後継者不足といわれる現代、円滑な事業承継は会社にとって大きな課題です。改正された「事業承継税制」を利用すれば贈与税・相続税が最終的には免除されます。この有利な制度の概要を紹介します。

「事業承継税制」とは何か

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(画像=panuwat phimpha/Shutterstock.com)

事業承継税制とは、簡単にいうと「会社や個人事業の後継者が贈与や相続で受け継いだ株式や事業用資産に対する税金がかからない制度」です。これまでは会社の株式を後継者が相続した場合、相続税は現金で納付しなければなりませんでした。複数の相続人で株式と現金を分けて相続したケースでは、株式を相続した人が現金を工面できなければ、最悪会社を解散することも検討する必要があったのです。

事業承継税制は、このような問題を解決するために政府が導入したものです。中小企業の事業承継を円滑に進めるために贈与税や相続税を減免することを制度の主旨としています。

認定には「経営承継円滑化法」の承認が前提

事業承継税制を利用するには、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、経営承継円滑化法)」で承認されることが前提となります。

経営承継円滑化法とは、「遺留分に関する民法の特例、事業承継資金等を確保するための金融支援や事業承継に伴う税負担の軽減(事業承継税制)の前提となる認定が盛り込まれている」(中小企業庁見解)法律です。

遺留分とは「最低限の遺産取得分」として、なるべく相続の権利を有する者(法定相続人)全てが多くの遺産を引き継げるようにとの配慮から、民法で認められているものです。この法律では、以下の3つの支援策が柱になっています。

(1)税制支援
事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予および免除制度)の前提となる認定を各都道府県が行います。

(2)金融支援
中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例の前提となる認定を各都道府県が行います。

(3)遺留分に関する民法の特定
遺留分に関する民法の特定を中小企業庁が行います。

次章では事業承継税制を法人版と個人版それぞれについて、国税庁の見解から比較してみましょう。

法人版事業承継税制の概要

法人版事業承継税制は、国税庁によると以下のような見解です。

「後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度」
出典:国税庁

平成30年度の税制改正により、納税猶予の対象になる非上場株式等の「総株式数の3分の2まで」という制限が撤廃され、納税猶予の80%減免が100%に拡大されたことにより実質的に非課税となりました。法人版事業承継税制では、経営承継円滑化法に基づく認定等を受けることが適用の条件です。

個人版事業承継税制の概要と法人版との違い

個人版事業承継税制は、国税庁による見解は以下の通りです。

「青色申告(正規の簿記の原則によるものに限ります。)に係る事業(不動産貸付事業等を除きます。)を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた者が、個人の事業用資産を贈与又は相続等により取得した場合において、その事業用資産に係る一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度」
出典:国税庁

両制度の大きな違いは、法人版が自社株(非上場株式)の贈与・相続を中心にしているのに対し、個人版は個人の事業用資産が対象になっていることです。個人の場合も経営承継円滑化法で承認されることが前提となる点は同じです。中小企業においては、後継者がいないために会社を解散する残念な例が少なくありません。

法人・個人にかかわらず優良な事業を後継者にバトンタッチできるよう、事業承継税制をうまく活用することが望まれます。 (提供:ビルオーナーズアイ


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