矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

19日、ファミリーマートが全社員の15%、1,025人の希望退職を発表した。募集対象は40歳以上、経営側が予定した人数は800人、しかし、最終的に1,111人が応募、業務への支障が見込まれる社員を外したうえで正社員924人、非正規社員101人が3月末日付けで退職する。希望退職による追加費用は約150億円、この2月期決算で費用計上する。
成長性と高収益性で流通革命をけん引してきたコンビニエンス業界にあって、想定以上の “本部” 社員がその将来に見切りをつけた。まさに業界が転換期にあることの証左である。

総務省が14日に発表した「労働力調査」によると、2019年のフリーター人口は138万人、前年比で5万人減、2010年からこの10年間では44万人の減少である。直接的な要因は大卒就職内定率の上昇である。要するに “望まないフリーター” が減ったということだ。一方、35歳から44歳の “先輩フリーター” は45万人から53万人へ拡大、これは非正規雇用者全体が1,763万人から2,165万人へ拡大していることと軌を一にする。つまり、フリーター状態に置き去りにされた人が累積しつつあるということだ。
政府もこうした状況を “社会問題” と認識、「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」を策定し、“今後3年間に集中的に取り組む” とする。

公的支援の在り方と限界については別の機会に述べる。ここではファミリーマートのリストラの背景に加盟店、つまり、営業の最前線における要員不足と人件費高騰があることを指摘したい。本部社員減員による費用削減効果は約80億円、同社はこれを急激な経営環境変化に苦闘する加盟店支援に振り向けるという。つまり、コンビニエンスストアというビジネスモデルは低賃金で、かつ、不安定な雇用条件のもとにある若年非正規従業員、言い換えれば、無限に供給されるフリーターの存在を抜きには成立し得なかったということである。コンビニだけではない。外食も同様だろう。要するに接客に象徴されるサービスコストがいかに都合よく簿外化されてきたか、ということである。

“日本式おもてなし” などと精神論を振りかざし、無償の奉公を美徳として強要する経済システムは終焉した。フェアであれ、社会全体がこれを受け入れるだけでサービス業の生産性は格段に向上する。

今週の“ひらめき”視点 2.16 – 2.20
代表取締役社長 水越 孝