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「サラリーマンやOLが帰ってくる街に店を作りたかった」と堤社長(画像=Foodist Media)

ドミナント戦略だけではない多店舗展開、あくまでも「人ありき」

開店してすぐに人気が出た『リ・カーリカ』は連日満員となり、2015年に隣駅の都立大学に2号店『カンティーナ カーリカ・リ』を、2017年4月には再び学芸大学に3号店『あつあつ リ・カーリカ』をオープン。東急東横線の学芸大学周辺に集中させたのはそれなりの理由がある。

そもそも『リ・カーリカ』を学芸大学につくったのは、都心部ではなく、サラリーマンやOLが帰ってくる場所につくりたいという思いが原点。住宅地に寄りすぎると集客に難があると考え、長く賑わっている商店街があり、住宅地もあるという条件で探して学芸大学に決めた。

2号店は、1号店『リ・カーリカ』が繁盛店になり、客からの電話を断ることが多くなったこともあって新規店舗の必要性が生じ、隣駅にオープン。「1号店の近くに出そうと思ったのですが、10年、20年のスパンで店舗経営をやっていきたいと思っていたので、近すぎると良くないだろう、と。高架下で、駅の近く、帰りにブラッと寄ってしまうとか、家族で訪れやすい場所ということで決めました。ウチは何となく大人の店というイメージがあるので、2号店は家族で行きやすいイメージを意識しました」。

3号店は学芸大学で1号店のすぐそばに開店している。ドミナント戦略(同一商圏内で市場占有率を高めて独占状態を狙う手法)は意識したという。1号店で収容しきれない顧客を受け入れるという役割はあるが、狙いはそれだけではない。

「1号店は学芸大学に特化した店として作りましたが、外からたくさんのお客さんが来てくださるようになりました。それで3号店はもっと学芸大学っぽい店にしようと考えました。ここは飲み歩きをされる人が多いため、半立ち飲み(11席+立ち飲みスペース)にして、一人でも来やすい店としたわけです」。

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2号店目を出した一番の理由は「人を伸ばすため」(画像=Foodist Media)

通常と違うアプローチ、社員に次のステージを与えるための2号店、3号店

こうした店舗によって微妙にコンセプトを変えて、多様な顧客の獲得に努めた結果、いずれも繁盛店となった。こうした新規店舗の出店タイミングは経営者にとって難しい判断を要求されるところである。ところが堤社長の場合、通常のパターンとは異なるアプローチを採用してきた。

「店を出したのは様々な要因がありますが、一番は利益を伸ばそうとしてではなく、人を伸ばすためです。スタッフが育ち、さらに伸ばすためには次のステージを与える必要があります」。あくまでも人ありき。質の高い「空間コーディネート」をするためには、店員の商品知識や、店内でのパフォーマンスの向上など社員の成長が求められるため、その成長を促す場としての多店舗展開ととらえる。

『リ・カーリカ』は「社員の成長」-「空間コーディネートの充実」-「多店舗展開」-「さらなる社員の成長」のサイクルを回し続けることで、企業としても成長していけるという考えがベースになっている。企業の成長は開店時の自己資金の比率を聞くと明らか。「スタートの自己資金は3分の1程度でした。2号店の時は2分の1程度。3号店の時は借り入れは必要なかったのですが、経営上の判断で自己資金を50%としました。この先、もう1人シェフにしないといけない人間がいるので4号店を作りますが、全額自己資金での開店を考えています」。

このような人ありきの多店舗展開だけに、5店舗目以降は流動的だという。無意味な拡大路線をとらず、既存店舗の充実、社員の待遇の改善などをして会社を充実させていくことを念頭に置いている。

5年で1周期、リニューアルしてさらに楽しめる「リ・カーリカ」に

それを裏付けるように、開店5年目を迎える1号店『リ・カーリカ』は2月にリニューアル工事を行う。

「5年で1つの周期だと思っています。結構、お金はかかりますが、お客さんに『もっと面白くなったね』と思ってもらえるように、どんどん店を良くしてスタッフも育てていかないといけません」。

人ありきの「空間コーディネート」の思想は、会社経営においても徹底されている。節操なき拡大路線とは明確に一線を引く堤 亮輔社長の下、学芸大学近辺で『リ・カーリカ』と関連店舗はその存在感をこれからも大きくしていくことだろう。

堤 亮輔(つつみ・りょうすけ)
1978年、熊本県生まれ。(株)タバッキ代表取締役。大学を2年で中退し、イタリアで料理の勉強をする。帰国してから辻調理専門学校へ。自由が丘のフレンチ、松濤のイタリアンフレンチ、恵比寿のイタリアンでシェフを務め、西麻布の和食店、駒沢のイタリアンと都内の激戦地区で腕を磨いた。2013年2月に『オステリアバル リ・カーリカ』を開店した。

『オステリアバル リ・カーリカ』
住所/東京都目黒区鷹番2-16-14 B1F
最寄駅/東急東横線学芸大学駅徒歩約2分
電話番号/03-6303-3297
営業時間/18:00~25:00(不定休)

『カンティーナ カーリカ・リ』
住所/東京都目黒区中根1-5-2
最寄駅/東急東横線都立大学駅徒歩約1分
電話番号/03-5726-9629
営業時間/平日18:00~25:00、 土・日・祝 17:00~25:00(ともにL.O.24:00、不定休 )

『あつあつリ・カーリカ』
住所/東京都目黒区鷹番2-20-4
最寄駅/東急東横線学芸大学駅徒歩約2分
電話番号/080-4858-2233
営業時間/18:00-26:00(L.O.25:00、 定休日なし)

(提供:Foodist Media

(執筆者:松田 隆)