日本銀行は2日、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)について「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題したレポートを発表した。
レポートによると、CBDCの実現を見据えた準備を進めていることを明らかにし、CBDCの技術面の論点や課題解決に向けて実証実験に乗り出すと言う。
現金を介さないデジタル決済の需要が高まり、中国のデジタル人民元などの発行計画も進むなか、日本も遅れを取らなないようにCBDCの開発を進める方針だ。
日銀は今年2月に歐中銀などと共同でCBDCの研究チームを立ち上げており、今回、発表されたレポートはその第1弾となる。
レポートでは、CBDCの実用化には現金同等の機能を持つ必要があると指摘し、具体的には「誰でも、いつでも、どこでも安全・確実に利用できる決済手段」という役割を求め、そのための技術的な課題を洗い出した。
そして今回のレポートでは「ユニバーサル・アクセス」「強靭性」の必要性が強調された。
日銀は、1つ目に挙げた「ユニバーサル・アクセス(国籍、年齢、性別、障害などあらゆる要因にかかわらず、誰でも同じようにネット環境を利用でき、情報を得られる状態のこと)」について、現在のデジタル決済はスマートフォンを使ったタイプが普及しているが、日本のスマホ所持率は65%(2018年時点)にとどまっており、スマホを持っていない子供や高齢者などは利用できない。このため「多様なユーザーが利用可能な端末の開発が重要だ」と指摘した。
また、2つ目に強調されたのが環境に左右されずに利用ができる「強靱性」だ。地震など天災の非常事態が起きて通信や電源が確保できない場合、スマホ等を使う電子決済には不安が生じる。こうした「オフライン」の環境でも決済ができる技術が必要とも述べている。
日銀は、今回のレポートで一連の課題を踏まえ、実証実験でCBDCの実現を探る考えを示した。
開始時期は明らかにしていないが、民間の金融機関や決済事業者などと連携し、オフラインの環境下でも決済できるかといった技術面の検証に取り組む予定だ。
今回のレポートはNHKや日本経済新聞を始め、国内の有力メディアでも報道されており、デジタル通貨やCBDC への注目度がうかがえる。(提供:月刊暗号資産)