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トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス 価格:6MT 456万円 GRヤリスはWRCマシンのホモロゲーションカー 勝利のために先進テクノロジーをフル投入 1.6リッターターボ(272ps)のRZ/RC系と1.5リッター(120ps)のRSを設定

開発コンセプトはストロング・スポーツカー! 富士スピードウエイで全開チェック

 GRヤリスは、WRC(世界ラリー選手権)での勝利を目指したトヨタのスポーツ4WD。開発コンセプトは「ストロング・スポーツカー」。トヨタのスポーツカー戦略を担う重要な1台だ。今回は9月の発売に先駆けて、「ほぼ量産モデル」に富士スピードウェイのショートコースと特設ダートコースで試乗した。

 エクステリアは精悍。ヤリスの単純な3ドア仕様ではない。WRCチームからの要求を盛り込んだ「勝つためのデザイン」だ。ルーフラインは空力特性に優れ、ワイドトレッド、アルミ製ボンネットとドア、CFRP製ルーフ採用の「マルチマテリアルボディ」と、ほぼ専用設計である。インテリアは、専用のステアリングやメーター、スポーツシートを採用。シフトレバー前には前後駆動力配分が調整可能なドライブモードスイッチをレイアウト。JBL製オーディオやトヨタセーフティセンスなど、プラスαの魅力を演出する部分も抜かりなし。

 パワートレーンは1.6リッターの直列 3気筒ターボ。ダイナミックフォースエンジンの高速燃焼とモータースポーツ技術を融合。272ps/370Nmのハイパフォーマンスと燃費、そして環境性能をバランスよく追求した。クラス最軽量かつ最小サイズもポイントである。

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GRヤリスは2020年1月の東京オートサロンで初公開 写真はデビュー記念1stエディション 全長×全幅×全高3995×1805×1455mm

豊かなパワーと鋭いレスポンス! 扱いづらさは皆無

 最初にショートコースでドライビング。高出力の小排気量ターボだが、扱いづらさは皆無。フラットなトルク特性とレスポンスのよさ、7000rpmのレッドゾーンを超えていきそうな伸びと、高い回転精度に思わず顔がほころぶ。アクセルを踏んだときの応答性やツキは、2リッターターボのスポーツ4WDを凌駕する。トランスミッションは6速MTのみ。ストロークはやや長めで軽いタッチ。カチッカチッと決まるシフトフィールは、横置きMT最良の仕上がりだ。

 プラットフォームはフロントがヤリスと同じGA-B、リア回りはワンクラス上のGA-Cというハイブリッド仕様。その中身はWRCのレギュレーションに有利となるようにほぼ専用設計。GR-FOURと命名された4WDシステムは、シンプル&軽量を追求したハイレスポンスカップリング式。ドライブモードスイッチで前後トルク配分は60対40(ノーマル)、30対70(スポーツ)、50対50(トラック)をベースにアクティブに制御される。

 フットワークは2タイプある。最上級グレードのRZハイパフォーマンスは前後トルセンLSD+ミシュラン・パイロットスポーツ4S&BBS製鍛造アルミを装着、RZはオープンデフ+ダンロップSPスポーツMAXX&エンケイ製鋳造アルミの組み合わせ。足回りのセッティングはグレードごとに最適化されている。

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プラットフォームは前側が標準ヤリス用GA-B リア回りは上級車用GA-Cの専用タイプ

ハンドリングは自在。「ドライバーファースト」なスポーツ4WD

 試乗中は〝軽さは正義〟を実感した。車両重量は1250~1280kgだが、体感上はひと回り軽い印象。セオリーどおりに走る限りは、グイグイとノーズがインを向く。アンダー知らずのフロントと、ドシッと踏ん張るリアの安定性とのバランスが印象的。オンザレールのハンドリングが楽しめる。もちろん操作しだいで、オーバーステアまで自在に持ち込める。

 RZハイパフォーマンスはLSD効果も相まってアクセルオンで積極的に向きを変える。スッキリ軽快な足さばきだ。一方、RZはアンダーっぽさを少し感じるが素直なクルマの動きと、しっとり穏やかな足さばきが印象的。グレードによる違いを明確に感じられた。  試乗時の路面は、ウエットからドライに変わり始めという難しいコンディションだった。クルマに対する信頼と滑り出した際のコントロール性はRZハイパフォーマンスに軍配を上げる。

 ダート路はオプション設定予定の機械式LSDやロールバー、ラリー用サスペンションなどがプラスされた仕様で試乗。コースはパイロンで作られた8の字レイアウトである。誰でもスポーツ4WDらしい大胆な姿勢で走行できるのはもちろん、「パイロンまで数cmのライン」が自在に選べるのに感激した。まさに意のままに操れる。しかも、クルマ側の制御で曲げられていく感覚はない。ドライバーが失敗すると、失敗だと教える(笑)。そう、クルマとの対話性も高いのだ。

 モータースポーツ直系モデルと聞くと、気難しい性格だと思うかもしれない。それは大きな間違い。極限状態で勝つには「速さ」に加えて「乗りやすさ」が重要だ。  GRヤリスはトヨタ・ラインアップ中でも最も「ドライバーファースト」なモデル。令和時代にふさわしい4WDスポーツだ。

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コーナリングは超痛快 シャープなフロント応答性と安定感抜群のリアのバランスが印象的 ハンドリング自在度は高水準 4WDシステムの前後トルク配分は3モード切り替え式 60対40(ノーマル)/30対70(スポーツ)/50対50(トラック)を基準に制御 RZハイパフォーマンスは前後トルセンLSD標準
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G16EーGTS型1.6リッター直3ターボは272ps/370Nm発生 4WDシステムは軽量&ハイレスポンス構造
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RZハイパフォーマンスは225/40ZR18ミシュランタイヤ+BBS製8J鍛造アルミ装着
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インパネ形状はヤリスと共通 本革巻きステアリングは専用小径タイプ RZハイパフォーマンスはJBLサウンド標準
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シートはサイドサポート性を高めたスポーツ形状 表皮は合成レザーとスエードのコンビ ヘッドレストにGRのロゴが入る
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メーターはアナログ形状 レッドゾーンは7000rpmオーバーの設定 速度計は280km/hスケール

トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス 主要諸元

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グレード=RZハイパフォーマンス
価格=6MT 456万円
全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース=2560mm
トレッド=フロント1535×リア1565mm
車重=1280kg
エンジン=1618cc直3DOHC12Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=200kW(272ps)
最大トルク=370Nm(37.7kgm)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/40R18(ミシュラン)+鍛造アルミ
駆動方式=4WD

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トランスミッションは6速MT 的確な回転制御を行うiMT機能搭載
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ノーマル/スポーツ/トラックの切り替えはコンソール部のダイヤルで操作
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全長×全幅×全高3995×1805×1455mm 全幅は標準ヤリス比110mmワイド 各部にWRCチームの要望を反映
Writer:山本シンヤ Photo:TOYOTAほか

(提供:CAR and DRIVER