欠点は直せないがブラインドスポットは直せる

日本では長所を伸ばす指導より、欠点を直す指導が多いように思います。でも、完璧な人間はいません。欠点を直そうとするよりブラインドスポットに注目してください。

欠点を直すべきか、長所を伸ばすべきか

たとえば、私の会社にチョコレートを作るのが大好きだけど、人と話すのが苦手という人がいたとします。

このとき、この人の欠点は非社交的なところだから、人と話せるようになるように店舗に立ってもらって、販売をやってもらおう。このように考える人事担当者はあまりいないのではないでしょうか。

私が人事担当者だとしても、チョコレートを作ることが大好きな人には、シェフとか製造部門担当者というポジションを与えると思います。

私は欠点を直すより、長所を伸ばしたほうが断然効率的だと考えています。欠点を直す時間があるなら、長所を伸ばすことに時間を注いだほうが、本人にとっても、会社にとってもメリットがあるのではないでしょうか。

このように、組織論的な観点で見れば、会社は社員の「欠点を直す」より、「長所を伸ばすべき」ということになるのではないでしょうか。

また、「欠点を直す」という考え方には、「完璧な人間が要る」という考え方が潜んでいるように思います。

欠点を直していって、少しずつ完璧な人間に近づいていく。そういうイメージがあるのではないでしょうか。しかし、ある程度人生を経験された方ならわかると思いますが、完璧な人など存在しません。

出会ったときは完璧に見えた恋人も、いつの間にか欠点の多いパートナーに変わっていたりします(笑)。

そういうことを、みなさん経験しているのではないでしょうか。人は人に、完璧を求めてはいけない。欠点はその人の個性、魅力だと考えたほうがよいと思います。

ブラインドスポットは直せる

欠点と似ていますが、もうひとつブラインドスポットというものがあります。日本語で訳すと「盲点」とか「死角」というのでしょうか。ビジネスでは、企業が戦略的に見逃してしまうポイントのようなことで使ったりします。

私はここでは企業ではなく、個人の問題としてブラインドスポットをみんなが持っていると考えています。特にその人の行動や習慣のなかにブラインドスポットはあります。

わかりやすい例でいうと、私の場合のブラインドスポットは、会議のときに最初に自分のアイデアや考え方を言ってしまうということでした。

これは、企業のトップやリーダーに多いタイプなのだそうです。社長やリーダーが最初に自分の考えを言ってしまうと、社員やチームのメンバーはその意見に合わせた考え方を発言しがちで、議論に多様性が出ないというのです。

なるほど、と思いました。その指摘を受けてから、私は会議のときにはまず社員やスタッフの意見を聞くところから始めるように習慣を改めました。

私の場合、そのことを指摘してくれる人がいたので、気づくことができましたが、ブラインドスポットは盲点や死角というだけあって、自分ではなかなか気づきにくいものです。

ですから、ブラインドスポットを発見するためには自分のやっていることを人に見てもらって、アドバイスを受ける必要があると思います。

欠点は直せないが、習慣的なクセや、もののやり方はいくらでも改めることができる、ということは覚えておいてもいいでしょう。

グローバル化を目指すなら、教え方を変えるべき

他の項目でも書かせていただきましたが、「褒めることをしない」「欠点を指摘する」「みんなを同じ枠にはめ込もうとする」、そういう古い教育方法はこれからは通用しないと思います。

過去の日本の教育は、よいところを伸ばすというよりは、欠点や誤りを指摘して、平均化した優等生を作ることを目指していたように見えます。こうした古い教育方法は、これからの日本にとってマイナスだと思います。

第一の理由は、既存のシステムのなかで真面目に働く人間は作れても、これからの時代を切り開く独創的な起業家や、国際社会のなかで活躍するような、異文化への対応力がある人間を作ることは難しいからです。

欠点のない平均的な人間より、多少欠点があっても独創的で、想像力の豊かな人間がこれからは必要とされます。

AI化が進み、ミスが許されない事務作業のようなものは少しずつ人間の手を離れて自動化されていきます。そのとき、必要とされるのは、新しい時代の課題に、新しい解答を用意できる人間です。そういう人間を育てる教育システムがこれからは必要なのではないでしょうか。

そして第二の理由は、外国人労働者の受け入れという問題です。これからの日本は労働力不足の解消として、外国人労働者を受け入れていくことになります。外国人労働者が喜んで日本に来てくれているうちは問題ないかもしません。

しかし、外国人労働者の獲得を他国と競い合わなければならなくなったとき、今の教育のままだと、日本は労働者獲得競争で敗れる可能性があります。

なぜならば、外国人労働者は賃金の獲得だけではなく、質の高い職業教育を望んでいるからです。

質が高く、豊かな個性を引き出す。日本人でも、外国人でも楽しく学ぶことができる、そういう教育システム作りをしていく必要があるのではないでしょうか。

ゴディバ ジャパン
ジェローム・シュシャン
日本およびアジアを中心とする国際市場において25年以上に渡るラグジュアリーブランドのマネージメント業務に従事した経歴を持つ。2010年6月にゴディバ ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任、革新的な新製品の開発やチャネル拡大戦略、マーケティング施策により多様化する顧客のニーズに応え、日本の業績を7年間で3倍に成長させた。日本以外に、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ベルギーの生産工場(「Manufacture Belge de Chocolats」)のマーケットを統括する。2016年に、初のビジネス書「ターゲット ~ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?」を執筆。フランス人社長が日本の武道の一つである弓道を通して得た、マネージメントやリーダーシップへのアプローチについて綴っている。同書の英語版は2018年4月に出版され、海外からもそのユニークなビジネス手法に関心が寄せられている。2019年に、「ゴディバ ジャパン社長の成功術 働くことを楽しもう。」を出版。若いビジネスマンに向けたハッピーマネジメント術を紹介している。

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