シンカー:全般として、下落がエネルギーや通信などのテクニカルなものが多く、上昇が需要超過とコスト増の基調の動きのものが多くなってきている。消費者物価指数の財(除く生鮮食品)を企業物価指数で割り、価格転嫁の動きをみる指数をつくる。消費者の値上げへの抵抗感は強く、指数の前年同月比は2018年まではマイナス(消費者物価が企業物価に対してアンダーパフォーム)であった。一方、良好な雇用所得環境を背景に、消費者は商品の質と利便性を値上げを受け入れても求め始めたとみられ、指数の前年同月比は2019年にプラス(消費者物価が企業物価に対してアウトパフォーム)に転じ、8月には同+1.7%まで上昇している。テクニカルな要因で物価上昇圧力は見えにくくなっているが、徐々に強さを増しているのは事実だろう。2019年の物価上昇率がテクニカルな理由で弱ければ弱いほど、2020年は逆に強くなり、価格弾力性を考慮した企業の価格戦略も広がることもあり、1%を上回る水準に上昇率が加速する可能性は十分にあると考える。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

9月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.3%と、8月の同+0.5%から上昇幅が縮小した。

4月の同+0.9%をピークから伸び率は縮小している。

エネルギーの上昇幅が、昨年の上昇の反動と今年の下落が合わさり、4月の同+4.6%から、8月には同?0.3%とマイナスに転じ、9月には同?1.9%まで下落幅が拡大したとみられるのが主要因だ。

一方、9月のコアコア(除く生鮮食品・エネルギー)は同+0.5%と、8月の同+0.6%から上昇幅が縮小した。

4月の同+0.6%からほとんど変化はない。

人手不足による賃金上昇を含むコスト増と持続的に拡大する内需に対応するため、サービス・教育産業では値上げが浸透してきているようだ。

更に、コストが上昇している加工食品の値上げの動きも強くなってきている。

一方、10月の消費税率引き上げ前のセールなどが下落圧力になったとみられる。

全般として、下落がエネルギーや通信などのテクニカルなものが多く、上昇が需要超過とコスト増の基調の動きのものが多くなってきている。

消費者物価指数の財(除く生鮮食品)を企業物価指数で割り、価格転嫁の動きをみる指数をつくる。

消費者の値上げへの抵抗感は強く、指数の前年同月比は2018年まではマイナス(消費者物価が企業物価に対してアンダーパフォーム)であった。

一方、良好な雇用所得環境を背景に、消費者は商品の質と利便性を値上げを受け入れても求め始めたとみられ、指数の前年同月比は2019年にプラス(消費者物価が企業物価に対してアウトパフォーム)に転じ、9月には同+1.5%まで上昇している。

日銀の製造業の産出物価指数を投入物価指数で割った指数でみても、同様の結果が得られる。

政井日銀審議員は9月25日の講演で、「物価安定の目標2%の実現にはなお距離はあるものの、それに向けたモメンタムが再び強まる兆しがみられる。企業や家計の価格上昇に対する耐性の向上や、予想物価上昇率の一層の上昇にも繋がり得る重要な局面に近付きつつある。」と指摘している。

テクニカルな要因で物価上昇圧力は見えにくくなっているが、徐々に強さを増しているのは事実だろう。

消費税率引き上げ分を値下げでオフセットする動きも、テクニカルなものの一つだ。

2019年の物価上昇率がテクニカルな理由で弱ければ弱いほど、2020年は逆に強くなり、価格弾力性を考慮した企業の価格戦略も広がることもあり、1%を上回る水準に上昇率が加速する可能性は十分にあると考える。

図)財のコストの価格転嫁

財のコストの価格転嫁
(画像=総務省、日銀、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司