中小企業の経営において、銀行をはじめとした金融機関との関わり方は非常に重要なポイントです。そこで今回は、金融庁が令和元年11月に公表した「企業アンケート調査の結果」をもとに、中小企業のメインバンクの選び方やニーズなどの金融事情を紹介します。
中小企業の約6割が、メインバンクとして地方銀行を選ぶ結果に
本記事で紹介するデータは、金融庁が約3万社にアンケート調査への協力を依頼し(外部委託)、うち9,371社が回答したものです。回答した企業のうち、99.4%が「中規模企業・中小企業・小規模企業」に該当するため、アンケート結果は中小事業者の実態に近いものと言えるでしょう。
では、まずは「メインバンクの業態別分布」と「非メインバンクの業態別分布」を紹介していきます。
○メインバンクの業態別分布
金融機関の種類(上位5つ) | 全回等に対する割合 |
---|---|
・地方銀行 | 60.5% |
・第二地方銀行 | 26.1% |
・信用金庫 | 4.9% |
・政府系金融機関 | 4.0% |
・都市銀行 | 3.5% |
○非メインバンクの業態別分布
金融機関の種類(上位5つ) | 全回等に対する割合 |
---|---|
・地方銀行 | 33.2% |
・政府系金融機関 | 25.6% |
・信用金庫 | 14.5% |
・第二地方銀行 | 13.8% |
・都市銀行 | 9.4% |
上記の結果を見てわかる通り、現代では約6割の中小企業がメインバンクを「地方銀行」にしています。また、メインバンクとして別の金融機関を選んでいても、地方銀行との関わりをもつ中小企業は少なくありません。
そのほか、「信用金庫」や「第二地方銀行」も回答数の上位にきていることから、多くの中小企業は地域密着型の金融機関を中心に、取引金融機関を選んでいることが分かります。
融資の二―ズはどれくらい?中小企業が金融機関に求めていること
次は、中小企業の融資のニーズについて見ていきましょう。以下は、「過去1年間、取引金融機関からどのような融資を受けたいと思いましたか?」という問いに対する回答結果です。
○中小企業の融資のニーズ
回答結果 | 全回答に対する割合 |
---|---|
・商品や原材料等の仕入に係る運転資金 | 51% |
・給与等の経費支払いに係る運転資金 | 18% |
・設備投資資金 | 38% |
・過去の融資金の返済のための資金 | 13% |
・融資は必要としなかった | 22% |
上記の結果を見ると、「仕入に係る運転資金」や「設備投資資金」のニーズが高いことがわかります。ただし、その一方で約5分の1にあたる中小企業が、「融資を必要としなかった」と回答している点も意識しておきたいポイントです。
では、融資を必要としなかった中小企業は、そのほかにどのようなサービスを期待しているのでしょうか。
○取引金融機関から提案を受けたいサービス
提案を受けたいサービス(上位5つ) | 全回答に対する割合 |
---|---|
・取引先や販売先の紹介 | 37% |
・受けたいサービスはない | 28% |
・人材育成や従業員福祉 | 18% |
・財務内容の改善支援 | 15% |
・M&A | 13% |
(※融資は必要としなかった企業のみが対象)
この結果を見ると、世の中の中小企業は金融機関に対して、「経営状態やキャッシュフローの改善」につながるサービスを期待していると言えます。また、後継者不足に悩まされる企業が増えてきた影響で、「M&A」に関するサービスを期待する企業も少なくありません。
実際に中小企業の満足度が高いサービスは?
金融機関が提供するサービスのうち、運転資金や設備資金などの融資に関するサービスは、中小企業の満足度が高い傾向にあります。それ以外で満足度が比較的高いサービスとしては、主に以下のものが挙げられます。
・事業計画策定支援
・財務内容の改善支援
・取引先や販売先の紹介
ここまでをまとめると、経営状態やキャッシュフローの改善につながるサービスは、全体的に満足度が高い結果となりました。なかには満足度がそれほど高くないサービスもいくつか見受けられますが、融資や経営改善支援サービスについては、多くの中小企業がメインバンクを頼りにしている実情がうかがえます。
金融機関との関わり方を見直し、最適なサービスを受けるための環境づくりを
金融機関と言えば「融資」のイメージが強いかもしれませんが、いまやメインバンクの役割は融資だけではありません。経営改善支援サービスや保険商品等の販売をはじめ、各金融機関がさまざまな形でサービスを展開しています。
中小企業がそのようなサービスをうまく活用するには、自社に最適なメインバンクを選ぶことや、金融機関との関わり方が重要になってきます。たとえば、地域密着型の金融機関と良好な関係を築いておけば、その地域ならではの手厚いサポートを受けられるかもしれません。
経営面で何かしらの悩みや課題を抱えている中小経営者は、これを機に金融機関との関わり方を見直してみましょう。(提供:企業オーナーonline)
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