(本記事は、世古口 俊介氏の著書『1億円貯める月1万円投資術』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)

「老後2000万円問題」の真実

1億円貯める月1万円投資術
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

2019年、金融庁の「市場ワーキング・グループ」により公表された報告書「高齢社会における資産形成・管理」が大きな物議を醸しました。「老後2000万円問題」です

報告書の内容は、「年金だけでは老後資金を賄(まかな)うことができないため、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要になる」というもの。

そもそも年金制度が発足した1961年当時、「100年安心」「手取り収入50%確保」と謳(うた)っていたはずが、100年どころか60年も経たないうちに「年金だけでは老後資金を賄うことができない」というのですから、国民がショックを受けるのも当然です。

しかし残念なことに、この報告書はあながち間違いではありません。

定年退職後の主な収入源となる年金支給額は、現在、平均月額19万円です。しかし、総務省が公表している「家計調査報告(家計収支編)―平成29年(2017年)平均速報結果の概要―」によると、60~69歳の一般的な夫婦の平均消費額は月24万円。つまり、毎月5万円もの赤字が生じます

もし仮に65歳で引退し2000万円の貯蓄があったとしても、単純計算で100歳までにはお金が尽きてしまうのです

60歳夫婦の平均貯蓄額は2000万円より少ない1800万円前後だと言われています。平均で足りなくなるということは、日本人の半分以上の人の老後資金が足りなくなるということです。

生活を切り詰めるとか、老後も働くとか、もちろんそういった選択肢もあります。

しかし、もしあなたがお金の心配を一切することなく、本当に悠々自適な老後を過ごしたいと願うのであれば、2000万円ではまったくお金が足りないのです

何もしないことが実は最大のリスク

今後、日本という国の財政が破綻する可能性が一切なく、政府が老後資金問題に対する盤石な布陣を敷き、自分の老後についてきちんと面倒を見てくれるという確信が持てるのであれば、これまで通り円預金だけで運用を行っていてもいいと思います。

しかし、そんな保証はどこにもありません

1990年代初頭に起きた日本のバブル崩壊から、日本経済は「失われた20年」と呼ばれる長い停滞期に突入しました。2012年から始まったアベノミクスにより、一時は円安が進み、株価も上昇しましたが、GDPの成長率は一向に伸びていません。

そのような経済状況下にありながら、2019年10月には消費税率10%への引き上げが強行されました。この消費増税により、私たち日本国民にのしかかる経済的な負担は言わずもがな、消費や景気の冷え込みによる日本経済そのものへのダメージすら懸念されています。

もし仮に日本の財政が破綻するようなことがあれば、あなたがこれまで一所懸命働き、生活を切り詰めてコツコツと貯めてきた円預金は紙くず同然となります。「人生100年時代」を生き抜くためには、多少のリスクを取ってでも何か行動を起こしていかなければ自分の生活を守ることはできません。

何も行動を起こさずただ預貯金だけで老後資金を貯めることは、実はもっともリスクの高い行動であると心得なければなりません

1億円貯める月1万円投資術
世古口 俊介
株式会社ウェルス・パートナー代表取締役。1982年三重県生まれ。大学卒業後、2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社。三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイス銀行(クレディ・スイス証券と兼職)のプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして最年少でヴァイス・プレジデントに昇格し、2016年5月に退職。2016年10月に独立系の資産運用コンサルティング会社、株式会社ウェルス・パートナーを創業し、代表取締役に就任 。

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