不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

Tania Kitura / Shutterstock
(画像=Tania Kitura / Shutterstock)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

“又貸し”している借主と賃貸借契約を解除したい

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

広島県在住 大室さん(70歳、女性)からのご相談

近所のマンションを1部屋所有しています。その部屋は男性に7万円で貸していますが、先日、マンションの前を通ったときに違う男性が1人で部屋に入って行くのを見ました。そのときは、借主の男性のご親族か友人なのかなと思い、さほど気にはならなかったのですが、別の日にもその男性が1人で部屋に入って行くのを見ました。その話を娘にしたところ、娘から、インターネットの掲示板に、借主の男性らしき人が私の所有する部屋の借り手を募集する書き込みをしていたと聞きました。そこで私は、すぐにマンションに行き、部屋を訪ねると、あの男性が出てきて、借主の男性から8万円で部屋を借りたと言っています。私の所有物で、勝手に金儲けをしている借主の男性が許せません。どうにかできないでしょうか。

よくあるトラブル(11)「 転貸借と解除」

これで解決!

借主が借りている物件をさらに誰かに貸すことを転貸借といいます。貸主からすると、借主を信用して貸すので、誰が借りている物を使うかは重要です。部屋を貸す契約(建物賃貸借契約)も、部屋の使い方や禁止事項などを借主との間で契約書や重要事項説明書をもって確認するなど、貸主と借主との信頼関係を前提として成り立っています。そのため、借主が部屋を第三者に勝手に貸すことは、民法でもほとんどの建物賃貸借契約書でも禁止されていて、転貸借をする場合は貸主の承諾が必要になります。

それにもかかわらず、貸主の承諾をとらずに無断で第三者に部屋を又貸しした場合、借主は民法に反し、契約にも違反することになります。そして、その違反は貸主と借主の信頼関係を根本から破壊する違反になることがほとんどです。そのため、無断で転貸借が行われた場合、例外的に又貸しした第三者が借主と同視できたり、転貸借をすることにやむを得ない理由があったりするときを除いて、貸主は原則としてその建物賃貸借契約を解除することができます。つまり、借りたものを勝手に第三者に貸した借主に出て行ってもらうことができるということです。また、又貸しを受けた第三者にも合わせて出て行ってもらうこともできます。ただ、もともとの借主との契約は解除するものの、貸主が又貸しを受けた第三者にそのまま物件を使ってほしいと思えばそれも可能です。

ご相談の件については、借主の男性との賃貸借契約を解除して、又貸しを受けた男性にも出て行ってもうらことも可能ですし、借主との契約は解約するものの、貸主とその男性との間で新たに契約を結んで、そのまま使い続けてもらうことも可能です。そのときの賃料は8万円になるでしょうから、結果的には賃料収入が増えることになる場合もあります。是非とも、法律や契約をよく理解した上で、合理的な選択をすることをお勧めします。