結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想を下振れ
3月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は2 月の個人所得および1月の消費支出統計を公表した。個人所得は前月比+0.2%(前月:▲0.1%)となり、前月からプラスに転じたものの、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%は下回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.1%(前月改定値:▲0.6%)と、▲0.5%から下方修正された前月から小幅ながらプラスに転じたものの、市場予想(+0.3%)は下回った(図表1)。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出も前月比+0.1%(前月:▲0.6%)と、前月からプラスに転じたものの、市場予想(+0.3%)は下回った(図表5)。貯蓄率(1)は7.5%(前月:7.7%)と前月から▲0.2%ポイント低下した。
価格指数は、総合指数が前月比▲0.1%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(横這い)を下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は+0.1%(前月:+0.2%)と、こちらも前月、市場予想(+0.2%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月改定値:+1.8%)と、+1.7%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+1.4%)には一致した。コア指数は+1.8%(前月改定値:+2.0%)と、+1.9%から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想(+1.9%)も下回った(図表7)。
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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
結果の評価:個人消費は12月の大幅な落ち込みからの回復は弱い
1月の名目個人消費(前月比)は+0.1%の伸びに留まり、好調な年末商戦の事前予想に反して、09年9月(▲0.8%)以来の大幅な落ち込みとなった前月(▲0.6%)からの回復が弱いことを示した(図表1)。
一方、貯蓄率は12月に前月の6.2%から7.7%に急上昇した後、1月も7.5%と高水準を維持した。
このため、個人消費の回復は鈍いものの、所得対比で個人消費は余力を残していることが分かる。また、年初からの株式市場の回復などを背景に消費者センチメントが1月を底に反発していることや、2月の個人所得がプラスに転じたことを考慮すると、2月の個人消費は回復が加速する可能性が高いとみられる。
物価は(前年同月比)は、総合指数が11月から、コア指数も8月からFRBが目標とする2%の水準を下回っている状況が持続しているほか、両指数ともに前月から低下しており、足元で物価上昇圧力が後退していることを示す結果となった。
所得動向:農家に対する補助金が増加に転じ、自営業者所得が回復
2月の個人所得(前月比)の内訳をみると、特殊要因の剥落で大幅な落ち込みとなった利息・配当収入が▲0.7%(前月:▲3.7%)とマイナス幅は縮小しものの、2ヵ月連続でマイナスとなったほか、政府による社会保障関連の補助金などの移転所得も+0.4%(前月:+2.7%)と前月から大幅に伸びが鈍化した。
一方、賃金・給与が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持したほか、農家に対する政府補助金の減少により、前月に大幅な減少となった自営業者所得が、政府補助金が小幅ながらプラスに転じたことにより、2月は+0.7%(前月▲1.7%)とプラスに転じた。
個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、2月が+0.2%(前月値:▲0.2%)と前月からプラスに転じた(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベースは1月が▲0.2%(前月:+1.0%)と大幅な伸びとなった前月からマイナスに転じた。なお、2月の実質ベースの結果は公表されていない。
消費動向:自動車・自動車部品消費の落ち込みが顕著
名目個人消費(前月比)は、財消費が▲0.2%(前月:▲2.4%)とマイナス幅は縮小したものの2ヵ月連続でマイナスとなったほか、サービス消費も+0.2%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。財消費では、非耐久財が+0.3%(前月:▲2.2%)と前月からプラスに転じたものの、耐久財が▲1.2%(前月:▲2.9%)と2ヵ月連続で大幅なマイナスとなった。
とくに、耐久財では、自動車・自動車部品▲5.3%(前月:▲1.3%)と18年2月(▲5.3%)以来の大幅な落ち込みとなった。一方、家具・家電が+0.9%(前月:▲2.6%)、娯楽財・スポーツカーも+1.5%(前月:▲5.0%)と、前月からプラスに転じた。
非耐久財は、食料・飲料が+1.1%(前月:▲1.2%)、衣料・靴が+0.3%(前月:▲3.1%)と前月からプラスに転じたものの、ガソリン・エネルギーが▲5.1%(前月:▲5.4%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。
サービス消費は、住宅・公共料金が+0.4%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じたほか、外食・宿泊も+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した。一方、娯楽サービスが▲0.6%(前月:+0.3%)、金融サービスも▲0.5%(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じた。
価格指数:前月比、前年同月比ともにエネルギー価格が下落
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲3.2%(前月:▲2.8%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.1%)と、こちらは3ヵ月連続でプラスを維持した。
前年同月比では、エネルギー価格指数が▲6.5%(前月:▲0.4%)と16年10月(▲0.2%)以来のマイナスに転じた前月から2ヵ月連続でマイナスとなったほか、マイナス幅が拡大した(図表7)。食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.6%)と前月から伸びが加速した。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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