3、取扱商品・サービス
ここには、競合先の商品・サービスに比べてどう差別化できているか、新しいサービスがある場合は、どこが新しいのかという点を具体的に記載しよう。例えば、「アットホームなお店」「創作料理の提供」といった抽象的なものだけではなく、セールスポイントや客層など、差別化を実現させるための「根拠」を持っていることが重要になる。
取扱商品やサービスはビジネスモデルの根幹であるため、具体的な儲かる仕組み、お客様に選ばれる魅力や要素がなければ事業の継続は困難となってしまう。したがって、実際に商品がどのような優位性を持っているのかをしっかりと検証して記載する必要がある。商品の特徴や優位性については、創業者の主観による「自信」ではなく、客観的な「確信」が持てるところまで掘り下げていこう。
4、取引先・取引関係等
ここは、取引先や掛取引の割合などを記載する項目だ。「創業者との関係性」もアピールポイントになり得るので、合わせて記載するようにしよう。例えば、「仕入先の経営者が創業者の親族で、他店よりも安価で販売してくれる」というようなことであれば、競合先よりも有利に商品を販売できるメリットになるので必ず記載するようにしたい。
掛取引や仕入値などに関しては、創業前なのでわかる範囲で構わないが、ある程度の見通しだけでも記載しておこう。まれに、取引先から劣悪な条件で取引を持ち掛けられていることもあるのでこの段階で早めの確認をしておけば、事業悪化の予防にもなるだろう。
5、必要な資金
まず、「設備資金」の欄では、できる限りエビデンス(疎明資料)も提出することが重要だ。例えば、導入予定の仕器・備品の見積書、店舗の賃貸契約書等を見て、正しい数字を記載するようにしよう。ちなみに設備資金は、理想を追いかけすぎて資金が大きく膨らんでしまうことがよくある。複数の業者から見積りを取ったり、リースや中古品で代用したりと、資金を抑えるための工夫ができないか、今一度確認をするようにしよう。
また、「運転資金」については、約半年を目安に計算をしてみよう。業種によっても異なるが、事業が黒字になるまで少なくとも半年はかかると言われている。その間に思わぬ支出があった場合、基本的には運転資金で対応することになる。運転資金が底をついてしまったら経営ができなくなるので、余裕を持った資金計画を立てておくことが大切だ。
6、資金の調達方法
この項目で大切なのは、「自己資金」の欄の書き方だ。それによって、これまでどれくらいの準備をしてきたか分かるからである。きちんと積立等を行っていれば、一定の信頼が置かれることになるだろう。現在の給料の中から毎月一定額コツコツと貯蓄して いくなどして、計画的に自己資金を増やしていくことが大切だ。
一方で、「5年前から創業を考えていた」という割に自己資金を用意していなかったり、面談日の前日になっていきなり口座にお金が入っていたりする場合には、動機や計画性の矛盾が生じているという印象を与えてしまいかねない。もちろん、融資を希望する人の自己資金は少ないのは当然なので、金額の大きさではなく、きちんとした資金計画を提示することがポイントになる。
7、事業の見通し
この項目は、多くの創業者が記入に悩むところだ。しかし、ここがしっかりと書けないようでは、事業の経営はうまくいかないとも言える。一般的に、創業当初は経費が予想以上に膨らむことが多く、売上も甘く考えがち。よって、創業者が自分の経験などをもとに、しっかりとした見通しを立てることができていれば大きな信用につながるだろう。
例えば、前職の経験から「人件費は相場から見て○○万円くらいで人が集まって、原価率は○%くらい」というように、明確な記載を心がけること。また、その際に業種別の経営指標なども活用し、数字の妥当性の検証も合わせて行っておくなど、裏づけをしっかりとすることが何より重要になる。
以上、日本政策金融公庫の創業計画書をもとに主な項目のチェックポイントを紹介した。金融機関の審査においては、項目ごとに見るだけではなく、各項目を関連づけて矛盾がないか、整合性がとれているかを確認されることが多い。客観性や計画性、創業への想いなど、様々な要素が必要になるが、ぜひ今回の記事を参考に創業計画書の作成に取り組んでもらえたらと思う。次回は、より良い創業計画書を作るためのブラッシュアップの手法を紹介していく。(提供:Foodist Media)
執筆者:大槻洋次郎