国内株式ファンドを中心に資金流出

投信動向
(画像=PIXTA)

2020年6月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、国内株式、外国債券、外国株式から資金流出があり、国内株式からの流出金額が2,800億円と突出して大規模であった【図表1】。外国REIT、国内REIT、バランス型には500億円ほど資金流入があったが、国内株式からの資金流出が大きかったためファンド全体でも1,300億円の資金流出となった。ファンド全体では2020年に入ってから資金流入が続いていたため、昨年12月以来6カ月ぶりの純流出となった。

国内株式の資金流出は、5月の500億円から6月2,800億円へと急拡大した。国内株式は、5月中旬からの上昇基調は6月上旬に止まったが、6月は株価が高値圏の水準で推移した。そのような市場環境の中、アクティブ・ファンドを中心に戻り売りが出て、資金流出が膨らんだ様子である。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

売り一辺倒の国内株式アクティブ・ファンド

国内株式では、6月はアクティブ・ファンド(緑棒)、インデックス・ファンド(黄棒)ともに資金が大きく流出した【図表2】。アクティブ・ファンドからの資金流出が1,800億円、インデックス・ファンドが1,000億円となっており、アクティブ・ファンドからの資金流出が特に大きかった。

国内株式のアクティブ・ファンドは2019年2月から資金流出が続いているが、足元の3月、4月、5月は小規模であった。急落時に塩漬けにし、株価が戻るのを待っていた投資家も多かったと思われ、6月にある程度の水準まで株価が戻ったことによって、待っていた投資家が一斉に売却に動いたと考えられる。6月は月を通じて一貫してアクティブ・ファンドから資金流出があったが、株価が特に高かった上旬の資金流出が大きかったことがことからもそのことがうかがえる。

また個別にみても、最も資金流入が大きかったアクティブ・ファンドでも新設ファンドの33億円であり、SMA専用ファンドを除くと資金流入が10億円を超えた既存のアクティブ・ファンドはなかった。国内株式の上値の重さ、もしくは先高観の乏しさが投資家に意識されてか、新規の買い付けが少なく、まさに売り一辺倒であったといえよう。

なお、国内株式のアクティブ・ファンドの中で中小型株アクティブ・ファンドからの資金流出が700億円を超えた。6月は国内株式全体でみると株価がほほ横ばいであったが、中小型株に限ると下落した。中小型株アクティブ・ファンドからの資金流出が、国内中小型株式市場の需給に悪影響を及ぼした可能性があるだろう。

一方、国内株式のインデックス・ファンドでは、6月上旬こそアクティブ・ファンドと同様に資金流出が続いたが、中旬以降は資金流出がほぼ止まっていた。特に日経平均株価が2万2,000円を下回った翌営業日の30日に100億円を超える資金流入があり、国内株式が反発した3月下旬以降で最大の資金流入となった。金融市場がやや落ち着いてきたこともあり、再びインデックス・ファンドで逆張り投資をする投資家が増えてきているのかもしれない。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

外国株式でも売りが出るが投資意欲は高い?

外国株式でも、5月の1,300億円の資金流入から6月は200億円の資金流出に転じた。外国株式のアクティブ・ファンド(緑棒)は5月の400億円資金流入から6月は600億円の資金流出に転じた【図表3】。また、インデックス・ファンド(黄棒)も5月の900億円の資金流入から6月は400億円弱の資金流入にとどまり、資金流入が減速した。6月は世界的に株式市場が堅調だったこともあり、国内株式と同様に外国株式でも売却が膨らんだものと思われるが、投資家の外国株式への投資意欲は引き続き高かった様子である。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

外国株式のアクティブ・ファンドでは、過去に人気があったテクノロジー系やバイオ・ヘルスケア系のテーマ型ファンドなどからの資金流出が大きく、アクティブ・ファンド全体でも資金流出に転じた。ただ、一部のファンド(赤太字)には資金流入が続いていた【図表4】。

また、外国株式のインデックス・ファンドについては、3月などに株安でタイミング投資に伴う資金流入が大きかったが、6月は株価が戻り利益確定の売却が出やすかった市場環境であったこともあり、資金流入が鈍化した。ただ、積立投資などによる外国株式のインデックス・ファンドへの資金流入は6月も続いていたようである。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

海外資産を含むファンドの場合だと多くのものが注文から2日後に資金動向に反映される。そこで毎月第3営業日の外国株式のインデックス・ファンドの資金流入をみると、「年金2,000万円不足」問題もあってか2019年7月以降、流入金額が増加していることが分かる【図表5】。足元の6月も月を通じてみると資金流入が鈍化していたが、月初の買い付けが反映される第3営業日に限ると資金流入は100億円を超えていた。ちなみに、7月も第3営業日に100億円を超える資金流入があった。やはり「年金2,000万円不足」問題などによって、外国株式のインデックス・ファンドを用いた積立投資をする人が増加したためだと思われる。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

中国株式ファンドの一部が好調

6月にパフォーマンスが良好であったファンドをみると、中国政府の景気対策や米中対立の緩和などが期待されて中国本土株式が大きく上昇したこともあり、中国株式ファンドの一部(赤太字)が好調であった【図表6】。ただ、中国株式ファンドでも6月100億円の資金流出と5月の50億円と比べて流出金額が2倍になり、利益確定の売却が膨らんだようである。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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