05
ドリンクは、ビールだけでも7~8種、日本酒は約20種類、ワインも提供している(画像=Foodist Media)

客も楽しめて効率の良い、一石二鳥のセルフスタイル

店の特徴はジビエや鰻メニューだけではない。店内の客席スペースには、2台のディスペンサーと大皿に盛られたおばんざいが並んでいる。そう、この店は客が自分で飲みたいお酒を作り、食べたいおばんざいを盛るというセルフスタイルを導入しているのだ。

「価格を高くしないようにするには、何か削らなきゃと。どうするかを考えた時に、お客さんにやれることをやってもらえばいいんじゃないかと思ったんです。その代わり、他店よりは安く出せますよと。工夫ひとつで安く飲めるんですよ。おばんざいも、僕たちが盛るよりも自分で取った方が楽しいですよね。その間に僕らは焼き物を焼いているので、料理も待たずに提供できるんです。みんな得しますよね。お客さん優先で考えるというのが自分の中であったので、浸透させるのは大変でしたが、このスタイルでやりました」

このセルフスタイルによって、従業員も2~3人でまわすことができているそう。効率も良くて全員がハッピーになるという、まさに一石二鳥の運営スタイルを確立しているのだ。

06
(画像=おばんざいは、好きなだけ盛って一律料金という嬉しいサービス内容(画像=Foodist Media))

コミュニケーションを通じて、客と店がお互いを知る

屋台を引っ張っていた祖父の姿を見て、商売や居酒屋に憧れていたという杉山氏。結婚を機に、「やりたいことをやろう」と飲食業界へ飛び込んだ。「飲み屋の空気感が好き」という杉山氏の作る店には、小綺麗さがありながらもどことなく懐かしさが漂う。

そんな懐かしさと美味しい料理に誘われて、開店時間になるとぽつりぽつりと客が入ってくる。一人客も気兼ねなく入店することができるのは、雰囲気以外にも理由がある。

「お客さんの名前は絶対に覚えるようにしています。お客さんとの距離は近づけないといけないですし、話せばお店の魅力も伝わります。お客さんが店やスタッフに興味を持ってくれるようになれば、スタッフの名前も知りたがります。そうしたらお互い、そこで名前を交換して覚えるんです」

ジビエと鰻と、そして人。それらの歯車がうまくかみ合って作り出される唯一無二のお店、それが『新宿寅箱』だ。歯車を動かす原動力になっているのも、もちろん人。最後に、杉山氏に飲食店経営で大事にしていることについて伺うと、「やっぱり、人に感謝することでしょうか」との答え。料理も心構えも、大切な部分を表現するには余計なものはいらず、シンプルな心持ちでいることが一番なのかもしれない。

07
(画像=外観はふらっと訪れたくなる佇まい(画像=Foodist Media))

『串打ちジビエと鰻串 新宿寅箱』
住所/東京都新宿区新宿5-10-6 宮崎ビル 1F
電話番号/03-5357-7727
営業時間/月~金11:30~14:00(無くなり次第終了)/17:00~0:00、土日祝17:00~0:00
定休日/無休
席数/24

(提供:Foodist Media

(執筆者:河田早織)