不動産を活用した節税対策に対して、政府が規制を強化する動きを見せています。今回は、2020年度の税制改正によって規制される見通しの「賃貸アパートの消費税還付による節税対策」と、「海外不動産投資を活用した節税対策」について詳しく解説します。

2020年度税制改正で不動産投資の節税対策が封じられる?

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(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

日本の所得税は、所得が増えるほど税率も上がる仕組みです。所得税の最高税率は45%で、住民税約10%と合わせると約55%です。最高税率が適用されれば、所得の半分以上を税金として納めなければなりません。

富裕層は、不動産投資や資産管理法人の設立といった方法で、常に節税対策を講じています。2020年度の税制改正では、特に不動産投資に関係する節税対策の規制が強化されると言われています。

賃貸アパートの消費税還付による節税対策

これまでは、賃貸アパートを新築・購入した場合、節税対策を講じれば賃貸アパートの新築・購入にかかった消費税の還付を受けることができました。

これには、消費税の計算の仕組みが関係しています。消費税はあくまで消費者が負担する税金であり、事業者は消費税の計算をして、消費者に代わって国に納付します。

事業者は、商品を売ることで消費者から預かった消費税から、仕入によって外部業者に支払った消費税を控除し、その差額を国に納付します。

ただし居住用の不動産の賃料は、消費税の非課税取引とされています。そのため、賃貸アパートを新築・購入したとしても、支払った消費税の還付を受けることはできません。

ところが、金の売買など不動産賃貸業とは異なる事業を行うことで課税売上を計上すれば、これまでは消費税の還付を受けることができました。これが、いわゆる「賃貸アパートの消費税還付による節税対策」です。

このような手法を使った消費税の還付についてはこれまでも何度か問題視され、平成22年度と平成28年度に大きな改正が行われています。

「今回規制が強化されることになれば、消費税の還付による節税対策はほぼ封じられるだろう」と多くの専門家が予測しています。

海外不動産投資を活用した節税対策

海外不動産投資を活用する節税対策では、アメリカの中古不動産に投資する手法が主流でした。

不動産投資で建物を購入した場合、建物は経年劣化していくことから、購入金額を耐用年数に応じて毎年少しずつ経費化していくことになります。これを減価償却と言います。なお土地は経年劣化しないため、減価償却は認められていません。

アメリカの不動産は、日本と比べると不動産価格のうち建物が占める割合が大きいという特徴があります。つまりアメリカの不動産に投資すれば、減価償却として経費化できる金額が多くなるのです。

そもそも中古物件では耐用年数からすでに経過した年数が差し引かれるため、より短い期間で大きな金額を減価償却費として計上できます。この2つを組み合わせることで、多額の減価償却費を計上し節税する方法が多く行われてきました。

さらに、減価償却費を計上した結果不動産所得が赤字になれば、赤字分を給与などほかの所得から差し引くことができます。つまり、本来納税すべき所得税を納める必要がなくなるのです。

これが問題視され、2020年度の税制改正では海外不動産投資で生じた赤字をほかの所得から差し引くことが禁止される見込みです。

節税を検討中なら税制改正の動向は要チェック

今回は不動産投資に関係する節税対策について、2020年度の税制改正でどのような規制が検討されているかを解説しました。

税制改正大綱は、毎年12月20日前後に財務省のホームページで公表されます。現在不動産投資による節税を検討している人は、忘れずチェックするようにしましょう。(提供:YANUSY

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