(本記事は、水上克朗氏の著書『50代から老後の2000万円を貯める方法』アチーブメント出版の中から一部を抜粋・編集しています)
「年金」で安心を手に入れる①
年金は結局いくらもらえるのか?
年金は原則65歳からもらえます。受給開始年齢に達する3ヵ月前に、日本年金機構より案内が送られてきます(「年金請求手続きのご案内」と「年金請求書」)。
年金は、国民全体が加入する国民年金(受給時には基礎年金と呼ばれます)と、収入に応じて変わる厚生年金の2階建てで構成されています。実際にいくらもらえるかというと、
- 会社員や公務員だった方…厚生年金(共済年金は厚生年金に一本化)があるので、年額平均約173万円。
- 個人事業主や厚生年金の加入歴がない方…年額平均約67万円。
この金額を終身受け取れます。ただし、金額はあくまでも男女平均です。自分の年金額は、毎年、誕生月に、日本年金機構から通常ハガキで送られてくる「ねんきん定期便」で確認してください。ハガキ裏面の「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」に記載されています。
ねんきん定期便を見るときの注意点は、50歳以上の人には、60歳まで同じ働き方、給与水準のまま働き続けると仮定して計算した見込額が書かれています。一方、50歳未満の人には加入実績をもとにした年金額が記載されています。これは今まで払い込みをした金額から算出された受け取れる年金額です。あまりにも少額で驚くかもしれませんが、50歳まで納めてはじめて将来受け取る年金見込額がわかります。
日本年金機構のホームページ(ねんきんネット)に登録すると、受け取れる年金の見込額を試算したり、年金加入履歴を確認できます。
なお、「ねんきん定期便」には載っていないものでは、「加給年金」「振替加算」「厚生年金基金による代行部分」があります。
たとえば夫(厚生年金に20年以上加入)が、65歳から年金を受ける際、年下の妻(妻の厚生年金加入期間が20年未満など一定期間を満たす場合)がいたら、妻が65歳になるまで、「加給年金」という加算を受けることができます。また、妻が65歳になると、加給年金はなくなり、今度は妻が基礎年金とともに「振替加算」を受け取ることになります。こちらは一生続きます。具体的には、年金事務所に問い合わせて確認しましょう。
また、国民年金を満額受け取るテクニックとして任意加入制度があります。大卒(22歳)から定年(60歳)まで勤め上げたとして38年間です。
国民年金の満額支給には40年間の加入が必要なので、たとえば、再雇用で厚生年金からもしも外れてしまった人などは、2年間分の保険料を払うことで満額受給できます。65歳以降に受給する年金額が年間4万円ほど増えます。
2年間分の保険料は約40万円(= 19 万8480円×2年)かかりますが、65歳から年金を受け取って10年で元が取れる計算です。仮に85 歳まで生きたとすると、約40万円トクすることになります。
国民年金は有利な投資とも言えるのではないでしょうか。国民年金は、財源の半分が税金で賄われています。任意加入や追納(免除などの承認を受けた期間の保険料をあとで納付する)などで40年満額に近づけましょう。
なお、仮に、夫が平均的なサラリーマンで、妻が専業主婦だった場合、年金は、年平均約264万円(夫年平均約197万円+妻年平均約67万円)。30年間で、総額約8000万円を受け取れることになります。もし妻が働いていて厚生年金に加入していたとすれば、この金額はもっと大きくなるでしょう。つまり、意識し工夫することで「老後1億円の用意」も夢ではなくなります。必ず年金額は確認しましょう。
※ 厚生労働省「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
「年金」で安心を手に入れる②
「繰り下げ受給」で年金を増やせる
年金の受給時期は、希望すれば60~70歳の範囲内で、いつ受け取るかを自分で決めることができます。これを繰り上げ受給・繰り下げ受給といいます。
国民年金では、繰り上げ受給を18・8%、繰り下げ受給を1・7%の人が利用しています(※)。年金を早く受け取りたいと考える方が多いということです。
では、繰り上げと繰り下げ、どちらがお得なのでしょうか?
基礎年金(令和2年度)は65歳から78万1700円/年(満額受給)です。これをベースに比較していきましょう。
お得な受け取り方は「繰り下げ受給」
繰り上げ受給の最大のメリットは、なんといっても早く年金を受け取れることです。その代わり、1年繰り上げるごとに受給額が0・5%減ってしまいます。
最速(60歳)で年金を受け取ると、54万7190円/年を終身もらえます。満額支給の30%減です。損益分岐点は76歳8ヵ月なので、それ以上長生きすると金額的には損になります。その他のデメリットも必ず確認してください。
一方、最大(70歳)まで繰り下げると111万14円/年をもらえます。これは満額支給の42%増です。損益分岐点は81歳10ヵ月なので、繰り下げ需給は82歳まで長生きすればお得になります(図参照)。
65歳からの平均余命(平均寿命とは異なります)は男性約20年、女性約24年ですから、65歳まで生きれば、男性は85歳、女性は89歳まで生きる可能性が高いわけです。お得な受け取り方は繰り下げ受給となります。
また、基礎年金と厚生年金の両方を繰り下げることも可能です。たとえば、65歳から受け取れる厚生年金と基礎年金の合計額が年200万円だとします。70歳からの年金額は42%増で、年284万円となります。増額分は、年額84万円です。
ただし、繰り下げ受給もデメリットがいくつかあります。代表的なものとして「加給年金」が繰り下げ期間中は受け取れないことが挙げられます。
「加給年金」とは、いわば年金の「家族手当」のようなものです。条件を満たせば厚生年金に加算して、年金を受給できます。繰り下げ受給をすると、この加給年金が受給できなくなってしまうのです。仮に妻が3歳下なら、トータル3年分で、約117万円(=39万900円×3年)受け取れなくなります。
1957年山梨県生まれ。慶応義塾大学卒業後に大手金融機関で40年間勤務し、14回の部署異動、11回の転勤、11年間の単身赴任、二度の会社合併を経験したが「会社一筋一社の人生」を貫く。56歳のときに執行役員待遇から社外出向となり、収入が激減。同じタイミングで家族の病気が悪化、実家の父親は認知症で2年半の介護状態。母親も老老介護で疲れ果て胃がんで3ヵ月の余命宣告。両親が立て続けに他界し、ダブル相続にも直面した。ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、自身のライフプランを見直して老後資金を捻出。専門雑誌のコラムや講演活動で50代から同世代のリタイア世代にエールを送る。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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