当たり前を変えていく
あなたは、あなたが使う「言葉」と、あなたがいる「場」に大きな影響を受けている。しかも無意識に。あなたは、あなたの周りの平均値になっていくのだ。
Q :どんな言葉を使いたいですか?
例えば、何かをする時に、すぐ「難しい」という言葉を使う人がいる。その人は、自分でわざわざ難しいと思い込もうとしているのだ。逆に「簡単なことだ!」と思うと物事はあっさり進んだりする。僕の母は機械類が苦手だ。携帯電話もいつも「難しい」と言っている。逆に妹の子どもは6歳で使いこなしている。母と6歳の子を比べても能力は変わらないだろう。「難しいもの」と思っているか「楽しいもの」と思っているかの違いがよく表れている事例だ。
昔の僕は「人見知りなんで……」と言っていた。こんなふうに「自分は○○だ」と決めつけることはやめた方がいい。その言葉の分だけ、自分を小さな檻おりの中に閉じ込めているようなものだ。どんどん人見知りの自分を創っていくだけだ。
例えば「優しい人になりたい」と言っている人がいるかもしれないが、その人が優しい人になれることはないだろう。いつまでも「優しくなりたい人」で居続けるだけだ。本当に優しくなりたいのであれば、そんなことを願わずに今すぐに優しいことをすればいい。それでもう優しい人だ。
あなたは、どんな言葉を使っていきたいだろう。
そして、「朱に交われば赤くなる」という言葉があるように、あなたはあなたが多くの時間を一緒に過ごしている人たちの「当たり前」からも大きな影響を受けている。いつもグチグチ言っている人の中に身を置けばそれが当たり前になっていくし、いつも前向きで建設的な人の中に身を置けば自然とそうなっていく。もし何かを変えていきたいのであれば、一緒にいる人たちを少し変えてみるだけであなたの当たり前も変わっていく。
僕は意図的に、いろいろなグループに身を置くことにしている。ある時には、「売上が大切だよね!」という経営者たちと話を盛り上げる時もあれば、「自分の心のあり方が大切だ」「愛に溢れた世の中に!」なんて話をする精神的な人たちと一緒にいることもある。とても両極端だったりするのだが、そのどれもが僕だし、どれもに心地よく身を置いている。両極端の幅を知ることで、より多角的に物事を見ることができて、人間的な深みが増すのではないかなと思うのだ。あなたも、少し違う場にも身を置いてみてはどうだろう。
もっと、したたかでいる
この本でも、何度も「あなたの人生なのだから」という話を繰り返ししてきた。これは言い換えると「当事者意識」を持っているか?ということになる。あなたは自分の人生の主人公をちゃんと生きているのか?ということだ。
Q :どんな人生にしていきたいですか?
例えば、友だちと10人くらいで旅行に行くことになったとしよう。積極的にホテルや飛行機を調べる人もいれば、何もしない人もいるだろう。もちろん、全てを他人任せにしても旅行には行ける。しかし、それで本当に楽しめるだろうか。ホテルもレストランも観光地も、あなたが望むものではないかもしれない。そんな時に、仕方ないよなと我慢することもできるし、もっと楽しみたいと積極的に関わることもできる。
人生も仕事もまったく同じだ。会社の中で、積極的には何もせず、最低限の義務だけを果たし、与えられた権利を主張することもできるだろう。自分は何もせず、文句だけを言うこともできる。しかし、逆に積極的に関わって、せっかくの「働く」という時間を自分にとってより良いものにしていくこともできる。傍観者でいるか、当事者でいるか。この意識の差は、本当に大きい。
✓主語を「自分」にしよう
僕は、話をする時も、物事を考える時も、主語を「自分」にしている。
「あの人が……」「会社が……」「お客様が……」ではなく、どんな時も「僕が……」と話すことを心がけているのだ。主語を「他人」にすると、「(他人に)こういう良くないところがある」と批評したり、グチや不満を言いがちだ。それで終わるのではなく「こういう良くないところがあると思うから、僕はこうしていく」と自分が当事者でいることが大切だ。そして、人生の当事者であればもっとしたたかに、もっと遠くを見て自分を動かすこともできるだろう。
最近では、会社の飲み会に参加しない人や残業をしない人が多いと聞く。確かに、飲み会は労働時間外の話だし、残業だって規定外の話だろう。両方とも義務として言えば「やらなくてもいいこと」かもしれない。しかし、もっとしたたかに物事を利用した方がいい。会社に使われているのではなく、自分がより幸せになるために、会社を使っているくらいの感覚でいいと思う。
そう考えれば、飲み会だって価値ある時間になる。自分のやりたいことを進めていく上で大切な人間関係を、飲み会のような場所で育てていくこともできる。「そんなことはない。良い仕事や良いアイデアを出せば、やりたいことはできるはずだ。その仕事を見ずに人間関係みたいなもので左右されるなんて……」と思う人もいるだろう。それはきっと正しい。しかし、人はそれでは動かない。そのことが理解できていないようであれば、先程の「人生経験」が圧倒的に足りていない。
義務ではないがやらなくてはいけないことを「やらないといけない……」という意識のままにしておくと、逆に面倒くさいことになってしまう。どうせなら、その時間と経験からできるだけ多くのものを得られるように積極的に関わった方がいい。それは、誰のためでもないあなたのためだ。いつまでも小さな頃のように親や上司が守ってくれることもない。自分の人生の主役になっていこう。
主な著書に、『革新的な会社の質問力』(日経BP 社)、『私らしく わがままに 本当の幸せと出逢う100の質問』(A-Works)、『人生、このままでいいの?最高の未来をつくる11の質問』(CCC メディアハウス)がある。
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