(株)原田武夫国際戦略情報研究所 羽富宏文

 大手IT企業が上場する米ナスダック。昨今のコロナによるリモートワークでオンライン会議システムのズーム・ビデオ・コミュニケーションズのナスダック指数は今年に入り倍になったと日経新聞が報じている。4月以降の株高局面では特に人気が高まり、ズームがコロナ流行による打撃が比較的小さい企業との見方が強まったためだ。

原田武夫国際戦略情報研究所
(出典:ZOOM

 在宅勤務開始前を起点にすると、オンライン会議が大幅に増えたこと、更にテレワークの増加によりズームの利用は去年と比較して 700パーセントと大幅に増加しているのだ。 こうしたことから、データの通信量の急増に対応すべく「データセンター」を拡充する動きが強まっており、それに伴って DRAM、NANDなどのメモリの需要が増えてきている。NAND は韓国のサムスンが最も強く、日本では東芝から分社化したキオクシアも得意としている分野だ。ちなみにキオクシアは世界初のNAND型フラッシュメモリを1987年に発明している。サムソンもキオクシアそれぞれ、新鋭工場を増設する動きがある。キオクシアはNAND メモリを増産するために三重県四日市市に2022 年末の完成を目指して工場増設を発表している。

世界に目を向けると、時価総額最大の台湾積体電路製造(TSMC)は常に注目すべき企業である。劉徳音董事長は9日の年次株主総会で中国の華為技術(ファーウェイ)と取引が停止しても他社からの受注で補えると発言。米中対立の深まりによる収益悪化懸念が和らぎ市場も反応している。

日本株も短期的な連騰がしばらく続くとみられるが、夏場(8月)にかけてのじり高が期待できなければ秋頃には通常レベルではない下げがあるかもしれない。ポスト・コロナにおける緩和バブルの「押し目」は浅いと考えた方が良いのかもしれない。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

(株)原田武夫国際戦略情報研究所 羽富宏文
中央大学文学部哲学科卒業。2019年まで日本放送協会(NHK)・東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYOMX)・株式会社テレビ神奈川(tvk)に在籍。 各局に在職中は主に報道部門でディレクター・記者としてニュース取材・番組制作に携わる。2014年からはノンフィクション書籍を定期的に出版。2019年11月より現職(グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー)。