幸せに暮らすために「お金をたくさん稼ぎたい」と思う人は多いのではないでしょうか。「お金に不自由がない」ということは、一般的には幸せなことですが「稼げば稼ぐほど幸福度も高まっていく」というわけではないようです。今回は、年収と幸福度の関係や、幸福を感じ続ける方法について説明します。

年収による幸福度の壁とは?

年収
(画像=deagreez/stock.adobe.com)

お金があれば欲しいものを購入できたり、やりたいことにお金を使えたりするなど、自分の欲求を満たすことができます。よりたくさんのお金があれば「買うアイテム」「やること」のランクを上げることも可能です。満足度もアップして、幸せな気持ちが高まるでしょう。

このように、一般的には選択肢が増えるため「お金がある=幸せ」という等式が成り立つと思われています。

満足から幸福へと気持ちを格上げするために「より一層高い年収を得たい」と思う人も多いでしょう。年収が増えるほど人の幸福度が高まっていくことはさまざまな研究で発表されています。しかし、幸福度は年収の増加に比例して際限なく高まるのではなく、ある程度の年収に達すると幸福度は頭打ちになることも研究で認められているのです。

幸福度が頭打ちになる年収はいくらか?

では、年収がいくらになれば幸福感が頭打ちになるのでしょうか。2002年にノーベル経済学賞を受賞したことで知られるダニエル・カーネマン名誉教授(米プリンストン大学)の研究によると、年収が7万5,000ドルまでは収入の増加に応じて幸福感も比例して増加していくことが分かりました。また、7万5,000ドルのラインを超えると幸福度は増えないとされています。

2020年6月19日時点の為替レート(1ドル=約107円)で換算すると、年収約802万円前後が境界となるようです。米国と日本の違いはあるものの、ある一定の年収水準以上は、年収と幸福度が比例しない状況になるというのは日本にも当てはまりそうです。

マズローの欲求5段階説からみる、「幸せの正体」とは?

幸せを求めて多くの人は「より高い年収を得よう」と仕事やスキルアップに努めているでしょう。しかし、せっかくがんばって働き年収を上げても、幸せになれないのであれば、モチベーションは上がらなくなってしまいます。

では年収を増やしつつも幸福感を高めるためには何が必要なのでしょうか。アメリカの心理学者マズローは人間に「5段階の欲求」があることを提唱しています。これは、一つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとするというものです。消費者へ購買プロセスを訴求するためにマーケティングなどでも取り入れられています。「マズローの欲求5段階説」によると人間の欲求は以下の5つです。最下層から確認していきましょう。

第1段階:生理的欲求

最下層にある欲求は「食欲」「排せつ欲」「睡眠欲」といった生命の維持を満たすための基本的な欲求です。

第2段階:安全欲求

安心かつ安全に暮らしていくための欲求で病気や不慮の事故、災害などに対する備えが求められます。

第3段階:社会的欲求

集団への帰属や愛情を求めることで、例えば「友人や家庭、会社などから受け入れられたい」「共同体の一員に加わりたいなど」の欲求です。

第4段階:承認欲求

「他者から尊敬されたい」「認められたい」という願いや「自分が他者より優れた存在」と認める自尊心に対する欲求です。例えば、仕事での評価や昇進、身につけるアイテムの価値、出入りする店のランクなどがあります。

第5段階:自己実現欲求

潜在的な自分の可能性を探求し自分の世界観、人生観に基づく「あるべき自分になりたい」と願う欲求、つまり「より一層自分らしく生きたい」という欲求です。

マズローの説に基づき述べるなら、幸せの正体は「これらの欲求を満たせるということ」になります。生きていくための基本的な生理的欲求から自己実現欲求まで、欲求を満たす難易度は徐々に上がっていきますが、第4段階の「承認欲求」まではおおむねお金で獲得できるものです。一方、頂点の「自己実現欲求」になるとお金があってもその欲求を満たせる可能性は狭まり、難易度は非常に高くなります。

ある年収ラインから幸福度が高まりにくくなる理由がマズローの欲求5段階説からも理解できるのではないでしょうか。

大切なのは自分の人生の目的

将来が不確実な時代において、より一層幸福に生きていくためには、お金はたくさんあるに越したことはないでしょう。年収800万円以上の収入を得ても幸せになれないから……と足止めするのではなく、できればずっと上を向いて年収維持・向上に努めるのもよいのではないでしょうか。幸福度も同時に上げていくためにも自分の幸福感が決定される要因を考えてみましょう。

大げさな言葉でいえば「自分の人生の目的が何であるか」ということです。「自分は何をやりたいのか」「何をやると幸せなのか」といったことを明確にしてみましょう。「旅行に行って見聞を広げる」「社会に奉仕する」「子どもや部下など人を育てていく」など、人によってさまざまな思いがあるでしょう。正解はその人だけのものですから、自分の最終的な人生の目的を見つけることが大切です。

人生の目的に向かって歩むためにはお金も必要ですが、お金は自己実現のためのツールの一つにすぎません。お金に振り回されるのではなくうまくコントロールしていくことも大切です。金融リテラシーはそのためのものといえるでしょう。(提供:Wealth Road