スタートしたばかりの日産自動車の経営体制に早くも亀裂が入った。12月25日、日産は副代表執行役兼最高執行責任者(副COO)の関氏が同職を辞任、日産を退職する、と発表した。報道によると同氏は次期社長含みで日本電産入りするという。
関氏は生産技術部門出身、言わば “現場を知る” トップであり、また、前CEO西川氏のもとで策定された “パフォーマンスリカバリープラン” の推進責任者であった。それだけに経営への影響は小さくない。
12月2日、CEOに就任した内田氏は記者会見で、「COOのグプタ氏、副COOの関氏と議論を尽くして経営にあたる」と新体制の運営方針を語った。“ゴーン体制からの脱却” を強く意識したのであろう。スピーチではとりわけ “議論を尽くす” ことが強調された。
尊重・透明性・信頼が大切、広く社内外の声を聞く、部下を信頼する、権限を譲渡する、異論や反論が許される風土、、、内田氏は言葉や表現を変えて風通しの良い、フラットな会社を目指す意志を繰り返しメッセージした。筆者はそこに何とも言えない頼りなさを感じたが、それはさて置き、新体制発足からわずか3週間、盟友であるべき副COOの退任表明である。内田氏の忸怩たる想いが察せられる。
12月23日、米の新興EVベンチャー「リビアン・オートモーティブ」社が13億ドル、約1,400億円のファイナンスを行った。同社の資金調達は今年に入って4回目、既に22億ドルを調達済みだ。 設立は2009年、従業員1,000人、創業者でCEOのR.J.スカリンジ氏は36歳である。出資者にはアマゾン、フォードをはじめ、住友商事も名を連ねる。2017年には米国生産から撤退した三菱自工のイリノイ工場を取得、2020年内に量産体制を整え、2021年からグローバル販売を開始するという。
起業率が低い、起業家精神が乏しい、ユニコーンが育たない、これらは日本停滞論の定番フレーズだ。関氏は「サラリーマン人生の最後をCEOとして挑戦したい」と語ったとされるが、先端技術を知り、生産現場に通じ、トップマネジメントを経験し、人脈もある。しかも、フィールドは「100年に一度の大変革期」にある成長市場だ。永守氏という新たな “カリスマ” の元への “転職” ではなく、もっとチャレンジングなCEOへの道もあったのではないか。引き受けるべきでなかった職をこのタイミングで辞するのである。せめて大人のブレークスルーの手本となって欲しかった。
今週の“ひらめき”視点 12.22 – 12.26
代表取締役社長 水越 孝