新型コロナウイルス流行による相場の変動がめまぐるしい。大きく下げたかと思うと、急激に回復の動きを見せている。このような状況下でiDeCo投資家が取ってしまいがちなNG行動とは何か。積立投資であるiDeCoの投資原則をもう一度立ち止まって確認しよう。
コロナショックで金融市場は乱高下の様相を見せている
新型コロナウイルスをめぐり日本を含む世界の株式市場は大きく変動した。中国の武漢市で原因不明の肺炎患者が確認されたのが2019年12月、日本国内初の感染者は2020年1月16日だが、その頃はまだ市場は冷静だった。大きく下げ始めたのは2月の下旬、全国の学校の一斉休校が決定された時期だ。2月6日は2万3995円を付けていた日経平均株価は2月下旬から3月中旬まで下げ続け、3月19日には1万6358円にまで落ち込んだ。
その後WHO(世界保健機関)のパンデミック認定や日本政府の緊急事態宣言を経るものの株価は大きく盛り返し、6月9日には2万3185円にまで回復している。ただ6月11日にはNYダウ平均の下げ幅は1861ドルに達し、翌日の東京市場でも日経平均株価の下げ幅が一時600円を超えるなど、乱高下の様相を見せている。
リーマンショックの時の株価は一気に下げて時間をかけて回復したが、今回のコロナショックは短期間に極端な下げと反発という経過をたどっている。秋にはコロナウイルス感染拡大「第2波」も懸念されていることから、今後も不安定相場が続く可能性は十分にある。
iDeCo(イデコ)の新規加入者数はコロナ相場でも変わらない
そのような状態では、iDeCoやNISAの利用者も離れていくのではないかと懸念されるが、実態はそうでもないようだ。
4月のiDeCo(イデコ)新規加入者は約3.2万人
国民年金基金連合会が発表したiDeCo加入状況によると、4月の新規加入者は3万2189人で、前年同月とほぼ変わらない。例年4月と5月は新規加入者が少ない傾向があり、新型コロナウイルスに伴う不安等を考えると「老後に向けた投資どころではない」という心理が働くかと思いきや、底堅いニーズを感じさせる。
コロナ禍で株式や投資信託の買い増しを検討する投資家が多い
コロナ相場における投資家心理はどうだろうか。マネックス証券がおこなった新型コロナウイルス感染拡大に伴う投資家向け意識調査によると、1割が売却、3割が買い増しを検討しており、6割が静観という結果が出た。
内訳を見ると、売却して現金化を検討しているのは20代男性が多く、反対に株式や投資信託を買い増していくと回答しているのは30代~40代男性が多い。女性もやや控えめながら同じ傾向がある。「投資離れ」は意外と起きておらず、むしろ相場が下落し割安感が増したことで投資のチャンスととらえている人が少なくないようだ。
iDeCo(イデコ)投資家がコロナ禍でやってはいけない2つのNG行動
このような荒れ相場の中、iDeCo利用者はどのような行動に気を付けたら良いだろうか。
⑴iDeCo(イデコ)の資産を慌てて投げ売りする
積立投資をやっている人が株価暴落時にやってはいけないことは、思わぬ損失に驚いて売却してしまうことだ。
iDeCoやつみたてNISAのような非課税制度導入を機に投資を始めたという人も多いだろう。 そのような投資初心者にとって今回のような下落相場は精神的にきつい。損切りという名のもとに投げ売りをしてしまう人もいるだろう。
しかし、iDeCoのような積立投資においては安易な売却はおすすめしない。それは、積立投資が持つメリットを手放すことに他ならないからだ。
積立投資は毎月または定期的に対象商品を買い付ける投資方法だ。金額に上限があり運用益が非課税になるといった特殊要素はあるが、iDeCoは基本的に積立投資の一種である。
積立投資は「一定額」を定期的に買い付けていることがポイントだ。毎月2万円なら2万円分買えるだけ買う仕組みなので、基準価額が下がればそれだけ購入できる口数が増える。
低い価格で多めに仕入れたところで基準価額が再び上昇すれば、たとえ下落により損失があったとしても回復は早い。これを「ドルコスト平均法」という。ドルコスト平均法は長期積立によって効力を発揮するので、途中でやめてしまっては意味がない。
⑵iDeCo(イデコ)の拠出先をすべて定期預金にする
変動の激しい相場の中でこれ以上損をしないために、iDeCoの元本保証商品である定期預金に資金を避難させる方法がある。一見理にかなっているようで、実は一番やってはいけない行動だ。
iDeCoで定期預金を選択することには2つのデメリットがある。1つは損失を固定することだ。今回のコロナ相場のように底を付けてから急激に回復した場合、損失は短期で解消されうまくいけばプラスに転換することもできる。しかし定期預金は株価上昇の恩恵を受けられないため、被った損失はそのまま残る。
さらに手数料の問題もある。iDeCoは通常の証券口座とは異なり管理手数料が発生する。金融機関ごとに金額は異なるが、運用期間中にかかる費用は年間2,052円~7,548円だ。これを超える運用益を得なければiDeCoは元本割れということになるが、定期預金金利で手数料を超える運用益を得ることは不可能に近い。iDeCoでの運用益が非課税になることも考えると、やはりある程度のリスクを取ってリターンを狙っていきたい。
iDeCo(イデコ)投資家がコロナ禍でやるべき行動は生活資金のチェック
iDeCoの長期積立投資はできるだけ継続する。iDeCoを全額元本保証商品につぎ込まない。
平時でもコロナ相場でも、iDeCo投資家が取るべき投資行動にはほとんど違いはない。あるとしたら家計収入の変動に対してiDeCoの投資額が適切かどうかチェックするくらいだ。
iDeCoは60歳まで資金を引き出せない。この半強制的な性質が堅実な資産形成に役立つのだが、自粛要請によって家計収入に影響があった場合、これまで通りのiDeCoの拠出金額で問題がないかどうかの確認が必要になってくる。どうしても家計が苦しければ、その時はじめてiDeCoの掛金の減額や停止を検討してみても良いだろう。
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
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