長らく続いてきた原油取引において2020年4月に史上初の「WTI原油先物のマイナス価格」という出来事が起きました。しかし原油価格がマイナス価格とはどういったことなのでしょうか。これは「原油を買ったら現金も受け取れる」というもので従来の原油価格に対する常識からは考えられないことです。昭和時代に発生した2度のオイルショックはいずれも原油価格の高騰がもたらしました。
原油価格の高騰に伴い多くの人たちが不利益を被りましたが、原油がマイナス価格になった場合は、どのようなことが発生するのでしょうか。史上初のマイナス価格のため「今のうちに買っておけば将来価格が上がったときに大きな利益を手にすることができるのではないか?」と考えている人もいるかもしれません。
そこで本記事では「原油のマイナス価格は買いなのか」「買いであればどのように投資すれば良いのか」について解説します。
原油先物価格が史上初のマイナス価格になった理由
そもそも歴史的に売り手市場であることが当然のように認識されてきた原油が、なぜマイナス価格になったのでしょうか。これには以下のような相関関係と理由があります。
- コロナショックにより世界中で航空機や自動車の移動が激減し原油需要も激減した
- 需要激減により貯蔵施設内の在庫が飽和してきた
- 原油先物5月限の受け渡し期日が迫るが在庫過剰で買い手がいなくなった
- 投機的な先物買いをしていた大口投資家が受け渡し日の直前に「お金を支払ってでも受け取ってほしい」と投げ売りをした
ここで重要なのは、マイナス価格なったのが「5月限の原油先物」であったことです。先物取引の主なプレイヤーたちはそもそも需要家ではなく投機的な売買をしていただけなので受け渡し日になっても現物を受け取ることができません。こうしたプレイヤーたちが売り先に困り投げ売りをしたのがマイナス価格の大きな理由です。
その後も6月限、7月限といった原油先物が取引されていますが、期日は先なので2020年5月14日時点では25米ドル近辺で取引されています。しかしこの「25米ドル近辺」というのも長期チャートで見ると決して正常値ではなく歴史的な安値は継続中です。
原油は経済に必須のエネルギー!これだけ安いと「買い」なのでは?
「原油価格が歴史的な安値であったとしてもそれは一時的なもの」「コロナショックによる需要の激減から回復すると原油は経済に不可欠な資源のため必ず値を戻すはず」という考え方があります。コロナショック発生前の2020年1月上旬は60米ドル近辺で推移していたことを考えると、もし25米ドルで買って60米ドルで売った場合は単純計算で2.4倍です。
この考え方はもちろん間違いではありませんが再び需要激減によってマイナス価格になる可能性はゼロではありません。しかも原油先物5月限の異常な安値が一時的なものであれば原油先物6月限以降の原油先物が25米ドル近辺より上昇してもおかしくないはずです。原油投資は中長期的に見ると大きな利益が期待できる魅力があります。
しかし短期的に見ると依然として下落圧力が強い傾向です。そのため個人投資家は「下」のリスクを意識しながら少しずつ投資する慎重なスタンスが求められるでしょう。
個人投資家が今すぐできる原油投資の方法3選
「原油を買う」といっても具体的にはどうすれば良いのでしょうか。個人投資家が取り組める原油投資の具体的な方法を3つ紹介します。
- 1 原油CFD取引
- 2 原油連動型ETF
- 3 石油メジャー株
1 原油CFD取引
CFDとはContract for differenceの略で「差金決済取引」と呼ばれる投資商品のことです。CDFを利用することでさまざまな商品や指数に投資をすることができます。一部の証券会社では原油先物のCFD取引ができるため、取り扱いのある証券会社の口座を活用すれば最も直接的な投資が可能です。ただしマイナス価格になるなど相場の急変動による影響をそのまま受けるため、ハイリスクという点は留意しておきましょう。
2 原油連動型ETF
証券取引所に上場されているETF(上場投資信託)の中に原油価格と連動する銘柄があります。例えば日本国内の銘柄の場合、WTI原油先物価格連動型上場投信<1671>やNEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信<1699>などです。これらはETFなので証券会社の口座から株式と同じように売買ができます。
ただし原油先物は毎月限月が切り替わるため、継続して保有できるETFとして運用することは難しく連動型とはいっても連動性が低くなる可能性がある点は注意が必要です。一方でETFは受け渡し日を意識する必要があまりなく長期的な視野で原油投資をするのに適しています。
3 石油メジャー株
石油メジャー株とは、世界的な石油関連企業の株式ことです。世界の石油流通の大部分を少数の石油メジャーが握っているため、これらの企業の株価は原油価格との連動性が高いという特徴があります。例えば海外ならニューヨーク市場のBPやエクソンモービル、ロンドン市場のロイヤル・ダッチ・シェル、といった銘柄です。
国内でいえばコスモエネルギーHD<5021>や国際石油開発帝石<1605>なども原油価格との相関性が強い企業といえるでしょう。こうした企業の株価は原油価格低迷に伴って下落しており相関性が続くのであれば原油価格の回復とともに株価の上昇が期待できます。石油メジャー株の中でも欧米の市場に上場されている銘柄を取引するには海外株式の売買が可能な証券会社の口座が必要です。
原油投資の方法は現物から先物などリスクが大きく異なる
原油は地球上の限りある資源であり今後も世界中で需要が見込まれるものです。そのためコロナショックに伴う原油価格の暴落で注目している人もいるでしょう。ただ原油投資といってもCFDのようなリスクが高い先物取引からETFや石油メジャー株など現物取引までリスクは大きく異なります。ボラティリティの高い相場は短期的な投資に向いていますが、損失も大きくなりかねないため注意が必要です。
コロナショックの緩和状況など世界情勢の動向が大きく影響するため情報収集を日々チェックしながら適切なタイミングを見出すこと重要でしょう。(提供:YANUSY)
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