock.com)

企業の中で、ハラスメント対策を具体的に統括するのは人事担当部署になるでしょう。ハラスメント対策は、事前に予防することと、起こってしまったハラスメントの被害を最小限に収めることが求められます。

実務的に職場を管理するマネジメント層のハラスメント対策も重要です。自分ではそう思っていなくても業務の適正な範囲を超えているケースも考えられますので、管理職には日ごろの業務のあり方を確認させることが必要です。また上司から部下だけでなく、先輩・後輩や、部下から上司などさまざまな立場の人たちがハラスメントの加害者になり得ることは知っておくべきでしょう。

ハラスメントに関して先進的に取り組んでいる企業の対策はどういうものなのでしょうか。厚生労働省が運営しているポータルサイト「あかるい職場応援団」を参考に2つの事例を紹介します。

A社(金融業・保険業、従業員数約350人)

A社のハラスメント対策は、「フェアである」という企業理念としっかりと結びついており、パワーハラスメントの定義も明確にしています。

同社のコンプライアンス・ハンドブックの冒頭には、ハラスメントにつながる行為を行わないのはもちろん、他人が行うことも厳しく戒めています。また、役員から従業員まで一人ひとりがパワハラに対する正しい理解を深めることと、パワハラの排除・防止への努力が重要であると記してあります。従業員にハンドブックを毎日携帯させることで、ハラスメントへの意識付けを行っています。

また、外部機関による相談窓口として職場のヘルプラインを設置し、人事総務部やコンプライアンス部に社内相談窓口を設置するなど、相談しやすい環境を作っています。

B社(LPガスの卸売・小売、従業員数約100名)

B社では最初に、全従業員のハラスメントに対する理解を深めるために、3段階の研修に取り組みました。第一に、管理職を対象に研修を行い、パワハラの定義や影響、目指すべき職場について確認しました。第二に、社長からのメッセージとして「コンプライアンス違反やハラスメントメントは社内にはあってはならないもので、会社として防止対策を行うこと」を表明しました。第三に、全従業員を対象に社会保険労務士を講師に招いた講演を行いハラスメントの理解を深めました。

また、従業員が直接相談できる窓口を社内と社外に設置し、玄関や会議室に啓発ポスターを掲示するなど、ハラスメントについての取り組みを継続しています。

ハラスメント対策の基本的な枠組みを参考に

厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル~予防から事後対応までのサポートガイド」では、ハラスメント対策における基本的な枠組みとして下記を挙げています。

① トップのメッセージ
② ルールを決める
③ 実態を把握する
④ 教育する
⑤ 周知する
⑥ 相談や解決の場を設置する
⑦ 再発予防のための取り組み

①から⑤までは予防対策であり、⑥⑦は解決するための取り組みに位置付けられています。上で紹介した2社もこうした基本的な枠組みに沿った取り組みを行っているといえるでしょう。何よりもハラスメント対策の重要性をトップが認識し、強いコミットメントで進めていくことが大切です。ハラスメントは被害者の健康問題だけでなく、周りの従業員のモチベーション低下やチームの生産性低下などにも影響し、ひいては企業業績の悪化にもつながります。企業は重大な経営課題としてハラスメント対策に注力すべきでしょう。

他社の成功事例に学び実践につなげる

ハラスメント対策に関して先進的に取り組む企業の取り組みには、トップのメッセージやルール決め、教育・研修、社内での周知・啓蒙、相談窓口の設置などの共通点がみられます。他社のハラスメント対策を自社の取り組みの参考にするとよいでしょう。(提供:あしたの人事online


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