つみたてNISAでは、非課税期間中の値上がり益や分配金にかかる税金が非課税になる。リターンが多ければ、それだけ非課税効果は高い。つみたてNISA対象銘柄の中で、高い利回りが期待できるのはどれだろうか?過去の実績から、カテゴリーごとの平均と利回りランキングを作成した。
1.つみたてNISA(積立NISA)対象商品のほとんどはインデックス型投資信託
つみたてNISAの現状と、対象商品の種類について説明する。
つみたてNISA(積立NISA)の口座数・買付額ともに増加
つみたてNISAを利用する人が増えている。金融庁が2020年7月14日に発表した「利用状況調査」によると、つみたてNISA口座数は2019年12月末比で16.2%増、買付額は同25.5%増であった。特に30~40代の利用者が多く、全219万口座のうち115万口座はこの年代で占められている。一般NISAの利用者は60~70代が中心だが、つみたてNISAでは現役世代が多い。長期的な資産形成への意識が高まったことが背景にあるようだ。
つみたてNISA対象商品の種類
つみたてNISAでは、どの銘柄に投資すれば高いリターンを得られるのだろうか。具体的な銘柄に触れる前に、つみたてNISA対象商品の種類を見てみよう。
現在、つみたてNISA(積立NISA)の対象商品は182本(2020年6月29日時点)。指定インデックス投資信託が157本、アクティブ運用投資信託が18本、上場株式投資信託(ETF)が7本である。
大分類 | 資産クラス | 内容 | 本数 | |
指定インデックス型 | 株式型 (単一指数) |
国内型 | 日本の株式指標 (TOPIXや日経平均株価、 JPX日経インデックス400) に連動 |
33本 |
全世界 | 全世界の株式指標 (MSCI ACWI IndexやFTSE Global All Cap Index)に連動 |
10本 | ||
先進国 | 日本を除く先進国の株式指標 (MSCI World Indexや FTSE Developed All Cap Index) に連動 |
17本 | ||
米国 | 米国の株式指標 (S&P500、CRSP U.S. Total Market Index)に連動 |
8本 | ||
新興国 | 新興国の株式指標 (MSCI Emerging Markets Index、 FTSE Emerging Index、FTSE RAFI Emerging Index)に連動 |
12本 | ||
バランス型 (複合資産) |
国内外の株式、債券、REITに投資。 ファンドにより指定指数の数は2~8 |
77本 | ||
アクティブ 運用型 |
運用者が投資対象を決定し指数を上回る成績を目指す | 18本 | ||
ETF (上場投資信託) |
国内外の株式指数に連動するETF | 7本 | ||
計182本 |
つみたてNISAの対象商品の多くは、インデックス型投資信託だ。特定の株式指数に連動し、日本全体、先進国全体、全世界といったように幅広く分散投資ができる。指定インデックス投資信託は単一の株式指数に連動するものと、株式以外の債券やREITにも投資する複合型(バランス型とも呼ばれる)に大別できる。
地域だけでなく、資産クラスも分散できるのがバランス型だ。初心者でも手軽に分散投資ができるとあって、つみたてNISAでは多くの銘柄が採用されている。かつてバランス型投資信託は手数料の高さが問題視されていたが、信託報酬に上限が設けられているつみたてNISAでは、その心配はない。
アクティブ運用型は特定の指数に連動せず、ファンドマネージャーが独自の視点で個別株などに投資していく。市場全体の動きよりも高いリターンが見込めるが、同時にリスクも高くなる。全商品数182本中のうち18本がアクティブ運用型で、買付額は全体の15%程度だ。
2.投資信託における利回りとは
つみたてNISA採用銘柄の利回りは、どのくらいなのだろうか?該当する主要指数の平均利回りと、つみたてNISAの利回りランキングを調べてみた。
投資信託には、2種類の収益がある。基準価額の変動による値上がり益(キャピタルゲイン)と、分配金(インカムゲイン)だ。両方を足したものを「トータルリターン」と呼び、それが1年間の利回り計算に用いられる。
つみたてNISAにおける期待利回りを考えるにあたって、リターンは資産クラス(アセットクラス)ごとに異なることを押さえておかなければならない。今回は「国内型」「海外型」「バランス型」で、それぞれの平均利回りとつみたてNISAの銘柄のうち利回りの高いものをランキング化した。平均利回りには、該当する指数の年率平均リターンを採用するものとする。
3.つみたてNISA(積立NISA)の国内型インデックスの平均利回り
国内のインデックスは、主にTOPIX(東証株価指数)と日経平均株価を連動する指数に採用している。両者の直近1年・3年・5年の年率平均リターンは、以下のとおりだ。
国内指標全体の平均利回り
1年 | 3年 | 5年 | |
TOPIX | +3.1% | +1.2% | +1.4% |
日経平均株価 | +4.8% | +3.6% | +2.0% |
TOPIXの採用銘柄はおよそ2,000社、日経平均株価は225社だ。TOPIXは大手銀行株や不動産・建設など時価総額の大きい内需関連株の影響を受けやすく、日経平均は輸出関連・ハイテクなど1単元当たりの株価水準が高い株の影響を受けやすい。ここ数年は、日経平均株価のパフォーマンスがTOPIXに比べてやや高い傾向にある。つみたてNISA対象銘柄にも、その傾向が見られる。
国内型つみたてNISA(積立NISA)銘柄の利回りランキング
つみたてNISA対象銘柄のうち、国内株式指標に連動するファンドを、直近1年間の利回りが高い順に5位まで列挙する。アクティブファンドの中には年利回りが12%を超える銘柄もあるが、ハイリスク商品は利回りが安定していないため今回は除外した。
ファンド名 | 運用会社 | リターン(1年) | |
1 | iFree日経225インデックス | レオス・キャピタルワークス | 7.02% |
2 | eMAXIS Slim国内株式(日経平均) | 日興アセットマネジメント | 6.91% |
3 | 野村つみたて日本株投信 | 野村アセットマネジメント | 6.91% |
4 | <購入・換金手数料なし> ニッセイ日経平均 インデックスファンド |
ニッセイ・アセット マネジメント |
6.91% |
5 | つみたて日本株式(日経平均) | 三菱UFJ国際投信 | 6.87% |
日経平均株価の好調さを反映して、同指標をベンチマークとするファンドがランクインしており、いずれも利回りは年6%を超えている。
4.つみたてNISA(積立NISA)の海外型インデックスの平均利回り
海外主要指標の直近1年・3年・5年の年率平均リターンは、以下のとおりだ。
主要海外指標の平均利回り
1年 | 3年 | 5年 | |
全世界:MSCI オール・カントリー・ ワールド・インデックス (ACWI) (円) |
+1.1% | +5.0% | +4.2% |
先進国:MSCI コクサイ・インデックス (KOKUSAI) (円) |
+1.8% | +6.0% | +5.0% |
米国:S&P 500 (配当込み) (円) | +5.9% | +9.0% | +7.8% |
新興国MSCI エマージング・ マーケット・インデックス (円) |
-4.5% | +0.7% | +0.5% |
ここ1年は、米国株式市場がとりわけ好調だったことがわかる。一方で、新興国株式市場はさえなかったようだ。
海外型つみたてNISA(積立NISA)銘柄の利回りランキング
つみたてNISA対象銘柄のうち、海外株式指標に連動するファンドを、直近1年間の利回りが高い順に5位まで列挙する。
ファンド名 | 運用会社 | リターン(1年) | |
1 | 三菱UFJ国際- eMAXIS Slim米国株式(S&P500) |
三菱UFJ国際投信 | 5.96% |
2 | iFree S&P500インデックス | 大和アセットマネジメント | 5.93% |
3 | 米国株式インデックス・ファンド | SSGA | 5.62% |
4 | 楽天・全米株式インデックス・ ファンド |
楽天投信投資顧問 | 5.04% |
5 | eMAXIS Slim 先進国株式 インデックス |
三菱UFJ国際投信 | 2.36% |
海外型で利回りランキングの上位に入る銘柄の多くは、米国株式あるいは日本を除く先進国株式を対象としたものだ。先進国株式の大部分は米国株式であることを考えると、直近1年のリターンでは米国株の貢献度が高いことがわかる。
全世界を対象としたインデックス・ファンドでは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が同カテゴリーの中でトップだった。利回りは1.62%と、米国株式や先進国株式に比べるとやや劣る。
新興国市場はあまり芳しくなかったので、最も利回りが高かった三井住友トラスト・アセットマネジメントの「i-SMT 新興国株式インデックス(ノーロード)」でもマイナス3.94%だ。
5.つみたてNISA(積立NISA)のバランス型投資信託の平均利回り
バランス型にはさまざまなタイプがあるので単純比較は難しいが、同カテゴリーにおけるつみたてNISA対象銘柄で利回りが高かったものをピックアップした。
バランス型投資信託には指標が複数ある
一般的に、バランス型の利回りは株式のみのファンドに比べて低いが、その代わりにリスクを抑えられる。バランス型は対象になる指標が2~8個と複数あり、どのように組み合わせるかは運用会社次第だ。
バランス型は、ファンドによって債券重視や株式重視、ターゲットイヤーなどタイプが異なるため、明確な平均はない。参考までにモーニングスター社の「バランス」カテゴリーにおける平均利回りを紹介しておこう。
1年 | 3年 | 5年 | |
バランスファンド全体 (モーニングスター社調べ) |
-0.47% | 0.95% | 0.93% |
バランス型つみたてNISA銘柄の利回りランキング
つみたてNISA対象銘柄のうち、複数資産の指標に連動するファンドを、直近1年間で利回りが高かった順に5位まで列挙する。
ファンド名 | 運用会社 | リターン(1年) | |
1 | <購入・換金手数料なし> ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型 |
ニッセイ・ アセット マネジメント |
4.24% |
2 | 楽天・インデックス・バランス・ファンド (債券重視型) |
楽天投信投資顧問 | 3.91% |
3 | ダイワ・ライフ・バランス70 | 大和アセット マネジメント |
3.50% |
4 | 楽天・インデックス・バランス・ ファンド(株式重視型) |
楽天投信投資顧問 | 3.22% |
5 | 三井住友・DCターゲットイヤー ファンド2045(4資産タイプ) |
三井住友DSアセット マネジメント |
3.19% |
つみたてNISAに採用されているバランスファンドは「8資産」に連動するタイプが最も多いが、株式比率が低いため利回りランキングにはなかなか入ってこない。直近1年で利回りが高かったバランスファンドには、「株式重視」または「4資産タイプ」が多い。
「楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)」と「ダイワ・ライフ・バランス70」は、株式比率が70%だ。ただし株式市場が不調の場合は、株式比率が低いほうがリスクを抑えられる。
6.つみたてNISA(積立NISA)の平均利回りはあくまでも過去実績
過去実績に基づくリターンを参照する際は、以下の点に気を付けたい。
・将来の利回りを保証するものではないこと
・対象期間を変えれば利回りはまったく異なる数字になること
つみたてNISA対象商品の平均リターンも利回りランキングも、あくまでも過去実績に基づく成績であり、預金金利のように保証されている収益ではない。また、今回は1年間の年率リターンを見たが、6ヵ月、3年、5年、10年ではまったく異なる結果になる。運用報告書や評価会社のサイトなどで確認しておくといいだろう。
執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
【関連記事 MONEY TIMES】
つみたてNISA(積立NISA)の口座はどこで開設する?SBI、楽天などを比較
つみたてNISA(積立NISA)口座を開設するおすすめの金融機関は?
つみたてNISA(積立NISA)の銘柄で最強な投資信託はどれ?
つみたて(積立)NISAの商品の選び方と失敗しない変更方法
ネット証券おすすめランキング