エレベーターや空調などのビル設備を導入する場合、それらの設備を「購入する」「リースする」の2つの方法が検討できるでしょう。それぞれの方法で資金負担や発生する税金に違いが生じます。今回は、特にリースを利用した場合に焦点をあてて、法人税や消費税にどのような影響があるのかを確認していきます。

購入とリースの違いとは

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(写真=PhuShutter/Shutterstock.com)

ビルの資産価値を維持向上させるためには、さまざまな設備投資が必要です。そのため、省エネや環境への配慮、防災や防犯、集客などの目的に応じ、あらゆる設備について「購入か」「リースか」という選択肢が生じます。購入とリースの最も大きな違いは資金支払いのタイミングです。つまり、購入では設備導入時にまとまった資金が必要となるのに対して、リースでは契約期間を通じてリース料を支払うことになります。

そのため、資金繰りの面ではリースのほうが優れているといえるでしょう。また、リースを活用することで事務処理やメンテナンスの面でも手間が省ける場合があります。

資産になるリースと経費になるリースがある

リースを活用した場合、税務上はどのような影響があるでしょうか。リース取引は、大きく分けると「ファイナンス・リース取引」「オペレーティング・リース取引」の2つに分類されます。そのうえで、法人税の取り扱いでは、ファイナンス・リース取引については「売買処理」、オペレーティング・リース取引については「賃貸借処理」が適用されるのが一般的です。

ファイナンス・リース取引というのは、一般的に解約することが困難で対象資産を保有しているのと同様の経済効果があるリース取引を指します。そのため、法人税法上も資産を購入した場合と同じような「売買処理」が適用されるというわけです。これに対して、オペレーティング・リース取引というのは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引を指します。

つまり、単に資産を借りているという性格が強い取引です。そのため、法人税法上も資産を賃借している点を重視した「賃貸借処理」が適用されることになります。具体的な処理のイメージとしては、「売買処理」の場合、リース対象資産を会社の他の固定資産と同様に扱い、耐用年数やリース期間に応じて減価償却することになります。

一方、「賃貸借処理」の場合は「支払ったリース料を毎年の費用として計上する」ことが大きな違いです。

リースの消費税はどのように処理される?

消費税の処理方法も、上記のファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けて考えられるでしょう。なお、この場合の消費税の処理というのは、事業者が納税する消費税等を計算する際に、「リース物件にかかる消費税をどのタイミングで控除できるのか」という意味合いです。まず、ファイナンス・リース取引の場合、法人税と同様に売買取引として取り扱われるため、リース物件の取得時においてリース料総額にかかる消費税を「全額控除」することができます。

ただし、会計上で賃貸借処理をしている場合には、リース料の支払日において各回分のリース料にかかる消費税を「分割控除」することも可能です。これに対して、オペレーティング・リース取引の場合、リース料を支払うべき日において各リース料にかかる消費税を控除することとなります。つまり、上述したファイナンス・リース取引における賃貸借処理の場合と同じように「分割控除」します。

税務上の影響もリース活用の検討事項に

以上のように、法人税では「売買処理」「賃貸借処理」のどちらであっても、毎年少しずつ費用が計上される点で共通しています。特に耐用年数とリース期間が一致する場合には、税務上の損金や経費に計上される額が同じになることも少なくありません。これに対して、消費税では、売買処理であれば当初に全額を控除できますが、賃貸借処理であれば各期に分割して控除することになります。

ビル設備の新規導入や更新投資においては、購入とリースそれぞれのメリットとデメリットがありますが、今回紹介したような税務上の影響も検討事項に加えてみると良いのではないでしょうか。(提供:ビルオーナーズアイ