新型コロナウイルス感染症の影響で家賃収入が落ち込んだり、テナントから解約を申し込まれたりするケースが増えてきました。資金繰りの改善は、不動産オーナーにとって急務と言えます。今回は、赤字対策として使える固定資産税納税の猶予制度と、減免制度について説明します。

コロナ禍とリモートワークの増加でテナント収入が激減

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(画像=Petinov Sergey Mihilovich/Shutterstock.com)

2020年4月7日に発せられた緊急事態宣言によって、飲食店は休業、あるいは営業時間の短縮を余儀なくされました。また、感染拡大防止のためにリモートワークに切り替える企業が急増しています。中には「もう事務所はいらない」と判断し、賃貸契約を解除する会社も出てきました。

テナントの休業や契約解除は、不動産オーナーの赤字に直結します。支出が減少すれば痛みは和らぐかもしれませんが、賃貸業の経費には固定費が多いため、簡単には支出を減らせません。しかし現在、コロナ禍による経済悪化を配慮した政策によって、固定費を調整できるようになっています。

固定資産税・都市計画税を2つの対処で軽くしよう

最初に対処すべき固定費は、固定資産税・都市計画税です。固定資産税・都市計画税は、市区町村(東京23区内は東京都。以下同じ)が計算して納税額が自動的に決まるため、納税者が節税する余地はほとんどありません。

しかし、コロナウイルス感染拡大防止措置が取られている今、納税者自らが手続きをすることで、今年の納税を先送りしたり、来年の納税額を減らしたりすることができます。

対策1:2020年度の固定資産税・都市計画税の納税の猶予

不動産オーナーの目下の課題は、2020年度の固定資産税・都市計画税です。これについては、以下の要件を満たせば、納期限を1年延長できます。もしくは、猶予期間に分割での納付も可能です。ただし、賃貸物件がある市区町村で手続きをする必要があります。

対象者

以下の2つのうち、両方の条件に合致する全ての事業者が対象です。

・2020年2月から2021年1月までの任意の期間(1ヵ月以上)の賃料収入が、前年同期に比べておおよそ20%以上減少した
・一括で納税するのが難しい

手続き

手続きには申請書の他、収入が減少したことがわかる書類(試算表や帳簿、預金通帳など)が必要です。ただし納付期限のタイミングによって、手続きの期限は以下のように変わります。手続きをする前に、市区町村に問い合わせをするといいでしょう。

・2020年6月30日以前に納付期限が到来するもの…6月30日
・2020年6月30日より後に納付期限が到来するもの…納付期限

対策2:2021年度の固定資産税・都市計画税の減免措置

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、2021年の納税にも影響する可能性があります。

2021年1月31日までに手続きをしておけば、来年の固定資産税・都市計画税を0円または半分にすることができます。ただし、手続きの1つである「経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)の受付・確認」が2020年5月に始まる予定のため、実際に申請手続きが行えるのは5月下旬から6月上旬以降になると見られます(2020年5月7日現在)。

対象者

対象となるのは、以下の要件に該当する個人と法人です。後述しますが、賃貸料収入が前年同期に比べて30%以上減少していることも条件となります。対策1の納税猶予に比べて対象者は絞られますが、多くの不動産オーナーは該当するでしょう。

【個人】
従業員数が1,000人以下の個人事業主

【法人】
資本金・出資金が1億円以下の法人
資本金・出資金がない法人は従業員数が1,000人以下であること

対象資産

固定資産税・都市計画税の対象となるのは、事業用家屋や償却資産です。土地や借地権は、減免の対象になりません。また、個人の自宅用物件も対象外です。自宅兼賃貸事業用の物件は、賃貸部分のみが減免の対象になります。

減免の要件

2020年2月〜10月までの任意の3ヵ月間の賃貸料収入が、前年同期に比べて30%以上落ち込んでいれば固定資産税・都市計画税が減免されます。

・半分減額か、全額免除か
「固定資産税・都市計画税の半分が減額されるのか、それとも全額が免除されるのか」は、前述の任意3ヵ月間の賃貸料収入の減少割合によって、以下のように決まります。

30%以上50%未満…半分減額
50%以上…全額免除

手続き

納税者単独で手続きが行える納税の猶予と違い、認定支援機関の確認を受けてから手続き進めます。認定支援機関とは、国が中小企業庁を通じてお墨付きを与えた専門家(中小企業の支援を行う税理士・司法書士といった士業など)のことです。具体的には、以下の順で手続きを行います。

1.認定支援機関に以下の3つの事項を確認してもらう

・中小事業者等であること(登記簿謄本や誓約書などで確認)
・2020年2月~10月までの任意の連続3ヵ月間で、前年同期に比べて収入が減少していること(会計帳簿で確認)
・事業用割合(確定申告書や青色決算書・収支内訳書で確認)

2.認定支援機関から発行された確認書を持参して市区町村で減免申請を行う

この他、今回のコロナショックにより水道光熱費も猶予の対象になっています。先延ばしできる支払いはできるだけ先延ばしし、資金繰りを改善しましょう。

※こちらの記事は2020年5月1日時点での情報を元に執筆しております。(提供:YANUSY

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