株式投資は預金にはない魅力があるが、初心者が注意しなくてはいけないこともいくつかある。リスクを低減させるための鉄則や、銘柄選びのコツなど、株式投資を始めるにあたって、覚えておきたいことを紹介していこう。

株式投資の3つの魅力 売却益、株主優待、配当金

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(画像=Gorodenkoff/Shutterstock.com)

まず把握しておきたいのは、株式投資で得られるメリットだ。預貯金にはない株ならではの魅力は3つある。

魅力1,売却益が得られる

保有する株式を買ったときより高く売却できると、売却代金から購入代金を差し引いた差額が利益として手元に残る。この利益は「売却益」または「キャピタルゲイン」「譲渡益」と呼ばれている。

簡単な例(取引手数料や税金を考慮しない)を挙げると、株価1,000円で100株購入すると購入代金は10万円。株価1,100円で保有する株すべてを売却すると売却代金は11万円。したがって、売却益は、「11万円-10万円=1万円」になる。

魅力2. 株主優待がもらえる

株主優待制度とは、株式を保有する株主に対して、株式会社が保有株数や保有年数に応じて、自社製品や割引券、特産品などを中間または決算期末に贈呈する制度のこと。株式を保有している株主への感謝や自社製品のプロモーションの意味をもつ。

株主優待は任意の制度であるが、国内上場会社4,170社のうち、株主優待制度を設けているのは1,538社、およそ37%の企業がこの制度を導入している。(※2020年3月19日時点)

魅力3. 配当金がもらえる

配当とは、株式会社が事業で得た利益の一部を「配当金」として株主に還元することだ。配当金は中間期末、もしくは決算期末に株式を保有する株主に対して、保有する株式数に応じて配分される。

配当金は利益を源泉として分配されるので、毎年同額の配当金が支払われるわけではない。利益が多く出た年には配当金が増額されたり、会社の設立記念の年などは、特別配当や記念配当が上乗せされたりすることもある。また、赤字決算の年は配当金が支払われない、または配当金が減額されることもある。

株式投資の3つのスタイル 割安株、成長株、低位株、どれを狙うか?

株式投資のメリットがわかったら、次はどのような目的で株式投資をするかを掘り下げて考えたい。投資初心者がチャレンジしやすい株式投資のスタイルとしては、以下の3つが考えられる。

1.割安株投資
2.成長株投資
3.低位株投資

それぞれの株式投資手法について、どのような手順で進めるのか、その手法の目的は何か、また期待される効果は何かなどを以下で解説する。

スタイル1,割安株投資=バリュー投資――好業績だが株価が安い銘柄に投資

好業績で資産内容も良好なのに、それが株価に反映されておらず割安である銘柄(割安株、バリュー株)を選んで投資する手法だ。米国の有名な投資家ウォーレン・バフェット氏の「バリュー投資法」がこれに当たる。

割安株投資には、「今は株価が安くても、市場がこの会社の業績や資産内容を適正に評価するようになれば、株価は上がるはず」という考えがある。つまり将来の株価上昇を見越して、売却益で稼ぐことを目的とした中長期の投資手法だ。

割安株銘柄を見つけるには、投資候補となる企業の健全な財務状態や好調な業績の確認が欠かせない。これらに加えて、割安株を判断する指標のチェックも重要だ。

具体的には、対象企業のPER(株価収益率)が同業他社に比べて低い、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている、もしくは競合する企業のPBRより低い、などを確認することになる。

スタイル2,成長株投資=グロース株投資――今後の成長や株価上昇が見込める銘柄に投資

成長株またはグロース株と呼ばれる銘柄は売上高や経常利益を年々伸ばしており、今後の企業としての持続的成長と株価上昇を見込んで株価が高い。このような銘柄を選び出して投資するのが、成長株投資だ。投資金額はそれなりに必要になるが、企業の発展に伴う株価の大幅な伸びが期待できる。

成長株は、最先端の技術や革新的な技術、付加価値の高い特許を背景に、景気動向に左右されることなく今後も高い成長率を期待できる株であることが多い。次世代のサービスや事業を展開する新興企業なども成長株と言える。

成長株を探す際は、コストの圧縮で達成できる経常利益の伸び率以上に、事業の成長を反映した売上高の伸び率が大きい企業に注目するのがポイントだ。

企業の成長性がすでに株価に織り込まれているため、PER(株価収益率)が市場平均より高いことも特徴だ。それ以外にも、最近よく目にする商品やサービスを提供している企業や、投資効率を測るROEが高い企業も成長株投資の対象になる。

スタイル3,低位株投資――少額投資でも利幅が大きくなる株価水準が低い銘柄に投資

「低位株」に明確な定義はないが、一般的には1株が500円未満、単位株(100株)あたりの投資金額が5万円以下になるような株価水準が低い銘柄が低位株と考えていいだろう。このような銘柄に絞った投資手法が低位株投資だ。

低位株は、あまり注目されていないため取引量が少なく、値動きも少ない。業績好調であるが株価が安い割安株と違って、赤字続きという企業も多い。株価水準が低いので、低位株の企業に関するニュースが報道されると、株価が短期間で上下に大きく変動する。

新商品の発表で一気に株価が跳ね上がったり、逆に上場廃止や倒産の噂が流れたりすれば、株価が暴落することもある。

低位株投資では少額で単元株を購入できることが多いので、資金の少ない投資家でも取引しやすい。場合によっては、テンバガー(株価が10倍になること)銘柄に出会える可能性もある。

初心者が株式投資でしてはいけない4つのNG行動

銘柄選びをする際に、初心者が忘れてならないのは、株式投資に対する基本姿勢だ。株式投資による損失を最小限に抑える目的で、銘柄選びの段階以降「してはいけないこと」がいくつも存在する。

NG行動1. 多くの資金を一つの銘柄に投資する

リスクが伴う株式投資では、リスク分散は基本だ。一つの業界、一つの銘柄だけに資産を集中させず、投資先や時間などを分散させて投資したい。

株式の分散投資三大原則は「資産の分散」「地域の分散」、そして「時間の分散」である。裏を返せば、この三大原則に則らない一つの銘柄や業界などへの集中投資は、ハイリスクなので最もしてはいけないことなのだ。

例えば、株式投資に回せる資金が120万円あるとする。以下の集中投資(1)、分散投資(2)の2パターンで、投資リスクの違いを確認しておこう。

(1)手持ち資金120万円全額を使って、A社の株を株価1,200円で1,000株購入する。

(2)手持ち資金120万円を使って以下の4銘柄を購入する。
・A社:株価1,200円×200株=24万円
・B社:株価900円×400株=36万円
・C社:株価600円×500株=30万円
・D社:株価500円×600株=30万円

ところが(1)、(2)のパターンで半年後に株式相場が暴落し、株価が以下のようになったとする。

・A社:株価1,200円→1,000円
・B社:株価900円→850円
・C社:株価600円→600円
・D社:株価500円→550円

この場合、(1)、(2)の資産価値はどのように変わるだろうか。

(1)半年後の資産価値は1,000円×1,000株=100万円となり、20万円もの評価損が発生する。

(2)半年後の資産価値は、合計117万円、3万円の評価損が発生する。
・A社:株価1,000円×200株=20万円
・B社:株価850円×400株=34万円
・C社:株価600円×500株=30万円
・D社:株価550円×600株=33万円

20万円+34万円+30万円+33万円=117万円

株式相場が暴落した半年後の資産価値を見るとわかるように、集中投資(1)と分散投資(2)では評価損に17万円もの開きが出てしまう。株価下落の影響は、分散投資より集中投資のほうがはるかに大きくなってしまうのだ。

NG行動2. 株価が下がっていても上昇を見込み保有し続ける

株価が上昇すると見込んで買ったものの、下落してしまう場合もあるだろう。初心者の場合、再度株価が上昇すると期待し長期間保有し続けてしまうかもしれない。しかし、回復の兆しが見えなければ、損失拡大を防ぐために思い切って売却する覚悟も必要だ。

事前に、「〇%下落したら損切りする」と決めておく、または「◯円以下の価格になったら売却する」という逆指値注文をうまく活用して、潔く撤退するようにしよう。

NG行動3. さまざまな手法に手を出す

初心者のうちは、良いといわれる投資手法を次から次へと試しがちだ。これではそれぞれの投資手法の本来の良さが発揮されず、損失が続いてしまう場合もある。

例えば、株式投資の初心者に比較的適しているといわれる金額指定による株式またはETFの「定期買付サービス」。ドルコスト平均法と時間の分散効果で投資リスクを軽減させる投資手法である。

定期買付は長期的に株価が上がっていくことを前提とした投資手法のため、数ヵ月では利益が出ない可能性がある。利益が出ないからといって、すぐに次の投資手法に乗り換えてしまっては損をすることもあるだろう。

NG行動4. 証券会社を比較せずに決めてしまう

株式売買は、取引所で行われるため売買価格は一律だ。しかし、取引手数料などは証券会社によって違いがある。複数の証券会社を比較して、最も良い条件の証券会社で取引する余裕を持ちたい。

例えば、低コストを証券会社選びの最優先事項に位置付けているならば、少なくともネット証券間で取引手数料を比較すべきだ。

株式投資一番の目的がIPOである場合は、各証券会社のIPO取扱銘柄数や抽選方法、抽選時の前受金の要不要など、各社のIPO取扱状況と自分の資金事情を照らし合わせてみよう。

将来的に投資信託や債券などの商品に投資する可能性があるかどうかによっても、選ぶ基準が変わってくる。

実際に、ネット証券大手のSBI証券、楽天証券、マネックス証券と、総合証券大手の野村證券(「野村ネット&コール」)と大和証券(「ダイワ・ダイレクトコース」)、計5社の取引手数料などを比較してみよう。証券会社ごとに手数料や取扱内容などに違いがあることがわかるはずだ。

<証券会社5社 手数料等比較一覧(2020年3月19日現在)>

  現物株式取引手数料
(税込)
2019年
4~12月
IPO
取扱
銘柄数 ※1
IPO

受金
国内
投信
取扱
銘柄数
つみたて
NISA
取扱投信
銘柄数
米国株
取引
手数料
(税込)
※2
単元
未満

取引
約定
代金
5万円
以下
10万円
以下
20万円
以下
30万円
以下
40万円
以下
50万円
以下
SBI
証券
55円 99円 115円 275円 62件 必要 2,657件 160件 0.495%
(0~20米
ドル)
楽天
証券
55円 99円 115円 275円 24件 必要 2,644件 156件 0.495%
(0~20米
ドル)
×
マネックス
証券
110円 198円 275円 385円 495円 34件 必要 1,178件 149件 0.495%
(0~20米
ドル)
野村
證券
152円 330円 524円 26件 不要 844件 7件 最大
1.045%
※3
大和
証券
最低手数料1,100円
約定代金×0.37950%
35件 必要 532件 20件 約定代金
100万円
までは
0.29700%
×
※1.2019年4月~2019年12月の期間
※2.現地約定代金に対する国内取引手数料の料率
※3.約定代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込)
※4.各証券会社の公式サイトを元に筆者作成

株の買いどきを見極めるための3つの代表的な指標 PER、PBR、ROE 株を買う前に注意しておきたいことについて解説したが、実際に株の銘柄を選ぶ際は何を判断基準にすべきなのだろうか。ここでは初心者でもわかりやすい買いどきを見極めるための3つの指標を紹介する。

PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)

企業の利益水準(EPS:1株当たり純利益)に対して、株価が割高か割安かを判断する指標。「株価÷1株当たり純利益」で求められ、株価が下がったり、純利益が増えたりすると下がる。

東証一部上場企業の単純平均PERは16.6倍、加重平均PERは14.9倍である(2020年5月末時点)。。このような直近の市場平均値を上回れば割高、下回れば割安と見なすことができるが、同業種の企業や経営内容が似ている企業とも比較するようにしよう。

PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)

企業の資産価値(BPS:1株当たりの純資産)に対して、株価が割高か割安かを判断する指標。「株価÷1株当たりの純資産」で求められ、株価が下落するか、純資産が増えれば下がる。

東証一部上場企業の単純および加重平均PBRは1.1倍である(2020年5月末時点)。これを上回れば割高、下回れば割安と見なすことができるが、PER同様に、PBRも同業種の企業や経営内容が似ている企業と比較して判断しよう。

ROE(Return On Equity:自己資本利益率)

株主の投下資本(前期と当期の平均自己資本)に対して、どのくらい利益を生み出しているかを示す指標。「当期純利益÷自己資本×100(%)」で求められる。配当能力を計る目安にもなることから、投資判断の材料として重要だ。

東証一部上場企業の平均ROEは7.64%(2020年3月期)なので、10%以上なら収益性が高く、投資価値があると考えられる。ただし、数年にわたって高い水準でROEを維持できているか、財務レバレッジ(自己資本に対する債務などの負債の割合)が高くなっていないかなど、多面的に確認する必要がある。

株式投資初心者が注目したい銘柄ランキングTOP10 パナソニック、野村、いすゞetc.

投資初心者が株を買う場合、

・PERとPBRが東証一部上場企業の平均値以下である=「割安」
・東証一部上場企業の平均ROE以上を維持できる体質=「収益性が高い」

という基準に加えて

・東証一部上場企業であること
・単元株あたりの投資金額が10万円以下であること
・1日あたりの売買代金が大きく、流動性が高い銘柄であること

を満たす銘柄を選ぶのがよいだろう。

投資金額が10万円以下というのは、株式投資に不慣れなうちは損失が発生する可能性も高いため、少額投資のほうがリスクを限定できるからである。

投資対象企業の倒産リスクが低いことや、流動性が高くて売買しやすいことは、保有する株式を希望するタイミングで確実に売却するために必要な条件である。東証一部上場企業、さらに代表的な株価指数採用銘柄であれば、この条件は必然的にクリアされる。

上述の条件を満たす銘柄にはどのような企業があるのだろうか。SBI証券の国内株スクリーナーを使って、東証一部上場企業の平均値やその他の条件で、実際にスクリーニングしてみよう。

(スクリーニングの条件)
・東証一部
・大型株、中型株、小型株
・採用指数は日経225、TOPIX100、JPX日経400
・すべての業種が対象
・PER(株価収益率)14.9倍以下
・PEB(株価純資産倍率)1.1倍以下
・ROE(自己資本利益率)7.64%以上
・5日間平均売買代金
・投資金額10万円以下

スクリーニングの結果、23社が抽出された。直近5日間の1日あたり平均売買代金を降順に並べ替えた場合の上位10社は以下のようになる。

東証一部上場の割安優良株ランキングTOP10

順位 銘柄名
(コード)
株価 PER
(倍)
PBR
(倍)
ROE
(%)
平均売買代金
/日
1 パナソニック
(6752)
926円 9.57 1.08 11.50 59億3,889万円
2 野村ホールディングス
(8604)
475.4円 7.02 0.54 8.20 58億3,133万円
3 いすゞ自動車
(7202)
954.2円 8.66 0.74 8.60 23億3,845万円
4 双日(2768) 235円 4.80 0.49 10.20 22億9,476万円
5 大林組(1802) 976円 6.19 0.86 14.30 22億2,718万円
6 清水建設(1803) 859円 6.69 0.90 13.60 16憶2,108万円
7 王子ホールディングス
(3861)
505円 8.59 0.72 8.50 13億5,537万円
8 三菱UFJリース
(8593)
510円 6.42 0.58 9.20 9億3,453万円
9 日本水産(1332) 468円 9.86 0.95 9.90 7億9,369万円
10 安藤・間(1719) 618円 7.32 0.88 12.5 4億4,196万円
※上記ランキング表の「株価」、「PER」、「PBR」は、2020年6月25日11時30分時点の株価を基準にしている

第1位:パナソニック<6752>――電池から住宅設備まで、モメンタムが高い優良企業

国内の総合家電大手であり、AV機器や白物家電が主力。電池、照明、住宅設備など、幅広い製品やサービスを提供している。アプライアンス社、ライフソリューションズ社、コネクティッド・ソリューション社、US社などのカンパニー制度を導入している。

2020年3月期連結業績は、国内でインフォテインメントシステムやパソコンは増収となったが、住宅関連事業の非連結化や新型コロナウイルス感染拡大の影響で減収に。海外でも、車載電池が好調にもかかわらず、車載機器やテレビの不振、円高、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、減収となった。

パナソニック製の昼夜対応サイドカメラが、トヨタ自動車<7203>の2020年2月発売新型「ヤリス」に搭載されたことや、750形の明るさで世界最小の埋込LEDダウンライトの2020年7月1日発売など、コロナ禍でも明るい材料のニュースも発表されている。

テクノロジー機器・家庭用電気製品メーカーの中でも、株価の安定性や高い収益性、割安性、株価モメンタム(投資家からの人気)の高い優良銘柄である。2020年6月25日現在の配当利回りは3.24%。無配だった2012年度の翌年以降は、順調に配当維持と増配を継続している。

第2位:野村ホールディングス<8604>――コスト削減や営業体制の見直しで黒字回復

国内証券業界最大手の野村證券を中心に、投資運用会社の野村アセット・マネジメント、野村信託銀行などの企業で構成される総合金融サービスグループである。

国内営業ではコンサルティングを重視した営業体制をとる一方で、信用取引の金利引き下げや手数料無料の投資信託販売でオンライントレードも拡充している。ビジネスポートフォリオの見直しや営業員の再配置、店舗の統廃合などによるコスト削減で、2020年3月期は増収増益となり黒字を確保した。米国では債券が好調、アジア地域にも重点を置いている。

投資銀行・証券サービス業界の中でも財務健全性に秀でており、割安性や収益性も良好な銘柄である。配当利回りは4.20%、業績に連動した配当を実施している。

第3位:いすゞ自動車<7202>――小型トラック市場では世界的に圧倒的優位

ディーゼルエンジンに定評のある商用トラックメーカー大手。国内の小型トラック市場第1位、普通トラックでも第2位のシェア。海外では、米国で小型トラックシェア第1位、タイをはじめとする東南アジアにも生産拠点や販売網を展開し、中国やインドにも販路を拡大している。

2020年3月期の業績は、国内では排ガス規制前の駆け込み需要により増収となった。海外では、タイでのピックアップトラック販売は増加したが、インドネシアでの販売停滞とタイ通貨高で、減益幅が拡大した。2021年3月期も東南アジアの景気減速やタイの新車市場縮小で、販売台数が伸び悩む見込み。

ボルボとの戦略提携と、2020年末のボルボ傘下UDトラックス買収計画は好材料。収益改善につながることが期待される。2020年3月期決算で、重要拠点であるタイでの生産減少など、悪材料が出揃ったと判断され、決算発表後は株価が続伸した。

配当利回りは3.95%(2020年6月25日現在)、配当は右肩上がりに増えている。財務健全性と割安性に優れているのが特徴。

第4位:双日<2768>――ニチメンと日商岩井が母体の商社、自動車・航空・肥料に強み

かつてのニチメンと日商岩井が統合して誕生した総合商社。自動車や資源が主体であり、航空機や肥料にも強みをもつ。

2020年3月期の連結業績は発電業界が堅調ながら、後期に入ってから石炭価格が下落し、アルミやニッケルなどの非鉄事業も失速。合成樹脂もアジアで数量減。加えて、自動車事業も低迷し、結果として減収減益となった。2021年3月期も石炭や自動車などの非資源事業の環境は厳しく、業績回復は難しい見込み。

2020年6月25日現在の配当利回りは7.20%。東証一部上場銘柄の中でも上位に入る高配当利回り銘柄である。2010年から10年間、減配することなく配当維持もしくは増配を続けているのも特徴。株価の変動幅は小さく、割安な銘柄として評価されている。

第5位:大林組 <1802>――関西発祥の大手ゼネコン、大型案件続き、中長期的にも増益期待

関西発祥の最大手ゼネコンの1社。首都圏でも大型都市開発などで実績がある。トンネル建設に強みをもち、不動産開発も手掛けており、海外にも事業を展開している。

2020年3月期の連結業績は、国内建築事業の完成工事高や土木の追加工事で、売上高が伸びた。

2021年3月期は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を検証中のため、業績予想は未公表であるが、建築事業では大型再開発案件が増益に貢献する見込み。

東北の大型洋上風力発電計画に着手しており、早期事業化を目指している。KDDIやNECと協働で、5Gを活用した道路造成工事にも着手。中長期的には、東京オリンピック後の国土強靭化や、老朽化したインフラの大規模改修などが控えており、売上げの伸長が期待される。

ROEは14.3%であり、高い利益率を誇る優良企業。2020年6月25日現在で配当利回りも3.25%と高く、連続増配実施企業でもある。

第6位:清水建設<1803>――高配当、高ROEの優良企業、自社製品贈呈の株主優待も

民間建築中心の総合建設業大手。伝統建築や社寺には定評がある。地域開発から海洋開発、宇宙開発まで、幅広い分野の技術をもつ。幕張メッセや東京アクアラインのトンネル部、海ほたる、JR博多シティなど、大型案件の実績も豊富。

2020年3月の連結業績は、完成工事高や開発事業の伸長などで増収となった。さらに、工事採算の改善、開発物件の売却効果によって、大幅な増益を確保した。

ROE13.60%という高い利益率を維持している。配当利回りが4.42%の高配当企業であり、近年は配当維持もしくは増配を継続している。自社オリジナル商品贈呈の株主優待もある。

第7位:王子ホールディングス<3861>――国内市場が主力、海外市場拡大に期待感

1873年創立の国内製紙業最大手。1949年に前身の苫小牧製紙として設立された。生活産業資材を中心に、機能材や資源環境ビジネスなども展開している。国内売上高は全体の約7割を占める。アジアや南米などの海外成長市場で、事業規模を拡大している。

2020年3月期の連結業績では、売上高は減収、営業利益も減益となった。2021年3月期も減収減益の予想であるが、海外事業拡大による業績貢献に期待がかかる。

安定的な配当を実施しており、2020年6月25日現在の配当利回りは2.79%である。

第8位:三菱UFJリース <8593>――増収・増益で業績好調の連続増配銘柄

三菱UFJグループのリース業大手。日立キャピタルとの資本業務提携や、M&Aなどによって積極的な海外事業展開も行っている。

2020年3月期の連結業績は概ね好調であり、売上高は前年比6.88%の増収、営業利益は2期連続の増益となり、2期平均15.85%もの高い増益率を打ち出した。

長期間にわたって連続増配を継続している企業でもあり、2021年3月期も増配を期待できる。配当利回りが4.86%の高配当銘柄である。

第9位:日本水産 <1332>――安定配当と、500株以上保有でニッスイ製品の株主優待も

基幹事業は漁業から、養殖生産、販売まで手掛ける水産事業。食品事業では、国内市場向けに冷凍食品をはじめとする広範な加工食品を生産販売している。水産資源由来の機能性素材を供給するファインケミカル事業、および低温一貫物流に取り組む物流事業なども行っている。

2020年3月期は、南米の養殖事業と国内食品事業の冷凍食品や加工食品の売り上げが好調であったが、水産事業で漁獲減や魚価下落に見舞われて、連結業績は減収減益となった。無配となった2012年度と2013年度を除いて、業績に見合った安定的な配当が実施されており、直近6年間は配当維持か増配を継続している。配当利回りは1.81%。

500株以上の株式を保有する株主に対しては、3,000円分あるいは5,000円分の自社製品詰め合わせを贈呈する株主優待も実施している。

第10位:安藤・間<1719>――ROEや配当利回りの高さが魅力、土木に強いゼネコン大手

ダムやトンネルといった大型土木を得意とする建設総合大手。2013年に建築が主力の安藤建設を吸収合併して現在の形になった。

2020年3月期の連結業績は、業績が落ち込んだ2019年3月期に対して売上高と営業利益、ともに増収増益となり、当期純利益も大幅に改善した。2021年3月期はトンネルやダムといった土木事業は順調であるが、前期の受注低迷による建築の完工減が減益につながると予想される。

ROEは12.5%で利益率が高い。安定配当を継続しており、配当利回りが4.87%の高利回り銘柄である。

初心者でも少額で始められる株式投資サービス3選 銘柄選びの基本を紹介してきたが、株式投資を始めたばかりの頃は、資金が不足している、あるいは投資知識が不十分である場合も少なくないだろう。そのような初心者にとって、本格的な株式投資の予行練習にもなるのが、少額で株式投資できるサービスだ。

以下に紹介する低額取引サービスを利用することで、値動きを体感しながら株式投資のノウハウを段階的に学んで、本格的な株式投資に備えてはどうだろうか。

サービス1,単元未満株取引――1株でも株主になれる証券会社独自のサービス 通常、株式は単元株である100株単位で取引が行われる。しかし、一部証券会社では、単元未満株、つまり1株以上100株未満、1株単位でも個別銘柄を売買できるサービスが提供されている。

・メリット……少額の資金で有名企業の株主になれる
値がさ株と呼ばれる個別銘柄はたいてい知名度も高いが株価も高額だ。値がさ株の筆頭であるファーストリテイリング <9983> の株価は、2020年3月19日終値で4万190円であり、単元株で購入するには401万9,000円もの資金が必要になる。

しかし、単元未満株取引サービスを利用すれば、4万190円に取引手数料と消費税を上乗せした金額を用意できれば、ファーストリテイリングの株を1株購入できる。

実質株主扱いとなり、株主権(主に自益権)も得られる。保有株数に応じた配当を受け取ることができる上に、換金できる株主優待は換金して分配される。少しずつ買い増して、単元株主になることもできる。もちろん売却も自由なので、株価が上昇したら売却して、値上がり益を手にすることも可能だ。

・デメリット……株主としての権利が限定的
単元未満株主には、単元株主に認められている株主総会での議決権をはじめ、会社の経営に参加できる共益権が与えられない。

株主優待制度が設けられている銘柄でも、換金できない株主優待内容であると恩恵を受けられないのもデメリットに数えられる。

単元未満株取引では、証券会社ごとに取引のタイミングが決められているため、単元株のようにリアルタイムで取引ができないことや、指値注文できない点も覚えておきたい。

・サービスを利用できるネット証券会社……SBI証券、マネックス証券など
初心者にとって手数料が安くて身近なインターネット専業証券会社の中でも、単元未満株取引サービスを提供している証券会社は、SBI証券「S株」、マネックス証券「ワン株」、auカブコム証券「プチ株」の3社のみ。

いずれも、取引手数料は約定代金の0.550%(税込)(※2020年3月19日時点)である。

サービス2,テーマ株投資――個別銘柄ではなく、興味のあるテーマを選ぶだけ

材料株とも言われるテーマ株投資サービスとは、特定のテーマに紐づいた複数の関連銘柄群に、少額から一括投資できるサービスのことだ。「テーマ株」とは、世間で話題になっている、たとえば「AI」「5G」「新型肺炎」「テレワーク」「eスポーツ」「インバウンド」など、旬のテーマに関連する銘柄を指す。

テーマ株の中には株価が大幅に上昇する銘柄もあるため、個人投資家の関心は高い。

・メリット……少額から、注目のテーマに関連した銘柄群に一括投資できる
テーマ株のポートフォリオは専門業者が選定した銘柄で構成されており、自分が興味のあるテーマさえ選べば、あとは普通の投資信託と同じ感覚で投資できる。個別銘柄のファンダメンタル分析にかける時間を確保できない多忙な人には、便利なサービスだ。

個別銘柄を単元株単位で購入するのではなく、各銘柄1株単位でポートフォリオが構成されているので、少額で一括投資をしながらリスク分散ができるのも魅力だ。

さらに、テーマ株に該当する企業は注目される事業を手掛けていることもあり、株価が急騰するケースもある。値上がり益を期待できるのも、テーマ株投資の魅力だ。

・デメリット……株価が急落するリスクも
株価の急騰が期待できる反面、株価が暴落するリスクがあるのも事実だ。テーマ株の中には、業績が悪くても時流に乗って株価を上げている銘柄もある。ブームが沈静化したり、赤字決算が発表されたりすると、株価が大幅に下がる可能性がある。

・サービスを利用できるネット証券……SBI証券
「SBI証券」のテーマ株投資サービスの名称は「テーマキラー」。投資情報提供会社であるミンカブ・ジ・インフォノイドが提供する注目テーマに基づいて、関連する10銘柄でポートフォリオが組まれている。

各銘柄は単元未満株(1株)単位で構成比率を変えることができ、配当金を受け取ることもできる。5万円、10万円、20万円、30万円の4コースがあり、取引手数料は単元未満株(S株)と同じ「約定代金×0.55%(税込)」で、最低手数料は55円(税込)だ。

サービス3,ポイント投資サービス――現金がなくても投資ができる

ネット証券には、取引で貯まったポイントを次の投資に活用できるサービスを提供しているところがある。取引するネット証券を絞り込んでいる投資家には、利用価値があるサービスと言えるだろう。

・メリット……貯めたポイントが無駄にならない
ポイントがある程度貯まっていて、それを投資余力に充当できれば現金を使わなくて済む。また、ポイントの使用期限が切れてしまったり、不要な商品と交換してしまったりすることは起こらない。

取引を続けていれば自動的にポイントが貯まる仕組みなので、現金による購入だと躊躇してしまう人でも、ポイントを使えば思い切って投資できるだろう。

・デメリット……同一のネット証券内でしか使えない
貯まるポイントは、独自のポイントや外部のポイントサービスのポイントだ。基本的に、他のネット証券ではポイントを使えない。ポイント投資サービスを提供するネット証券によっては、ある程度ポイントが貯まってからでないと使えないところもある。

どちらのケースも、複数のネット証券で取引をしていたり、投資金額がいつも少額であったりすると、ポイントはなかなか貯まらないだろう。

・サービスを利用できるネット証券……SBI証券、楽天証券など
ポイント投資サービスを行っているのは、現在5社。一覧にして整理した。

証券会社 ポイント 投資対象 還元 備考
SBI
ネオモバイル
証券
Tポイント 国内株式 1ポイント
→1円
単元未満株(1株単位)で購入できる
SBI証券 Tポイント 投資信託 1ポイント
→1円
100円から購入できる
※ポイントの上限・下限なし
楽天証券 楽天
スーパー
ポイント
投資信託
国内株式
1ポイント
→1円
投資信託は100円以上1円単位
DMM.com証券 DMM株
ポイント
現金
DMM.com
証券 株内の取引
1ポイント
→1円
・獲得ポイントはDMM.com
証券 株の取引手数料の1%
・現金引出の場合1,000ポイント単位
マネックス証券 マネックス
ポイント
株式売買手数料 1ポイント
→1円
投資信託の保有

「DMM.com証券 株」や「マネックス証券」は一般的なポイント投資とは若干異なる仕組みだが、ポイントを利用できるということでチェックしておきたい。また「楽天証券」では、投信積立で月5万円まで「楽天カード」で決済できる。この利用分でもポイントが貯まるので、非常にお得だ。

自分の投資タイプを見定めて、株式投資を始めよう

日本国内の上場企業は、4,000社を超える。その中から投資する銘柄を選び出すことは、投資初心者にとって負担の大きな仕事だ。

投資銘柄を絞り込む前に、投入できる資金はいくらか、どのくらいリスクを取れるか、どのくらいの期間で資産形成をする予定かなど、自分の投資タイプを見定めるといいだろう。

自分の投資タイプさえわかれば、割安株投資、成長株投資、低位株投資などの投資手法もおのずと決まってくる。そうすれば、投資する銘柄を選ぶのも難しくなくなるはずだ。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。