株式投資を始めるならば、潜在的リスクをあらかじめ知ることが重要。把握していればリスクを回避・対応策を取れるためだ。ここでは株式投資の代表的なリスクとその回避策を紹介していこう。

目次
1,株式投資の3つのリスク――株価下落、企業の倒産、流動性
2,株式投資のリスク回避の5つの方法――中長期、分散、損切りなど
3,株式投資の基本

1,株式投資の3つのリスク――株価下落、企業の倒産、流動性

株式,投資,リスク,回避法
(画像=pathdoc/Shutterstock.com)

株が持つ代表的なリスクには
・株価が下落してしまう
・保有株企業が倒産してしまう
・市場で売買できない状態になることがある

という3つがある。それぞれを詳しく説明していこう。

リスク1, 株価下落のリスク――企業内部要因と外部要因の2パターン

これは文字通り、株価はさまざまな要因で下落する可能性があるということ。ここでは、保有する株式の株価が下落する代表的な2つのパターンを紹介する。 なお株価に影響を及ぼす業績悪化については、状態に応じた対策が必要になる。詳しくは、後述する株式投資のリスク回避法を参考にしてもらいたい。

・パターン1,企業提供商品と市場ニーズのアンマッチ
株式購入にあたっては、企業のファンダメンタル分析を行い、成長性を判断するのが肝要。将来の株価上昇、売却益につながるからだ。

相場環境に大きな問題は見られないのに、いったん下がった株価に回復の兆しが見えないこともある。原因として考えられるのは、その企業の提供する商品・サービスが世の中のニーズに合わなくなっているなど。市場要望にマッチしない場合、当然ながら企業の業績は悪化し、成長も鈍化する。

・パターン2,突発的事象や経済問題
企業の業績が堅調であっても、世界で情勢不安が起こったり株式相場が大暴落したりすれば、それに呼応して企業の株価も下落を余儀なくされる。

2008年のリーマンショックでは、米国リーマン・ブラザーズの破綻がきっかけとなって世界同時不況を招いている。2011年に発生した東日本大震災発生直後の福島原発事故後には東証1部上場銘柄の97パーセントが値下がりして、日経平均の下落率は10.55パーセントを記録した。記憶に新しいところで、2018年12月25日には、米中の通商問題や米政府機関の一部閉鎖などに対する投資家心理の悪化で米ダウが1,000ドル超下げた。これが引き金となり、1年8カ月ぶりに日経平均は2万円を割り込んだ。

突発的な重大事象の発生や世界経済の悪化は株式相場全体に影響を及ぼすことが多いため、企業の業績に関わらず株価は下落してしまう。

リスク2,企業の倒産リスク――最悪の場合、資金がゼロになる可能性も

投資した企業が、さまざまな理由で想定外の著しい業績悪化で倒産することもある。株式会社が倒産した場合、保有していた株式に価値はなくなる。

株主には「残余財産を受ける権利」があるため、投資した資金を一部回収できる可能性もあるが、企業の財務状態によっては、最悪の場合、全く資金が戻らないケースも考えられる。

リスク3,流動性リスク――株の売約ができないことも

株式売買は売り注文と買い注文の需要と供給が一致して初めて取引が成立する。活発に取引が行われている銘柄であれば希望する価格での取引も可能だ。

しかし、流動性が低い、つまり取引が少ない銘柄の場合、保有していた株式を指値で売却したいと思っても、売り注文に見合う買い注文が入っていなければ約定しない。どうしても売却する必要があれば成行注文を出すしかない。このような場合、予想外に安い株価で約定し、売却損が出る可能性も否定できないのだ。

別の流動性リスクとしては、一時的に流動性が低くなって取引が成立しないケースも考えられる。深刻な業績悪化などで売り注文が殺到し、買い手の不足により売りたくても売れないような場合だ。こうなると、売却するためには時間を空けて注文し直すか日を改めるしか手はない。

株式投資のリスク回避の5つの方法――中長期、分散、損切りなど

上述のように、株式投資には常に潜在的リスクがともなう。このようなリスクを想定した上で、事前に対策を打つことが何より重要だ。

株式投資のリスクを回避するための、具体的な対策を見ていこう。

回避法1,中長期投資を基本方針にする

「株式投資の基本は中長期投資」、これが投資初心者にとって、あらゆる株式投資のリスクを最小化する最善策と言えるだろう。

相場観や投資知識が不十分な投資初心者が、個別銘柄への短期投資で継続的に値上がり益を得ることは難しい。株式投資を始めたばかりで負けが続くと、株式投資を続ける意欲も失せてしまうかもしれない。

当面は配当金や株主優待を目的として株式を地道に保有したり、買い増したりしながら、自分の投資テクニックを磨いていくのが賢いやり方と言えるだろう。株式を長期保有するうちに、株価が大幅に値上がりすれば、売却して利益を得ることもできる。

回避法2,資産を分散させる

株式投資の鉄則である「分散投資」を徹底することも、リスク回避に大いに役立つ。資産を1銘柄や1業種に絞り込む、あるいは一度に多額の資金を1つの銘柄や商品に集中させると、値下がりした際のダメージが大きくなる。

これを避けるために、以下のような分散投資をすれば、リスクを抑えつつ資産運用を続けられる。

・複数の銘柄を保有する
・世界中の国々の株式に投資する
・同じ銘柄でも数回に分けて買い付ける

とはいえ、投資初心者が分散投資のための銘柄や購入のタイミングを自分一人で判断するのは難しいだろう。その場合は、以下のような分散投資効果のある金融商品に投資するのも手だ。

分散投資効果のある金融商品(例) 特徴
投資信託 多くの人から集めた資金をもとに、
プロが複数銘柄でポートフォリオを
組んで運用する
ETF(上場投資信託)
ETN(上場投資証券)
REIT(不動産投資信託)
さまざまな指標や不動産に連動する
投資信託であり、取引所に上場している
積立投信 少額でも投資できる。
定期的に一定額ずつ投資信託を購入する。
証券会社によっては、毎月一定額ずつ
単元未満株を買い付ける積立投資もある

回避法3――損切りやインバース型商品も計画に入れる

企業分析を定期的に行い、回避法の1、2を実施していても、急激な業績悪化や突発的事象の発生で、保有銘柄や株式相場全体が暴落してしまうこともある。

そのような場合に備えるためにも、以下のような2つの対策も念頭に置くべきだ。

・業績悪化による株価暴落リスク→場合によっては損切りも
インカムゲインを目的とした中長期投資を前提に個別銘柄を保有している場合、一時的な業績悪化による株価の下落であれば、そのまま保有しておいて業績と株価の回復を待つのが最善策だ。

ただし、会社の持続的な経営に影響を及ぼすほど業績悪化が深刻で、上場廃止や倒産も起こり得るような場合は、損切り(売却して損失を確定すること)も損失を最小限に抑える手段として有効だろう。

この場合は、手元資金にどの程度余裕があるかを見ながら「取得価額の〇%を下回ったら売却する」などのルールを設けて、それに則って売却するといいだろう。一般的に、損切りラインは値動きの荒い銘柄であれば15~20%、値動きがそれほど大きくない銘柄なら10~15%とされている。

・突発的事象による株式相場の暴落リスク→インバース型ETFでリスクヘッジ
ゴールデンウィークや年末年始など、市場が数日間休場している間に発生した大規模な自然災害やテロの影響で、株式相場が暴落するリスクもある。これについては、中長期投資が前提の場合はやはり静観し、株価が回復するのを待つのが基本だ。

それでも株価暴落が心配なら、一時的なリスク回避策として、インバース型ETFを購入する方法もある。

インバース型ETFとは、日経平均やTOPIXなどの代表的な指標とは逆の値動きを目指して運用されているETFのこと。株式相場全体が値下がりする時、インバース型ETFは値上がりするので、一定のリスクヘッジ効果がある。

インバース型ETFを暴落リスク回避策として利用する際は、注意が必要だ。株式相場が上昇するとインバース型ETFの価格は下落して、利益が相殺されてしまう。リスク対策としてのインバース型ETFへの投資は、あくまでも一時的なものだと考えてほしい。

回避法4――取引が活発な銘柄を購入する

保有する株式を売却する際は、買い手がいないと売買が成立しない。このような流動性リスクを回避するためには、銘柄選択の段階で、毎日一定の出来高があり、売買が成立していることを確認するのが基本だ。

また、将来売却する際に、希望する価格帯で約定させたいなら、取引が活発に行われている人気の高い銘柄を選んでおきたい。

回避法5――自分の知っている企業に投資する

投資初心者が心がけたいのは、「自分が知っている企業に投資する」ことだ。相場環境や企業分析のテクニックが未熟なまま、自分の知らない企業に投資すると、不測の事態に見舞われるリスクも高くなる。

株式投資に慣れるまでは、有名な企業や自分が愛用している商品を販売している企業、仕事で取引のある企業など、経営状態を日々の生活から垣間見ることができる銘柄を選ぶといい。

3,株式投資のリスクを抑えるには企業分析が必須

株式投資が安全性を保証されたものでない以上、購入当初からある程度のリスクを想定しておく必要がある。

上記以外にもさまざまな対策が考えられるが、その大前提となるのが企業分析だ。銘柄の選択にあたっては、企業の業績や財務状態を適切に分析して成長性を見極める、株式を購入した後も定期的に業績や経営状態を確認することは必須と考えてほしい。

また、日常的に経済情勢に注意を払い、実際に株価の暴落が発生した際は適切に対応できるよう、心の準備をしておくことも大切だ。

文・近藤真里(フリーライター)/MONEY TIMES

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