働かなくてもお金がお金を生む不労所得生活は、多忙なビジネスマンのあこがれではないだろう。投資信託の分配金は保有しているだけで得られる収入だが、分配金だけで生活するには投資額はどのくらい必要なのだろうか。投資元本の目安と注意点について解説する。
投資信託で得られる2つの利益
投資信託で得られる利益には、値上がりによるキャピタルゲインと、分配金によるインカムゲインがある。キャピタルゲインは投資信託の基準価額の上下によって発生するため、マイナスになる可能性もある。インカムゲインなら原則として安定的に受け取ることが可能だ。
インカムゲインの代表例としては預貯金の利息が挙げられるが、銀行の利息は100万円を1年預けて10円程度だ。投資信託の分配金であればもう少し高い利回りが期待できる。
投資信託の分配金だけで生活するために必要な投資額
たとえば、生活資金として毎月20万円を分配金から得たい場合、投資元本はいくら必要なのだろうか。必要な投資額は分配金利回りによって変わってくる。計算式は以下の通り。
・必要な投資額=毎月の生活費×12ヵ月÷年利回り(%)
年率5%の分配金利回りが期待できる投資信託であれば、毎月20万円受け取るために必要な投資額は4,800万円である。より高い利回りの投資信託であれば必要額はもっと少なくて済む。
投資信託の分配金利回りの相場
実際の投資信託では分配金利回りの相場はどの水準になっているのだろうか。日経新聞がまとめた投資信託ランキングにて、投資信託のカテゴリー別分配金利回りのランキング上位20の平均を算出したところ、以下のような結果になった。
<カテゴリー別上位20ファンドの平均分配利回り(2019年6月末時点)>
・国内株式……2.45%
・先進国株式……5.91%
・新興国株式……1.92%
・グローバル株式……1.83%
・先進国債券……0.97%
・新興国債券……0.61%
・バランス……0.95%
・国内REIT……1.56%
・海外REIT…….76%
※「元本払戻金(特別分配金)」のない投資信託に限る
分配金のパフォーマンスはカテゴリーによって大きな差があることが分かる。先進国株式型の投資信託であれば、分配金だけで毎月20万円得るには4,060万円の元本があればよい。これならクリアできる人もいるだろう。ただし株式中心の投資信託は元本割れするリスクが高い。
比較的リスクの低いバランス型は利回りが低いため、毎月20万円の分配金を得るには2億5,260万円の資金が必要となる。債券中心の投資信託だとさらに投資額が必要だ。ここまでくると分配金だけで生活することはあまり現実味を帯びなくなる。一定以上の分配金を得るにはある程度の利回りが必要というわけだ。
投資信託の分配金で生活するときの2つの注意点
十分な元本と利回りがあれば分配金による不労所得生活も夢ではない。しかし分配をおこなう投資信託には避けがたいデメリットがある。特に以下の2点には注意しておきたい。
投資信託の分配金には元本を取り崩すものがある
投資信託の分配金は通常運用益から支払われるもので、これを「普通分配金」と呼ぶ。しかし、思うような運用益が得られず、元本を取り崩して分配金支払いに充てる場合がある。これが「元本払戻金(特別分配金)」だ。元本払戻金を多く支払う投資信託は元本が目減りするため、数字上は分配金利回りが高く見える。しかし基準価額が下がることにより実質マイナスということもあるのだ。
運用実績の良さから利回りが高いのか、元本を取り崩しているから高いのかを見分けるには、「分配金健全度」という指標を参考にするといい。分配金健全度は支払われた分配金総額のうち、普通分配金が占める比率を示す。数値が高いほど運用による利益から分配金が出ていることになる。元本払戻金のない投資信託を投資対象とするなら分配金健全度が100%のファンドから選ぶといいだろう。
投資信託の分配金は毎月支払われる保証はない
投資信託の分配金は運用の成果を投資家に還元する仕組みであり、成績次第では減額されることもあり得る。投資時点では1口当たりの分配金が明記されているが、継続的な支払いが保証されるものではない。
今後も分配金が支払われる可能性がどのくらいあるかは、過去の分配実績に加え、「分配余力」という指標を参考にしたい。分配余力は現在の分配金を今後何ヵ月間支払う余力があるかを示すものだ。24ヵ月なら2年間は支払う余力があることを意味する。この月数が少ないファンドには注意が必要である。過去の分配実績に極端な増減がなく、分配余力の月数も十分にあれば投資対象に入れてもいいと考えられる。
投資信託の分配金のみの生活よりプラスで安定収入があるほうが現実的
分配金だけで毎月20万円の生活資金を得るための原資は少なくとも5,000万円、安全性の高い投資信託を好むなら1億円必要であることが分かる。扶養すべき家族がいるなら生活費が20万円では心もとない。投資信託がリスク商品であることを考えると、他にある程度、安定収入を確保した上で運用するほうが安心感があるだろう。
文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
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