聞いたことはあるけどよくわからない、と思われがちな「扶養」のこと。実は「年金」「健康保険」「税金」、それぞれで扶養に入れる範囲が違います。ここでは扶養家族になるうえでぜひ知っておきたい「年金」について解説します。

年金の扶養のしくみ

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(画像=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

そもそも扶養とは、「家計をメインで支える人に養われている状態」とみなされることです。扶養のしくみは、扶養する側(メインの収入源となる方)が、会社員や公務員などの「厚生年金」か自営業や農業漁業などの「国民年金」、どちらのタイプかによって違います。

「国民年金」に扶養はない

配偶者が国民年金のみの加入者の場合、そもそも制度的に「扶養」という概念がありません。そのため、収入にかかわらず夫婦それぞれが自分で自分の年金保険料を負担し、将来に備えることになります。

「厚生年金」の扶養は?

続いて会社員などが対象となる「厚生年金」の扶養のしくみを見てみましょう。

厚生年金の扶養に入ると、国民年金の「第3号被保険者」となり、自身で年金保険料を負担しなくてよくなります。扶養する側の負担も増えません。支払いの負担は一切ないのですが、この「第3号被保険者」の間は保険料を支払ったとみなされ、将来の年金額に反映されます。

扶養に入るための条件

厚生年金の扶養に入ることができるのは、厚生年金に加入している人の20歳以上60歳未満の配偶者(事実婚も含む)だけです。「健康保険」や「税金」なら子どもや親なども扶養に入れられますが、「年金」では対象外となりますので間違えないようにしましょう。

さらに、年収の要件もあります。基本的には年収の見込みが130万円未満で、主に配偶者の収入で生計を維持していることが必要です。「基本的に」としたのは例外があるからです。60歳以上や障害者にあてはまる方は180万円未満が基準になりますし、年収130万円未満でも、下記の5つの条件すべてにあてはまる場合は、自分で厚生年金に加入しているため扶養には入れません。

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が1年以上見込まれる
・賃金の月額が8.8万円以上
・学生ではない
・被保険者数が常時501人以上の企業に勤めている(500人以下でも加入となる例外規定もあり)

これは2016年にできた通称「106万円の壁」というものです。少しややこしいかも知れませんが、自分の今後の収入を予測、さらに勤務先の状況を確認して、扶養に入れる状態かどうか考えてみましょう。

扶養に必要な手続き

扶養に入るには、扶養する側(配偶者)の勤務先を通して手続きをします。会社の人事や総務など担当部署に「配偶者を扶養に入れたい」と伝えれば、必要な書類を案内してもらえるでしょう。書類に沿って記入や資料の添付などを済ませ、提出すればOKです。あとは会社が役所とやり取りして手続きしてくれます。

また、扶養は「入るとき」だけでなく、「抜けるとき」も手続きが必要です。扶養されている側が、自分で新しく厚生年金に加入することになった場合は、「扶養されている側の勤務先」が手続きしてくれます。

扶養されている側が厚生年金に入らず、収入が一定額を超えたことで対象外になる場合は、扶養に入るとき同様「扶養している側の勤務先」に申告して、さらに自分で「市町村役場の年金窓口」にも申告します。

扶養から外れる手続きをうっかり忘れてしまっていると、保険料を払っていない期間が「未納期間」とみなされ、将来の年金額が減ってしまうということになりかねません。そのほか、社会保険や税金、会社の扶養手当など、いろいろなところに影響してくる可能性もあるので、できるだけ早めに確実に済ませておくようにしましょう。

扶養家族が将来もらえる年金はいくら?

厚生年金の扶養に入った場合も、国民年金を自分で払った場合と同じです。保険料を納めた期間(納めたとみなされる期間等も含む)が合計10年以上あれば、原則65歳から「老齢基礎年金」がもらえます。

もらえる金額は、20歳から60歳までの40年間すべて保険料を支払ったとすると、年間78万100円です(2019年4月分以降)。保険料の未納、免除、猶予などを受けた期間があればあるほど、この金額から減額されていきます。

老後の年金だけでなく、病気やケガで一定の障害状態になってしまったときには「障害基礎年金」も受給することができます。

扶養に入った方がお得?

「年金を払っていなくても、いざという時にはもらえるなんてお得!」、ということで扶養内の働き方を希望される方も多くいます。ただ、注意したいのは、第3号被保険者が将来もらえるのは「国民年金だけ」ということです。

自分で厚生年金に加入していれば「厚生年金+国民年金」の2階建てでもらえますので、扶養に入っていると保険料を支払っていない分、将来もらえる年金額は少なくなります。また、「年金の扶養」の制度は、年金財政や働く女性との兼ね合いなどの関係で、今後縮小、もしくは廃止になる可能性がゼロではありません。そういったことをきちんと理解したうえで、働き方を選ぶようにしましょう。

扶養に入るかどうかは将来も見据えて考えること

扶養の制度は、各種条件や手続き方法、メリット・デメリットなど把握しておくべき点が多くあります。少々ややこしいのですが、きちんと理解し、よく考えて、うまく活用できれば、理想の暮らしを実現するための助けになってくれます。扶養に入るのか外れるのか、一度ゆっくり夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか?

文・馬場愛梨(「貧困女子」脱出アドバイザー/ばばえりFP事務所 代表)/fuelle

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