投資信託は堅実で比較的長期の運用に向いているというメリットがあり、多くの銘柄が販売されている。ただ、いざ買おうとすると小難しい数字やカタカナの用語が並び、よく分からないという人は多いだろう。40代の投資初心者はどのような点に注目して投資信託の銘柄を選べばよいのだろうか。

目次
1.投資信託の7つの選び方
2.初心者が選びたい銘柄7選
3.投資信託の選び方のコツ

1.初心者が失敗しない投資信託の7つの選び方

投資信託,選び方
(画像=Chinnapong/Shutterstock.com)

投資信託のなかには誰にとっても明らかに劣る、または優れる銘柄が存在する。7つのポイントに沿って、基本的な選び方をおさえてみよう。

(1)購入時と売却時にコストがかからない投資信託を選択する

投資で思ったとおりの結果を出すために重要なのは取引コストを下げることだ。運用結果はコントロールできないが、投資信託の手数料は事前に明示されている。同じような内容の銘柄であれば、当然コストが低いほうを選ぶべきだ。

一般的な投資信託では次の3つの場面で手数料がかかる。
・購入時
・運用期間
・解約時

投資信託では購入時にかかるコストは販売手数料と呼ばれ、高いと実質的な利回りは下がってしまう。手数料がかからないノーロードファンドも多く販売されており、なるべくコストがかからない銘柄を選択すべきだ。

投信信託の購入時手数料は、原則として販売会社が決めている。同じ投資信託でも金融機関によって販売手数料が異なるケースもある。気になる投資信託に販売手数料がかかる場合には、他の金融機関を調べてみるのもよい。

投資信託の解約時にかかるコストは信託財産留保額と呼ばれる。こちらは銘柄によって設定しているかどうかが異なるため、商品検討時には必ず確認しておきたい。信託財産留保額を無料としている投資信託も多いので、なるべくそちらを選択すべきだ。

(2)投資信託の運用期間中にかかる信託報酬はなるべく低く抑える

投資信託では運用期間中にかかるコストも非常に重要だ。運用期間中にかかるコストは信託報酬と呼ばれ、投資信託の運用期間中は常に発生する運用管理費用のことである。

投資対象が同じファンドA(信託報酬 年率0.1%)とファンドB(信託報酬 年率1.0%)があるとしよう。投資対象資産が1年で3.0%上昇した場合、投資家に還元される利益はそこから信託報酬を割り引いたものになる。計算すると、ファンドAでは2.9%(3.0%-0.1%)、ファンドBでは2.0%(3.0%-1.0%)だ。投資信託を選ぶときに信託報酬が低い銘柄に越したことはない。

一般的な投資信託の信託報酬は、積極的に市場を超えたリターンを目指すアクティブファンドのほうが高く、株価指数などに連動することを目指すインデックスファンドのほうが低い。投資対象資産によっても水準が異なるため、比較するときは同じ条件の商品同士で比べる必要がある。

参考として、金融庁はつみたてNISAの対象商品となる要件に信託報酬の上限を設けており、こちらの数値を基準としても良いだろう。銘柄ごとの信託報酬上限(税抜)は次の通りだ。

インデックスファンド
分類 投資対象地域 信託報酬上限(税抜)
株式型 国内 0.50%
海外 0.75%
国内・海外 0.75%
資産複合型
(バランスファンド)
国内 0.50%
海外 0.75%
国内・海外 0.75%
アクティブファンド
分類 投資対象地域 信託報酬上限(税抜)
株式型 国内 1.00%
海外 1.50%
国内・海外 1.50%
資産複合型
(バランスファンド)
国内 1.00%
海外 1.50%
国内・海外 1.50%
※筆者作成

これらの信託報酬はあくまでも金融庁が定める長期投資に適した投資信託としての最低限の要件である。探せばこの基準よりを大きく下回る投資信託もあるだろう。投資信託では運用が長期になればなるほど、信託報酬を低く抑えた効果は出やすい。銘柄選びは慌てずじっくり探してみよう。

短期での値上がりを目指すアクティブファンドであれば信託報酬も重要だが、それを上回るパフォーマンスを残しているかという点に着目する必要もある。

(3)投資信託の純資産総額は大きいものを 30億円以下のファンドは要注意

投資信託を選ぶ際は純資産総額も確認しておきたい。純資産総額は投資信託の純資産、つまりは投資家の持ち分を指し、基準価額に総口数をかけて計算される。基本的に純資産総額がなるべく大きいものを選択するのが望ましい。純資産総額が大きいと、コスト面でも規模のメリットを活かせるという利点がある。

逆に投信信託の純資産総額が小さくなると、投資家からの売却依頼に応えるために必要な資産を取り崩すこともあり、安定した運用ができなくなったり、場合によっては繰上償還されたりもする。

投信信託の純資産総額については、一般的に30億円以上あることが安定した運用の一つの目安になるとされる。余裕をもつなら、なるべく100億円以上ある投資信託を選択するとよいだろう。

(4)投資初心者はインデックス型投資信託から始めるのがベター

投資初心者なら、まずはインデックスファンドから投資を始めることをおすすめする。インデックスファンドはコストも低く、ベンチマークに沿った運用を行う点から、初心者でも投資判断を行いやすい。

もちろん、ポートフォリオのアクセントにアクティブファンドを加えるという手法もある。その場合、アクティブファンドの比率は最大で2割程度を目安として始めてみるのがよいだろう。

(5)投資初心者ならバランス型投資信託を活用するのも手

投資信託では複数資産を保有することでのリスク分散という視点が重要だ。特定業種の銘柄だけでなく指数全体へ投資したり、国内株式型だけでなく海外株式型、株式型だけでなく債券や不動産(REIT)を保有したりするということだ。

投資初心者がいきなりさまざまな資産の銘柄を選ぶのはハードルが高いだろう。そこでバランス型ファンドの投資信託の銘柄を選択肢に入れてみることも重要だ。

バランス型ファンドはそれ1本を購入するだけで、複数資産に投資を行える。リスク分散に頭を悩ませる必要がない。投資初心者の場合には、こうした投資信託の銘柄も積極的に検討してみよう。

(6)毎月分配型の投資信託には手を出さない

毎月分配型の投資信託は毎月出る分配金に「お小遣い」に似た魅力を感じる人もおり、一定の人気がある。しかし運用の目的に照らし合わせてみれば、手を出さないほうが良いだろう。

せっかく現金で持っておくよりも有利に運用するために投資信託を始めたのに、稼いだ先から換金するのではあまり意味がない。投資信託のなかには利益を大きく超えて、元本を取り崩して分配金を支払う「タコ足配当」の状態を続ける銘柄もある。

投資の魅力は儲けを現金化せずに運用する、つまり再投資することで複利の効果を生み出すことだ。頻繁に分配金が出る投資信託は、このメリットを殺してしまうことになる。また毎月分配型の投資信託は毎月決算を行うため、それに伴う費用でコストが割高となる。

(7)テーマ型投資信託は避ける

テーマ型投資信託とは、特定のテーマに絞って投資を行う投資信託のことである。「AI」や「フィンテック」など、時流に沿ったテーマを設けて、関連銘柄へ投資を行う。テーマ型投資信託は金融機関でも大々的に宣伝されるケースも多いが、初心者は避けたほうが良いだろう。

テーマ型投資信託は短期でのテーマ株の隆盛を狙った商品だが、投資信託として設定される段階においては、すでに関連銘柄が割高になっているケースもある。また信託報酬も割高であるケースが多く、長期投資には向かない。長期で資産形成を行う投資初心者であれば、選択肢から外したほうがよいだろう。

2.初心者が選びたい投資信託の銘柄7選

投資初心者向けの投資信託の選び方を参考に、上記7つのポイントを押さえた投資信託の銘柄を7つ紹介しよう。(※データはすべて2020年4月27日時点)

(1)ニッセイTOPIXインデックスファンド

ニッセイTOPIXインデックスファンドはTOPIXをベンチマークとするインデックスファンドだ。

・運用会社……ニッセイアセットマネジメント
・純資産総額……257億円
・信託報酬……0.14%(税抜)

投資信託での日本株への投資では、TOPIXをベンチマークとしたインデックスファンドをおすすめする。日経平均株価を対象とするものよりも組入銘柄数が多く、銘柄分散の効果が高いためだ。

ニッセイTOPIXインデックスファンドはTOPIXをベンチマークとするインデックスファンドのなかでは信託報酬が最低水準であり、購入時と売却時のコストもかからない。ベンチマークとの連動性も高く、日本株は情報も得やすいため、投資信託のポートフォリオの中心として期待できる。

(2)eMAXIS Slim 先進国株式インデックス

eMAXIS Slim 先進国株式インデックスは先進国株式を対象としたインデックスファンドであり、ベンチマークはMSCIコクサイ・インデックスだ。先進国株式は地域分散を図るうえで非常に重要な選択肢になるので、検討したい資産クラスである。

・運用会社……三菱UFJ国際投信
・純資産総額……854億円
・信託報酬……0.093%(税抜)

eMAXIS Slim 先進国株式インデックスは先進国株式型インデックスファンドのなかでも信託報酬が低水準であり、その割合は0.1%を下回る。購入時と売却時のコストもかからず、低コストで保有できる銘柄だ。ポートフォリオの内訳は米国が約7割となっており、イギリス、フランス、スイスといった国が続く。

(3)楽天・全世界株式インデックス・ファンド

楽天・全世界株式インデックス・ファンドは新興国を含めた全世界の株式を対象とするインデックスファンドだ。ベンチマークはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスである。

・運用会社……楽天投信投資顧問
・純資産総額……340億円
・信託報酬……0.19%(税抜)

楽天・全世界株式インデックス・ファンドの投資対象銘柄数は8,000銘柄にも上り、この投資信託を1本保有するだけで世界中の株式への分散投資が可能である。信託報酬も十分に低い水準であり、購入時と売却時のコストもかからない。投資信託の初心者には手軽に分散投資ができる非常に魅力的な銘柄だ。

(4)ニッセイ外国債券インデックスファンド

ニッセイ外国債券インデックスファンドは先進国の債券を対象とするインデックスファンドだ。ベンチマークはFTSE世界国債インデックスである。

・運用会社……ニッセイアセットマネジメント
・純資産総額……128億円
・信託報酬……0.14%(税抜)

債券は一般的に株式と比べてリスクが低いため、ポートフォリオのバランスを取るために活用されるケースが多い。ニッセイ外国債券インデックスファンドは先進国の国債を中心にポートフォリオを組んでおり、組入銘柄の上位には米国債が並ぶ。信託報酬も低水準で、購入時と売却時のコストもかからない。投資信託のポートフォリオに組み込んでおきたい銘柄である。

(5)野村6資産均等バランス

野村6資産均等バランスは日本と先進国それぞれの株式、債券、REITに投資を行うインデックスファンドである。それぞれの資産配分は6分の1ずつとなっている。

・運用会社……野村アセットマネジメント
・純資産総額……104億円
・信託報酬……0.22%(税抜)

野村6資産均等バランスは日本と先進国の各資産にまとめて投資ができるバランスファンドである。信託報酬も低く、購入時と売却時のコストもかからない。投資においては資産分散が重要であるが、投資初心者はその配分や各資産での銘柄選びに手を焼くだろう。迷った場合には、こうしたバランスファンドを活用してもよい。

(6)eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)は日本と先進国の株式、債券、REITに、新興国の株式と債券を加えた8資産に投資を行うインデックスファンドである。投資割合は各資産8分の1ずつだ。

・運用会社……三菱UFJ国際投信
・純資産総額……458億円
・信託報酬……0.14%(税抜)

eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)は新興国まで含めた分散投資ができるバランスファンドだ。信託報酬も低く、購入時と売却時のコストもかからない。新興国の成長までポートフォリオに含めたいという人は、この銘柄でまとめて購入してみてもよい。

(7)三井住友・配当フォーカスオープン

三井住友・配当フォーカスオープンはインデックスファンドではなく、日本の高配当株へ投資を行うアクティブファンドである。積極的な投資をしたいなら検討したい。

・運用会社……三井住友DSアセットマネジメント
・純資産総額……43億円
・信託報酬……0.84%(税抜)

三井住友・配当フォーカスオープンは東証一部、二部に上場している銘柄のなかから、予想配当利回りが高い銘柄などを選別して投資を行う。銘柄選別の手法も分かりやすく、インデックスファンドとは異なる視点で投資を行える投資信託である。毎月分配やデリバティブなどの複雑な仕組みもない。

コスト面でも、信託報酬はアクティブファンドの中では低い水準だ。購入時の手数料は金融機関によって異なるが、ネット証券などでは無料となっている。また売却コストである信託財産留保額はかからない。

3.投資信託の選び方のコツは低コストでシンプルな銘柄を選択すること

投資初心者が投資信託の銘柄を選ぶときは、なるべく低コストかつシンプルな銘柄を選択するように心掛けたい。投資信託のコストは運用成績に直結するため、コストを低くすることは重要だからだ。

投資信託ではコストと商品の複雑さには大きな関係がある。基本的に投資信託はシンプルな設計であればあるほど、運用管理の手間が掛からず、低コストとなる。反対に、複雑な商品になればなるほど、コストも大きくなる。複雑な投資信託を選ぶと運用の実態把握が難しくなり、投資初心者には向かない。

投信信託の銘柄選びに迷ったら、低コストかつシンプルな商品かどうかを基準として判断すれば、理想のポートフォリオに近付くはずだ。

文・樋口壮一(金融ライター)/MONEY TIMES

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