厚生年金と国民年金基金は、両方とも国民年金法にもとづく公的年金制度です。ともに老後に十分な生活費を確保することを目的とし、国民年金に年金を上乗せできます。
しかし、両者の違いがわからない人もいるでしょう。そこで、各年金制度の加入要件や毎月払うお金や、支給される年金について確認のうえ、それぞれにどんなメリット・デメリットがあるか比較してみましょう。
国民年金基金と厚生年金の加入条件
最初に、厚生年金、国民年金の加入条件を確認しましょう。
国民年金基金の加入条件
国民年金基金は、フリーランスや自営業者など国民年金にのみ加入している人を対象とした公的年金です。国民年金に掛金を上乗せして将来もらえる年金を増やします。
<国民年金基金の加入条件>
1)自営業とその家族、学生など(国民年金第1号被保険者)
※農業者年金加入者と国民年金の納付が免除されている人は除く
2)国民年金に任意加入している60~65歳の人と海外居住者
国民年金基金は公的年金ですが、加入は任意となっています。
厚生年金の加入条件
厚生年金は、企業などの厚生年金適用事業所に勤務する人を対象とした公的年金です。
<厚生年金の加入条件>
1)正社員、法人の代表者、役員
2)週の労働時間・1ヵ月の所定労働時間が正社員の4分の3以上の人
3)1、2に該当しない人で次の要件を満たす人
・週の労働時間が20時間以上
・月額賃金8万8,000円以上
・雇用期間が1年以上
・従業員が501人以上の事業所に勤めている
・学生ではない
以上の加入条件を満たした人は、自動的に厚生年金の被保険者となります。
国民年金基金と厚生年金の保険料と所得控除について
次は、国民年金基金と厚生年金で納付するお金について見ていきましょう。
国民年金基金の保険料と所得控除
掛金は全額自己負担となり、その上限は6万8,000円です。掛金月額は性別、加入時の年齢、選んだ給付の型や加入口数で決まります。国民年金基金のホームページでは、掛金のシミュレーションができます。加入を考えている人はぜひ利用してみましょう。
厚生年金の保険料と所得控除
年金保険料は給与と賞与をもとに計算するため、被保険者の年収により保険料額が変わります。
<計算式>
標準報酬月額(毎年4、5、6月に支払われた給与の平均額)×保険料率18.3%
保険料は事業主と被保険者が半額ずつ負担する形です。なお、国民年金基金、厚生年金ともに、掛金は全額所得控除の対象となります。
厚生年金と国民年金基金で支給される年金の種類
それぞれの制度で支給される年金について説明します。
国民年金基金の加入者がもらえる年金
国民年金基金で給付される年金の種類は、老齢年金と遺族一時金です。
・老齢年金
60歳または65歳から加入者本人がもらえる年金です。加入時の年齢や掛金期間に応じた年金が支給されます。年金額が12万円未満だと年1回、12万円以上だと年6回の支給となります。
・遺族一時金
年金を受け取る前や定められた保証期間中に本人が亡くなった場合に遺族がもらえる一時金です。加入時の年齢、死亡時の年齢、死亡時までの掛金期間、保証期間に応じた遺族一時金が支給されます。
厚生年金の加入者がもらえる年金
厚生年金で給付される年金の種類は以下の通りです。
・老齢厚生年金
65歳から支給される年金です。厚生年金加入期間中の報酬や加入期間にもとづき計算されます。現在はマクロ経済スライドが導入されており、賃金や物価の伸びがマイナスの場合は年金支給額が下がる可能性もあります。
・障害厚生年金
加入期間中の事故や病気で重篤な障害を負った場合に、障害の度合いに応じて支給される年金です。
・遺族厚生年金
遺族がもらえる年金です。配偶者は中高齢の加算や寡婦加算が受けられる場合があります。
両者を比べると、厚生年金の方がより手厚い年金が支給されることがわかります。
国民年金と厚生年金のメリット・デメリット
最後に、メリット・デメリットの面から国民年金基金と厚生年金について見てみましょう。
国民年金基金のメリット、デメリット
国民年金基金のメリットは、マクロ経済スライドの影響を受けないため、賃金や物価が下がっても年金支給額が減る心配がないことです。デメリットは、掛金が全額自己負担である点や、掛金額に上限がある分支給される年金が少ないことです。そのため、iDeCo、預金、NISAなどを上手に利用しながら老後資金を貯めることが重要になります。
厚生年金のメリット、デメリット
厚生年金の最大のメリットは、年金保険料を勤務先が半分負担する点です。これは国民年金基金にない、非常に大きなメリットになります。また、障害年金があるのも安心材料の一つです。一方、デメリットはマクロ経済スライドが発動されると年金支給額が下がるリスクがあること。その点で、老後の年金に不安が残ります。
国民年金基金と厚生年金の違いをよく理解しよう
国民年金基金と厚生年金は、加入条件をはじめ、保険金や掛金などの納付金から将来の年金の内容や金額までまったく異なるため戸惑う人も多いでしょう。しかし、将来会社員から自営業になる、あるいはその逆の場合も、加入する年金制度の変更が必要です。そのような場合に備えて、国民年金基金と厚生年金の違いをよく理解しておきましょう。
文・大岩楓/fuelle
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