「貯蓄から資産形成へ」のスローガンの下、金融リテラシーの概念が広がり、教育の一環として、子どもへのマネー教育の重要性が増している。夏休みや冬休みを利用して、金融機関や証券取引所が金融や経済について学びの場を提供するイベントも恒例となってきた。

金融リテラシーが徐々に浸透するなか、さらに一歩踏み込んだ「金融ケイパビリティ」という考え方が、欧米をはじめとする海外では広まっている。まだ国内では馴染みの薄い金融ケイパビリティとは一体どのようなものなのか。

金融リテラシーは「知識」に、金融ケイパビリティは「行動」に焦点を

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(写真=PIXTA)

金融リテラシーに関しては、APEC (アジア太平洋経済協力) 財務大臣会合において、「21世紀に生きる全ての者にとって肝要なスキルであり、経済・金融の安定、包括的な発展、個人や家族の福祉を効果的に下支えするあらゆるエコノミーの重要な構成要素である」とされた。つまり、金融に関する「知識」を獲得することの重要性に焦点が当てられた格好となった。

一方の金融ケイパビリティは、金融に関連する「行動」に焦点が当てられているのが特徴だ。OECD (経済協力開発機構) は、金融ケイパビリティについて、日々の資産管理、ファイナンシャルプランニング、金融商品の適切な選択、金融知識の理解の4つを構成要素として挙げている。つまり、金融リテラシーとして獲得した金融に関する知識を持って、さらに一歩進み、金融にまつわる実践を踏むことが金融ケイパビリティに繋がるとしている。

金融ケイパビリティとは ? 社会的責任が求められる

実際に、金融ケイパビリティの実践が進む英国と米国の例を見ると、そのイメージと大切なポイントが掴めるだろう。英国における金融ケイパビリティは、金融責任を担う市民を育成することに重きが置かれる。つまり、金融ケイパビリティは金融リテラシー同様、すべての人にとって重要なスキルであり、金融知識と理解、金融スキルと能力、金融責任の3つのテーマを設定している。金融責任については、金融に関する意思決定が、個人の責任だけにとどまらず、家族やコミュニティなどにも影響を及ぼすことから、社会的責任を負うことを自覚させているのが特徴である。

また米国でも、知識とスキルとアクセスに基づいて金融資源を効果的に管理する能力を金融ケイパビリティとしてとらえている。なお、ここでいう「アクセス」とは金融商品や金融サービス、金融アドバイザーといった存在に接点を持つことをイメージしていただくとニュアンスが伝わるだろう。リーマンショックの震源地となった米国では、家計の管理が適切に行われておらず、経済危機では大きな打撃を受けた苦い経験を踏まえ、家計の健全性を強化するためにも、金融ケイパビリティの重要性が認識された経緯がある。イギリスでの考えと同様に、金融ケイパビリティを各個人が身につけて、家計が健全に管理されれば、コミュニティにもプラスの効果があり、さらには国家の金融的安定にもつながっていくと考えられ、金融ケイパビリティの概念を社会全体に広げている。

「子どもへのマネー教育」時には社会的責任も意識させることが大事

金融リテラシーの概念が浸透しつつある日本においては、獲得した金融知識を活用して、次のステップともいえる金融商品の適切な選択などの実践に移り、金融ケイパビリティを身につけられるかどうかのステージに突入する段階を迎えているともいえるだろう。

金融リテラシーでは、個人として金融に関する知識を身につけることが求められていたが、金融ケイパビリティでは、金融に関連する行動が自己責任だけにとどまらず、社会全体に対して責任を負うことを意識することが英国や米国の例をみても重要となることが分かる。

金融ケイパビリティを子供にマネー教育として実践する際は、この社会的責任を認識させることができるかどうかが、金融ケイパビリティを身につけられるかどうかを左右するポイントとなりそうだ。(提供:大和ネクスト銀行

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