機関投資家やヘッジファンドは顧客から資金を預かり一定期間でのファンドの成績で評価されます。しかし個人投資家の場合は、10年以上の投資期間で好成績が見込めれば良いのです。その場合、投資の原則は「長期」「分散」「積立」となります。今回は、「分散」に焦点をあててその効果が実感できる「ETF(Exchange Traded Fund)=上場投資信託」を見ていきましょう。
ETFを保有することでどのような効果があるか
2020年2月下旬からコロナショックで株価の大幅な上下動が止まりません。このような状況下の場合、投資マーケットから資金を引き出し現金に変えようとする動きも見られるでしょう。しかしここで我慢して積み立てを続けることができれば価格が下がった金融商品を多く買うことができます。また将来価格が上がったときに売却できる単位も増えることでしょう。
投資時期の分散
一定額を毎月など定期的に買い付ける購入方法を「ドル・コスト平均法」と呼びます。投資対象の価額が下がったときにはたくさんの購入でき上がったときは少なくなるのが特徴でこれが投資時期の分散です。
投資銘柄の分散
もう一つ重要なのは、投資銘柄の分散です。「卵を一つのかごに盛るな」というたとえのように全資金を1銘柄に投資した場合、その銘柄の価格が大きく下落した場合、受ける損失は非常に大きなものになります。金融商品の中でもETFは、一つの銘柄の中に何十といった銘柄を合わせたパッケージ商品です。その中身は、「株式」「債券」「オルタネイティブ」など多岐にわたります。
したがって複数のETFを組み合わせることで幅広い分散投資が自動的にできるでしょう。
海外ETFの現状
世界初のETFは、意外にもアメリカでなく1990年カナダのトロント証券取引所に上場されたTIPS35(Toronto 35 Index Participation Units 35)です。(諸説あり)アメリカ初のETFは、1993年1月29日、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズがS&P500に連動する商品をアメリカン証券取引所に上場したもの。
2009~2019年における10年間の世界のETF残高とファンド数の推移を見ると残高は約1兆410億米ドルから約5兆9,550億米ドルと約5.7倍、ファンド数は1,969本から6,975本へ約3.5倍に増加しました。
世界のマーケットシェアで見るとアメリカが約70%、欧州16%、日本7%の順です。これを見る限りやはり金融大国アメリカの圧倒的な優位性はずば抜けています。日本でETFといえば「日銀がETFを買って株価の下支えを行う」などの記事が日経に掲載される程度で一般投資家になじみがある商品とはいえないのが現実です。
アメリカでこれだけ残高を伸ばしているには、何かしら理由があるはずです。その背景には「明快で分かりやすい」ということが最大のメリットだからではないでしょうか。仕組債などの複雑なデリバティブを組み入れた商品は、一見機能満載で「もうかるのでは?」と感じますが金融リテラシーが高くない場合はしっかり理解できていないためリスクヘッジもおろそかになりがちです。
しかしETFは金融商品の中でもシンプルという原点回帰をした商品といえます。ETFの有用性は、主に以下の4つです。
- 透明性が高い
- 流動性が高い
- 維持コストが低い
- 品ぞろえが豊富
まさにシンプルで分かりやすい金融商品といえるでしょう。
ETFはどこで買えるか
先述した通りETFは上場投資信託のため、日本にもマーケットがあります。東証に上場しているETF銘柄は2020年4月時点で内国ETF184本、外国ETF37本の合計221本です。しかしアメリカと比較すると取扱残高、本数ともに圧倒的な差があります。ではアメリカETFをはじめとする海外ETFは、どこで購入することができるのでしょうか。大きく分けると以下の2つの方法があります。
1 証券会社経由
オーソドックスな方法は、証券会社から購入する方法です。証券会社によって購入可能な本数は異なりますが、ネット系証券会社からも購入できます。NASDAQやNYSEに上場している地域、先進国、新興国、セクター別、債券、コモディティ、REITなどの銘柄はさまざまです。例えばNASDAQに上場している世界48ヵ国の時価総額85%をカバーする株式指数に連動するMSCI
また最近は、購入手数料を無料にするネット系証券会社も出現しています。
2 ロボアドバイザー経由
日本では2016年に初めて登場したロボアドバイザーの投資対象商品も海外ETFです。証券会社経由は、個人投資家が個別に銘柄を選択し注文する必要がありますが、WealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO(テオ)といったロボアドバイザーでは、銘柄選択も任せることが可能です。年齢、投資経験などの質問に答えれば株式、債券、金や不動産などの実物資産のポートフォリオ(組み合わせ)を自動的に配分してくれます。
その代わり手数料は、証券会社から直接購入するより若干高めです。しかしそれでも残高に応じて1%を切る手数料で購入できる場合もあるでしょう。手数料の中には、購入時に円をUSDに換えたり引き出し時にUSDを円に換えたりするコストも含まれます。
市場を見極めながらシンプルで分かりやすいETFに長期投資してみよう
ETFは、マーケットに上場しているシンプルで分かりやすい商品です。そのためリアルタイムで売買することもできますが、マーケットの動きに一喜一憂して売買する手法とは別物です。ETFは、市場の平均に投資をする商品が多い傾向のため、マーケットの成長に投資をすることを意味します。新型コロナウイルスによりマーケットの乱高下は、「短期で終息するのか」「数年間かかるのか」など予測は不可能です。
しかしリーマンショック後も数年かけてマーケットはしっかりと回復してきました。「ETFに投資をする=資本市場に投資をする」という考え方に立つなら短期売買ではなく積み立てをしながら長期保有を目論むことで果実を得ることができる商品といえるでしょう。(提供:YANUSY)
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