9月4日、モザンビークの北部ナンブラ州農民連合の代表が来日、日本の援助のもとで進められている “熱帯サバンナ農業開発プログラム(プロサバンナ事業)” の見直しをJAICAに求めた。
日本はODAを活用し、日本の耕地面積の3倍におよぶ広大な土地の農場化を支援してきた。開発の狙いは「現金収入を増やし、外貨を稼ぐ」こと。しかし、こうした輸出型の大規模農業は、結果的に小規模農家の生活基盤である土地を奪ってゆく。彼らの主張は明快で、「モザンビークの土地はモザンビーク人の手で耕されるべき」ということに尽きる。何のための開発であるのか、誰のための支援であるのか、もう一度立ち止まって考える必要があろう。
8月末、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が横浜で開催された。日本は中国を念頭に “量から質” を重視した支援方針を表明、“債務のわな” に象徴される中国式開発援助との差別化を強調する。とは言え、多くのアフリカ諸国にとって “量” の重要性は無視できない。政府はあえて今後3年間の支援金額を提示しない一方、実績については「この3年間で200億ドルに達した」と誇示した。背景には支援が前回の会議で約束した300億ドルに及ばないことへ焦りと、その倍の支援額を表明している中国への対抗意識が見え隠れする。
しかし、“質” を問うことを第1義とし、“量” とは異なる土俵で勝負するのであれば、そこに徹すれば良いだけだ。集計方法を変えてまで “200億ドル” の実績を作る必要はない。
TICAD7に先駆けて開催された仏G7サミットでは「G7とアフリカのパートナーシップのためのビアリッツ宣言」が採択された。
宣言は冒頭で “サヘル地域” に言及、「日本の “サヘル同盟” への参加を歓迎する」としたうえで、「TICAD7に期待する」との文言が盛り込まれた。
マリ、ブルキナファソ、モーリタリア、ニジェール、チャド、所謂 “サヘルのG5” への日本の本格的な関与は2013年のアルジェリア人質事件の悲劇が契機となった。絶対貧困の解消、食糧危機の克服、治安の回復、安定した民主国家の確立に向けて、日本への期待は大きい。
「新興国の成長を取り込む」式の支援を越えた、“自立” のための基盤づくりこそアフリカに対する最大にして最善の投資となる。国の役割はそこにある。
今週の“ひらめき”視点 9.8 – 9.12
代表取締役社長 水越 孝