等級は自動車保険の保険料を大きく左右するファクターだ。自動車保険に加入する際は、この等級制度とはどういうものなのか、等級が変わると保険料にどのような影響があるのか、何が原因で等級が上がったり下がったりするのか、きちんと理解しておく必要がある。

自動車保険の保険料を大きく左右する「ノンフリート等級制度」とは

自動車保険,等級
(画像=BLACKWHITEPAILYN/Shutterstock.com)

自動車保険の保険料は車の型式や記名被保険者の年齢区分、補償内容など、様々な要素をもとに決定される。「等級」もその一つであり、「ノンフリート等級制度」と呼ばれる制度によって運用される。1等級~20等級の20段階に区分され、等級がアップするにつれて保険料の割引率が高くなる仕組みだ。1等級〜3等級では逆に割増となることが多い。

例えば、損保ジャパン日本興亜が販売する『THEクルマの保険』を無事故の状態で契約した場合、1等級は64%割増、2等級は28%割増、3等級は12%割増と通常より高くなってしまう。以降、4等級は2%割引、5等級は13%割引、6等級は19%割引、7等級は30%割引……というように、等級の進行に比例して割引率が高くなる。ちなみに20等級になるとその割引率は63%となり、7等級の場合の2倍以上の割引率が適用される。

自動車保険は6等級からスタートして1年ごとに等級が更新される

自動車保険に新規加入する場合、基本的には「6等級」からスタートすることになる。等級は通常1年間となる契約期間ごとに更新される。保険を使う事故を起こさなければ1年に1等級ずつ進行するため、翌年は7等級で、その翌年は8等級で契約の更新手続きを行う。つまり、6等級から自動車保険に新規加入して20等級になるには、最低でも14年かかるということになるのだ。

複数所有新規割引(セカンドカー割引)を活用すれば7等級から新規加入できることも

上述のように自動車保険に新規加入する場合は6等級からスタートするのが基本であるが、商品によっては「複数所有新規割引(セカンドカー割引)」という制度を使って7等級から加入できるケースがある。一般的な適用条件は以下の通りだ。

・契約者本人、その配偶者、同居の親族のいずれかが自動車保険に加入している
・上記の自動車保険契約の等級が、11等級以上である

6等級と7等級では適用される割引率が1割近く変わるため、自動車保険に加入する際は同居の親族に11等級以上の自動車保険契約を保有している者がいないか必ず確認するようにしたい。

自動車保険の等級は事故を起こすと下がる=保険料が上がる

自動車保険の等級は1年に1等級ずつ進行するが、これはあくまでも保険を使わなかった場合の話である。事故などにより保険の使用があった場合、翌年の等級は1~3等級ダウンしてしまうのだ。

また等級には「事故有等級」と「無事故等級」の2種類があり、同じ等級でも適用される割引率が異なる。事故により保険を使用して等級が下がった場合、一定の期間は「事故有等級」の割引率が適用されることになる。

例えば、20等級の人が契約期間中に追突事故を起こし保険を使用した場合、翌年は3段階等級を下げた17等級での更新となる。上で例に挙げた損保ジャパン日本興亜の『THEクルマの保険』では、20等級の割引率は63%、17等級の割引率は無事故等級で53%、事故有等級で38%となっている。事故を起こしたことで、保険料に適用される割引率が25%も低くなってしまうのだ。

自動車保険の等級を下げないために保険を使わないという選択肢も

自動車保険の等級が下がるかどうかは、「事故を起こしたか」ではなく「保険を使ったか」により判断される。極端な話、1年に複数回事故を起こしたとしても、保険を使うことがなければ等級の進行には何の影響もないのだ。

そのため、修理代がわずかな金額で済むような軽微な事故の場合は、等級が下がった場合の保険料の上り幅と修理代とを比較し、保険を使用するかどうか判断するのも一つの選択肢であろう。

自動車保険の等級は10年間にわたり保存・引継ぎが可能

自動車保険の等級は、被保険者本人はもちろん、その配偶者、同居の親族の範囲内であれば、そのまま引き継げる。これは他社の自動車保険に乗り換える場合も同様であるから、保険の見直しをする際は現在の等級が記載された証券を用意しておくとスムーズに手続きを進められるだろう。

中断証明書により等級を10年間保存

自動車保険を解約する場合、中断証明書を発行してもらうことにより解約時の等級を10年間保存できる。保存した等級の引継ぎも可能である。

車を手放すなど何らかの事情により自動車保険を解約する場合でも等級を保存しておくと、同居の子供が車を購入して自動車保険に加入する際に、その等級を継続することができる。例えば20等級の自動車保険契約の中断証明を活用する場合、本来であれば6等級から加入しなければならないところ、20等級での加入が可能となるのだ。

多くの場合、自動車保険契約の中断証明書は解約日(中断日)の翌日から起算して13ヵ月以内であれば請求可能である。解約時に請求し忘れた場合は早めに手続きするようにしたい。

ノンフリート等級制度は、保険料に大きく影響する大切な制度である。自動車保険に加入する際はこの制度についてよく理解し、様々な割引制度を上手に活用することが大切だ。

文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャルプランナー)/MONEY TIMES

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