新宿五丁目の裏通りに、ジビエと鰻を串で手軽に食べられる珍しい店がある。池袋西口の『ジビエとくずし割烹 和ガリコ寅』を運営するIBUQLO(代表取締役・杉山亮氏)の2号店として2017年にオープンした、『串打ちジビエと鰻串 新宿寅箱』だ。
代表の杉山氏は、『とろわる』(江古田)、『雛家』(中野)で約8年、そして『アガリコ 池袋』、『アガリコ 中野』の立ち上げを経て、BigBelly(代表取締役・大林芳彰氏)の社員独立第一号店として「和ガリコ 寅」を2014年にオープンさせた経歴の持ち主。
今回は、ジビエ料理を扱う珍しい業態で月商500万円の売上を誇る『新宿寅箱』の魅力、そして繁盛の裏にある店の工夫について話をうかがった。
新宿五丁目に店を構えた理由
寅箱があるのは、新宿5丁目。新宿駅からは徒歩約10分と、中心エリアからは少し距離のある場所にある。
「新宿駅や新宿三丁目エリアに近いと家賃が高くなってしまうんですよ。家賃が高くなると商品一つひとつの値段も上げなければならない。そうすると他店と一緒になってしまって、つまらないメニューになってしまうと思って。それに、池袋の『和ガリコ』もだいぶ駅から離れた所にあるので、同じような立地かなと思ったんですよね」
そんな不利な立地にありながら人気店である所以の裏には、ジビエ料理に対する絶対の自信が見え隠れする。
「鰻とジビエの商品価値は絶対にあると思ったので、それ目的に来てくれるお客さんを作れば大丈夫だろうなと」
“通”から初心者まで、さまざまなニーズがあるジビエ料理
店に訪れる客層は、20代後半から50代、上は60代までと幅広い。一人あたりの単価は、4,000円台後半から5,000円台。ジビエが好きという客だけではなく、「一度、食べてみたかった」という客も多いという。また、単にメニューの珍しさだけではなく、店側のちょっとしたアイデアや工夫も功を奏しているようだ。
「鰻だけ食べにくる方ももちろんいますが、鰻だけ食べるというと金額的にすごい金額になるので、うちでは少しずつ出せるようにしています。居酒屋メニューの一つとして鰻があればいいかなという感覚ですね」
素材の良さが料理の味を決める
そんなアイデアから生まれた串焼きメニューは、鹿、猪、鶏をセットで味わえるものや、天然の鰻と養殖の鰻を食べ比べできるメニュー、その他にも鰻の頭ごとそのまま一本焼きにする豪快なメニューまで多種多様。ジビエのようなクセのある食材を親しみやすい料理に仕上げていくために、やはり細かい工夫があるのかと問うと、意外にもシンプルな答えが返ってきた。
「素材のいい所を消さないようにしたいので、そのまま焼くだけで出すというのが多いです」
料理の味を決めるのは、良質な素材。そんな素材を手に入れるために、もちろん仕入れにはこだわりがある。ジビエに関しては、全国のハンターから仕入れられる独自ルートがあり、鰻も名古屋方面の関係者から仕入れているという。
「ジビエは生け捕りにしたものか、ヘッドショットで仕留めたもの、そして血抜きがしっかりできているものを使っています。じゃないと臭みがでてしまうので」